ドタキャンでワクチン廃棄も、混乱なし 高齢者向け接種会場に密着してみた

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新型コロナウイルスのワクチン接種が行われた会場(12日午後2時、大津市・皇子が丘公園体育館)

 新型コロナウイルス対策の「切り札」と期待されるワクチンの高齢者向け接種が12日、京都、滋賀でも始まった。多数の住民を対象に、安全を確保しながら効率よく接種するという前例のない事業はどのように進んだのか。初日の大津、京都両会場をルポした。

■集団接種

 ◇大津市・皇子が丘公園体育館

 午後1時15分 最初の接種対象者が会場前に。受け付け開始は35分後。5組ほどが集まった段階で市職員が急きょパイプ椅子を並べて待機スペースを設けた。

 1時45分 密を避けるため、5分前倒しで会場内へ誘導。体温測定後、予診票の確認ブースへ。「主治医に接種しても良いと言われましたか」。2人一組の係員のチェックは2、3分で終了。10組ほどが待つ時間帯もあったが、市は「想定の範囲内」。

 1時52分 3カ所の予診ブースでは、大津赤十字病院の医師が予診票の確認を終えた高齢者を順に健康確認。「体調に問題はないですか」「はい」。懸念されていた予診での混雑は見られなかった。

 1時56分 大津市内の男性(85)が接種を受けた。「普通の注射より筋肉が圧迫される感覚があり、痛かった」。会場入りからここまで10分あまりだった。

 2時12分 副反応に備える経過観察エリアには10人ほどが待機していた。接種を終えた人は、椅子に備え付けのストップウオッチが15分を知らせると会場を後に。マイカーを運転して来場したという男性(91)は「体調も悪くない。運転して1人で帰ります」。

 2時20分 入り口付近の待機者が一時的にゼロに。予診ブースに並ぶ人もいなくなる。手の空いた医師が他のブースを見て回る余裕も。

 3時45分 この日最後の59人目の経過観察が終了。全体で要した時間は、ほぼ予定通りの2時間だった。

 市によると、接種完了まで1人あたり15分の想定はおおむね守れたという。予診した篠村徹太郎・大津赤十字病院副院長(59)は「接種を迷う人はおらず、かかりつけ医への相談を済ませてもらっていた」、接種を担当した同病院の看護師(38)は「皆さん接種しやすい服装を心掛けてくれ、スムーズに進んだ」と振り返った。

 一方、想定外の事態も。60人の接種予定に対し、キャンセルが1人出たため、1回分のワクチンが廃棄になった。市の担当者は「キャンセルが出た場合、接種業務に当たる従事者の中で希望する人に接種することを検討したい」とした。

■施設接種

 ◇京都市・特別養護老人ホーム「花友しらかわ」

 午後1時25分 入所者への接種がスタート。施設内の多目的フロアに受け付けや問診、接種場所が設けられ、看護師が体温や血圧測定などの問診を、常勤医師が接種を担当した。

 寝たきりの高齢者は医師がベッドのある部屋に出向いた。「注射しますね」と声を掛けると、落ち着いて接種を受けていたという。

 2時半頃 約1時間で初日の接種は終了。接種希望者201人のうち、入所者24人と職員14人が接種を受けた。

 クラスター(感染者集団)の発生を防ぐため、市は64歳以下の施設職員も優先接種の対象とした。増元寛和施設長(47)は「日々、高齢者と接することを考えると職員も含め接種が受けられることはありがたい」と話した。