【記者の目】松山に感じた精神的な余裕 メディアに対する警戒心が和らいだ

松山英樹(ロイター)

「なんでそんなこと聞くんですか?」。松山からそんな言葉が返ってきたのは日本ツアーでプレーしていた2013年のこと。関係者を交えての雑談だったのだが、コース外のプライベートな話題になると「怪物」と呼ばれたルーキーはすっかり口を開かなくなった。

ナイーブな性格だ。自身についての記事はインターネットでくまなくチェック。「どの記者が何を書いたか、本人は全部把握しているんで、変なことは書かない方がいいですよ」と冗談交じりに近い関係者から脅かされたこともあった。

アマチュア時代から口数の多いタイプではなかったが、プロになってからはさらに無口になった。余計なことを話さないのは報道によって傷つきたくないという自己防衛だったのだろう。

コロナ禍もあり、米ツアーで戦う松山を直接取材する機会はほとんどなくなったが、最近は以前のようなメディアに対する警戒心が和らいだように感じていた。

恩師である東北福祉大ゴルフ部の阿部靖彦監督(58)に言わせれば「大人になって、精神的な余裕が出てきたんでしょう」。オーガスタでの4日間はプレー中もそんな余裕を感じさせた。

今回の優勝でとんでもない数の記事がネット上にあふれた。今の松山はこれをくまなくチェックしようなんて無謀なことはしないはずだ。

(ゴルフ担当・田中宏治)

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