西城秀樹のロック魂が炸裂!ヒデキを語るなら「ナイト・ゲーム」を聴け! 1983年 6月1日 西城秀樹のシングル「ナイト・ゲーム」がリリースされた日

記憶に残るヒット!グラハム・ボネットのハードロックをカバー

2018年5月16日、多くのファンに惜しまれながらブルースカイに旅立った永遠のヤングマンこと西城秀樹。しかし、逝去後、CD3枚組の『GOLDEN☆BEST deluxe』が40年10か月ぶりにアルバム週間TOP10入りを果たし、三回忌となる2020年5月16日には6枚組DVD BOX『西城秀樹 IN 夜のヒットスタジオ』が発売され大きな話題となるなど、今なお愛され続けています。

そんなヒデキが1983年6月1日に発表したのが、通算45作目のシングル「ナイト・ゲーム」です。この作品は、グラハム・ボネットが1981年にUKで週間TOP10ヒットさせた「孤独のナイト・ゲームス(Night Games)」のカバーで、ハードロック系のシングルは異例ではありましたが、既にライブでは洋楽ロックを多数カバーしてきたヒデキにとっては、むしろ本領発揮といったところでした。

その証拠に、2020年にラジオ番組『渋谷のザ・ベストテン』(渋谷のラジオ)にて募集したファンリクエスト(総投票数1,819票)でも4位と80年代のヒデキ作品ではダントツの人気。シングルの売上としては彼の中で47番目のヒット(45作も10万枚以上のヒットがあるから47番目でもスマッシュヒットなのですが)というセールス記録と比べると、本作は、まさしく “記憶型ヒット” と言えるでしょう。

ヒデキの「ナイト・ゲーム」は容赦ない高速ロックナンバー

しかも本作は、洋楽カバーといっても、ヒデキならではの解釈により、結果としてオリジナリティーの高い作品に生まれ変わっているのも大きな特長です。

原曲であるグラハム・ボネットの「孤独のナイト・ゲームス」は、強いビートが刻まれる中をグラハム・ボネットの地声と裏声のミックスボイスが心地よく響くミディアム調の楽曲で、バラライカのような民族楽器風のイントロも相まって哀愁漂う大人のハードロックと言えるでしょう。

これに対し、ヒデキの「ナイト・ゲーム」は容赦ない高速ロックナンバーに変貌を遂げています! まず、激しいドラムロールのイントロに始まり、Aメロから終始うねりまくるエレキギター、さらにベースとドラムが突き上げるように進んでいきます。

そしてBメロ以降は、このロックサウンドにブラス・サウンドや女性コーラスが乗り、ますますスリリングな多層構造に! この重厚感はビッグバンドのアレンジを多数手がけてきた前田憲男ならではの手腕と言えるでしょう。さらに、間奏ではギターソロがさらに暴れまくり、この時代のアメリカンロックのマストアイテム(?)だったシンセサイザーの演奏も挑発してきます。

ロック魂炸裂、熱いパフォーマンスで天に向かって勝利を宣言

このように、演奏だけで炎がメラメラと立ちこめるようなリングが出来上がっているのですが、ヒデキはこれに全く負けないどころか、マイク1本で演奏陣をなぎ倒すほどの熱いパフォーマンスを見せています!

まず、Aメロでは、グラハムよりも全体にキーを下げている分、ヒデキのタフな低音が黒光りしています。「♪ 街へむかう 俺の人影 愛を求めている」といった山本伊織の訳詞もあり、まるでダークヒーローのようです。ちなみに、女性の描写も2コーラス目に登場しますが「♪ 酒につぶれ 抱いたお前は なんて美しい」と、なかなかのヤサグレぶりで、孤独な男と女の愛を感じさせます。

それでいて、「♪ 街は今夜も 嵐にうねる海のよう」から始まるBメロでは、ヒデキのパブリックイメージに近い、明るくも妖しいボーカルをチラつかせるのもお見事! ブラスサウンドが加わるのもあり、これから始まる恋愛という名のゲームを予感させます。このBメロのファンキーな要素が、ともすれば重苦しくなりがちな全体の雰囲気を中和しているのもポイントでしょう。個人的には「♪ 愛に孤独な」の「あ」の発音がなんともセクシーでツボにハマります。

そして、サビでは一気に激しさが爆発!! 「Night games」というフレーズが4回出てくるのですが、1回目と2回目で力強くシャウトしたかと思えば、3回目でさらにずり上がるようなハイトーン、そして続けざまに4回目でロングトーンを決める感じで、リスナーはこの「Night games」の4発のパンチで一気にノックアウトされてしまうことでしょう。

さらに、2コーラス目以降、このサビの部分が3回もリフレインされ、演奏も秀樹の歌唱もますます激しくエスカレート。ラストの「♪ ah~ ah~~~!!」というシャウトは、さながらヒデキが天に向かって勝利を宣言するかのよう。まさにヒデキのロック魂が炸裂しまくっています。

「ナイト・ゲーム2020」がリリース、受け継がれていく愛

本作は、レコードやCDで聴いてもとんでもない熱量を感じるのですが、ライブ映像を見ると、秀樹から「何が見えたか 炎が見えたか」と問われるまでもなく、メラメラと燃えたぎるような熱唱ぶりにクラクラします。だからこそ、当時コンサート会場や野外スタジアムに足を運んでは卒倒しまくったというファンによるリクエストでは、絶大な人気なのでしょう。

なお、発売からまる37年経った2020年6月1日、なんと「ナイト・ゲーム2020」のCDがリリース!こちらは、2000年代に録音していた西城秀樹の未発表ボーカルに、ヘヴィメタルバンドANTHEMが伴奏し、さらに原曲を歌ったグラハム・ボネットもコーラスで参加するという夢のようなコラボレーション。そう、命がけの作品だったからこそ、こうして愛が受け継がれていくのだと実感します。

テレビからでよく流れる西城秀樹の歌は、70年代の最大ヒット「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」や珠玉のバラード「ブルースカイ ブルー」、あるいはドラマティックな「傷だらけのローラ」が多くなっています。また、80年代以降なら、オフコースのカバーで大ヒットした「眠れぬ夜」や、今やヘソ毛の代名詞(?)となったファンキーな「ギャランドゥ」(EVEのコーラスもファンキー!)、そして1991年にアニメ『ちびまる子ちゃん』のエンディングテーマとなった「走れ正直者」あたりでしょうか。

そんな代表曲が目白押しの西城秀樹ですが、彼の本領であるロック魂に触れるには、まずは「ナイト・ゲーム」を聴きまくるべし! ヒデキを語るのはそれからだ!!

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Song Data
■ ナイト・ゲーム / 西城秀樹
■ 作詞・作曲:E.HAMILTON
■ 訳詞:山本伊織
■ 編曲:前田憲男
■ リリース日:1983年6月1日
■ オリコン最高位:19位
■ 推定売上枚数:8.5万枚
■ 100位内登場週数:12週

※2020年5月31日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 臼井孝

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