一時6番手もピットロスにクラッシュ……MOTUL松田次生「すごく悔しい」。厳しい状況でも見えた光明

 開幕前には今季の劣勢が予想されたニッサンGT-R陣営。スーパーGT開幕戦、第1戦の岡山の予選では4台全車がQ1ノックダウンしてしまい、その状況の厳しさを伺わせたが、決勝ではホンダ勢をかわし、GRスープラ勢を追う6番手まで順位を上げるパフォーマンスを見せた。予選では23号車MOTUL AUTECH GT-Rにパドルシフトのトラブルが発生し、決勝でもアクシデントが連続したニッサン陣営だが、今後の戦いの光明は見えた。

 予選では12番手となってしまったMOTUL AUTECH GT-Rだったが、決勝に向けては自信があった。実際、レースではスタートを務めたロニー・クインタレッリがミシュランタイヤのウォームアップ性能の高さを活かし、オープニングラップでなんと5台をパスして7番手まで浮上。さらに6周目にはModulo NSX-GTをオーバーテイクして6番手に上がり、上位5台のブリヂストン装着のGRスープラ勢を追った。

 しかし33周目、GT300車両のクラッシュを引き金にした一斉ピットインから、23号車の運命は一転してしまった。後半スティントを担当した松田次生が振り返る。

「ピットインではちょっと状況がごちゃごちゃになってしまった。止まった位置が少しズレていて、給油がすごく遅れてしまった」

 自分たちの前後で同時準備している状況では、ストップする位置は簡単ではない。前半担当のクインタレッリはボックス(マシンを止める位置を記したテーピングエリア)を外れて止まらざるを得ない状況になってしまったのだ。

「止まった位置が横にズレていて給油ホースが届かなかった。そこでのタイムロスがありました。そのロスがなければ38号車(ZENT GRスープラ/ピットアウト時5番手)の後ろでコースインできていたはずなので、すごくもったいなかった」と次生。

 ニスモ自慢の素早いピット作業も、さすがに給油ホースが届かなければ本領を発揮できない。松田次生に乗り変わってコースに戻ったMOTUL GT-Rは、実質9番手まで順位を下げてしまうことになった。

 さらに、50周目にはMOTUL松田にアクシデントが訪れる。9コーナーのパイパーコーナーで8号車ARTA NSX-GTと接触してしまい、バランスを崩したMOTUL松田はGT300車両にクラッシュしてしまう。

「8号車をほぼほぼ抜ききったと思ったのですけど……アウト側にGT300車両もいたので、タイトに曲がろうとステアリングを切ろうとしたところで8号車がインにいて、僕がスピン状態になって……そのままどうすることもできませんでした」と次生。

 右フロント部を破損した23号車はなんとか自走でピットに戻ったものの、その場でリタイアとなってしまった。さらに、次生にはレース後、ドライブスルー相当のペナルティが課されることになってしまった。

「レースには自信を持てたのですけど、うまくいきませんでした。それでもペースはよかったし、クルマもよくてGRスープラ、NSXとも十分に戦える位置にいたと思います」

「8号車とずっと競っていて、抜けそうで何回か仕掛けていたのですけど……すごく悔しいですね。8号車を抜ききっていないとの理由でペナルティを受けて悲しくなってしまいましたが、今のGTはそのようなルールなので仕方がない。この悔しさは次に活かして、気持ちを切り替えて次に臨みたいです。次、頑張ります」と次生。

 23号車だけでなく、さらにニッサンGT-R陣営にとって不幸だったのは、レース中の23号車のマルチアクシデントによって、その後ろを走行していた12号車カルソニック IMPUL GT-Rも巻き込まれてスピンし、コースアウトしてしまったことだ。

23号車MOTUL AUTECH GT-RとGT300のクラッシュに巻き込まれる形でスピンしてしまったカルソニック IMPUL GT-R

 幸い大きな損傷はなかったようで、12号車はすぐにコースに復帰し、その後順位を上げて10位フィニッシュを果たした。今回、12号車カルソニックでGT500クラスのレースデビューを果たした松下信治に聞く。

「予選はアタックでミスをしたわけではないんですけど、タイヤの選択がうまく行かずグリップを発揮できなくて、その分、順位は沈んでしまいました」と、GT500初予選となるQ1で13番手となったしまった松下。しかし、決勝レースでは1号車STANLEY NSX-GT、3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rとクリーンバトルを演じ、オーバーテイクするなど持ち前のパフォーマンスの一端を見せた。

「レースはやっぱりトヨタ勢が全然速くて、サーキット自体も抜きづらいコースで詰まってしまう場面が多かった。その部分で順位を上げることが難しかったのですけど、なんとか3号車を抜けたり、そこはよかったと思います」
 
「僕の最後はピットストップで前が詰まってしまって抜かれてしまいましたけど、初めてのGT500のレースで思ったことは、今日のレースを見てもレース距離が長いので最後まで何が起こるかわからないんだなと。12号車は後半にスピンがあったけど、1ポイント獲ることができた。最後まで踏ん張って走っていればもうちょっと上でゴールはできたと思うので、次回に向けてまた頑張りたいです」と松下。

 開幕戦、ニッサンGT-R陣営のGT500クラス最上位は3号車CRAFTSPORTSの9位。23号車MOTUL、12号車カルソニックを始め、ニッサン陣営として決して本意の成績とは言えないリザルトになってしまったが、少なくとも昨年よりも戦える手応えを得た今季の幕開けとなった。

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