右肘手術から復帰を目指す巨人ドラ1右腕 「密かに」狙う最速更新と描く未来

トミー・ジョン手術からの復帰を目指す巨人・堀田賢慎【写真:編集部】

青森山田から入団、将来有望の151キロ右腕が復活へ

高い潜在能力が披露される日は近づいている。2019年巨人ドラフト1位・堀田賢慎投手はトミー・ジョン手術を受けてから約1年が経過した。今夏の実戦登板を目標に、投球練習を行っている。将来有望な20歳にとって術後、不安な日々も過ごしたが、すべてを力に変え、今は復帰だけではなく進化する姿をイメージしている。【楢崎豊】

鳴り響くキャッチャーミットの音。ボールを投げられる喜びを感じるたびに自信を深めている。周りへの感謝の思いも日に日に強くなる。

堀田は昨年1月の新人合同自主トレで右ひじに炎症を起こした。状態が上がらなかったため、4月に手術を受けることになった。リハビリを続け、今は段階的ではあるが、投球練習ができるまでに順調に回復している。

「手術をする前から、回復まで時間がかかることは聞いていました。その中でどうやってリハビリを進めていけばいいのだろうと、不安はあったのですが、この世界に入ってきた以上は怪我を治して、結果を出していかないといけないと思っていたので、先を見るようにしていました。自分の中で目標を見つけながらやっていました」

目標に『大きい』『小さい』は関係ない。野球を教えてくれた父・郁雄さんは、いつも電話やLINEで激励してくれた。同級生からかかってくる何気ない電話もうれしい。その中で「投げる姿を楽しみにしているよ」という言葉が力になる。「家族の支えとか、本当に大きいですね。僕自身も頑張ろうと思えます」。支えてくれる人のために復帰する――。それがまずは一番最初の目標だ。自分自身でも巨人のユニホームを着て、マウンドに上がる姿をイメージして、眠りにつく。

そのマウンドはおぼろげながら見えてきた。手術から約1年が経ち、7、8月には試合で投げられるように準備を進めている。段階を経て、フリー打撃、シート打撃に登板するため、今は汗を流している。

「手術をする前よりも、もっと成長した状態で野球をしたいと思っています。復帰登板で高校時代の最速(151キロ)を出す、超えるというのは密かに思っています」

まだ20歳。球界の先輩たちが歩んできた道が順調な回復を後押ししてくれた。トミー・ジョン手術を受ける選手が日米で多く見られ、その術後の様子がメディアなどで紹介されるケースが増えた。情報を自分の目と耳でしっかりと分別し、参考にした。

「ダルビッシュさんや大谷翔平さんの記事を読んだことがありました。その時の自分はまだ投げられる状態にはなかったんですが、これから先のリハビリの中で、どのように対処していけばいいのか学ばせてもらいました」

トミー・ジョン手術からの復帰を目指す巨人・堀田賢慎【写真:編集部】

同学年の左腕・井上温大の奮闘も刺激に

キャッチボールができるまでに回復した時、再び、右ひじに痛みを発したことがあった。しかし、術後も痛みが伴うことを事前に把握していたため、慌てず、耐えることができた。またチーム内に23歳の先輩、巨人・與那原大剛投手も同じリハビリを進めていたため、一緒にキャッチボールをさせてもらいながら、経験談を聞くことができたのも大きかった。

プロで戦うための体や心の成長も遂げている。もともと、高校時代からジュースは飲まずに水やお茶を摂取するなど、“食”への感覚が高かったが、今もしっかりと栄養士と相談しながら、食事も摂っている。

「もっと体を大きくしたいと思っていますし、今まで以上に食事のバランスを気にしています。僕自身、好き嫌いが多かったのですが、彩りを意識しながら野菜も摂るようにしていますし、疲労回復のためにフルーツを摂ったりとか、筋肉をつけるためにタンパク質も意識しています」

まだイースタン・リーグの登板はない堀田に対し、同学年の左腕・井上温大投手が2軍の先発ローテをまわっている。早く、井上のように試合で投げたいという思いが胸を締めつける。だが、今は我慢しながらボールボーイや、スコア付けなど“裏方業務”に徹している。

「試合を見ている時は、自分はストレートを武器に仕事をする投手にならないといけない、求められているなと思いました。今年から育成という形でスタートし、まだゲームで投げられていませんが、イースタン、そして本拠地の東京ドームで投げる姿を早く、見せられるように頑張っていきたいと思います」

高卒新人が入団直後に手術をするということは大きな決断だった。だが、堀田にとって今、大事なことは現時点でどれだけの未来を描けているか。インタビュー時、表情は明るかった。ロッテ・佐々木朗やヤクルト・奥川の同世代として注目される期待の右腕の目は、夏の復帰だけでなく、東京ドームのマウンドで躍動する姿をイメージしている。

○堀田賢慎(ほった・けんしん)2001年5月21日、岩手・花巻市生まれ。花巻リトルシニアから青森山田高に進学。2019年ドラフト1位指名。185センチ、84キロ。右投右打。昨年オフに育成契約となり、背番号032。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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