【フィギュア】羽生結弦が今季最終戦へ「1秒に満たない瞬間でもいいので、何かを残したい」

意気込みを語った羽生結弦

フィギュアスケートの世界国別対抗戦(15日開幕、丸善インテックアリーナ大阪)の公式練習が14日に行われ、五輪2連覇の羽生結弦(26=ANA)がリモートインタビューに応じた。

3位に終わった世界選手権から2週間半。マスクの中で笑顔を絶やさない王者がいた。世界選手権と時より柔和な表情を浮かべ「ちょうど今日、やっと隔離(14日間)が終わった状態。自分のケジメとして、しっかりと隔離期間を終えた上で来ました」と話した。氷上練習では「若干、足がフワフワしているところもあった」と言いつつも「それも含めていい調整ができたと思っています」と及第点を与えた。

かねて羽生は人類初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)の挑戦を明言してきた。(北京)五輪の「金メダルよりも4回転半」とさえ言った。今大会は「このスケジュールでさすがに(クワッド)アクセルに挑むのは無理かなあということを感じています」と話しつつも、一方で「普通の試合以上の演技をしたい」と自分を律する。その背景にあるのは、もちろん新型コロナウイルスの状況だ。

「この大阪という地が今、大変なことになっているのは僕も重々わかっていますし、そして世界中、そして日本も、自分のふるさとである宮城・仙台も大変なことになっていることも分かりながら、複雑な思いで今ここにいます」

連日のように新規感染者が増え、変異株も猛威を振う。そんな中で「僕ができることはここに立って、ここに演技を残していって、誰かの、何かしらの希望だったり、心が動く瞬間だったり、本当に1秒でもいいので、1秒にも満たない瞬間でもいいので、何かしら誰かの中に残るものを演技すべきだなと思ってここにいます」と言葉に思いを込めた。

さらに羽生は「すごく難しい問題で、言葉をうまく出すのが本当に大変なんですけども」と言いつつ、何度も沈黙を交ぜながらこう話した。

「大変な状況は震災の時と同じで、皆さんそれぞれ違うんだなっていうのをすごく今、痛感しています。お仕事の方で大変だと思われる方、そして医療従事者の方は本当に普通以上の疲労だったり、精神的な苦痛だったり、いろんなものがあると思います。本当にいろんなシチュエーションがあると思います。でも、僕は演技で何かを残すことが絶対できると思うので。というか残したいので。何かしらの意味をここの国別対抗戦という場所をお借りしてプログラムを通して残していきたいなと思います」

氷上に、そして我々の記憶に何を残してくれるのか。15日午後7時38分、今季最後の王者の舞が始まる。

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