福島原発処理水と通常原発排水 核種が全く違う

 自民党の東京電力福島第一原発処理水等政策勉強会代表世話人で元農林副大臣の山本拓衆院議員(比例北陸信越ブロック)が、福島第一原発で増え続ける放射性物質による汚染水の処理水は通常運転している原発から排出される処理水と「まったく異なる(核種を含むものである)ことは明らかになっている」と自身のホームページで14日までに報道関係者に発信した。「トリチウムのみの安全性の議論は正しくない」と提起した正論を述べている。

 山本氏はトリチウムを含む多核種除去設備(ALPS)処理水が通常の原発の排水と同様であるかのような事実と異なる内容が散見されるため発信した旨を伝え「事実と異なる報道は既存の国内の原発立地地域にも不要な風評被害を新たに生じさせる」として、事実を伝えるよう求めている。

 山本氏は「東京電力のHPでALPS処理水タンク内の処理水を試験的に二次処理したところ、トリチウム以外にも『ヨウ素129』『セシウム135』『セシウム137』をはじめ12核種が完全には除去できないことが明らかになっている」と説明。

 そして「12核種のうち11核種は通常の原発排水には含まれない核種であり、ALPS処理水は通常の原発排水とは全く異なるもの。2次処理後も、残っている核種には半減期の長いものも多い。(例えば)ヨウ素129は約1570万年、セシウム135は約230万年、炭素14は約5700年などになっている」と紹介した。

 そのうえで「自民党国会議員(党員)として、菅義偉自民党総裁の決断には反対はしませんが、菅総裁が何故『海洋放出が現実的』と政治判断したのか、具体的理由を知りたいという声が多くの国民・党員から寄せられている」とし「昨年の暫定総裁選挙で菅総裁を応援した一人として、菅総裁から具体的理由を正直かつ丁寧かつ分かりやすく国民に対して明らかにするよう引き続き求めていきます」と自身の立ち位置を明確している。

 トリチウム以外の放射性物質が含まれていること、特に「炭素14」に対する危険性は国際環境NGOグリーンピースの専門家も「2020レポート」で指摘しており、政府並びに東京電力には丁寧な説明責任がある。

 国際環境NGOグリーンピース・ドイツのシニア原子力スペシャリスト、ショーン・バーニー氏は「炭素はすべての生物に基本構成要素として組み込まれることから、長期的に見れば集団被曝線量の主な要因となる。このため炭素14は人間の細胞DNAを損傷する可能性がある。これについて日本政府と東電はタンクに貯蔵されている汚染水は『処理済み』でトリチウムしか含まれていないととれるような説明を続けている。炭素14は水中に含まれる他の放射性核種と合わせて、遺伝的損傷を引き起こす可能性があり、何千年もの間、危険な状態のままであり続ける。これが、(海洋放出)計画を中止しなければならない一つの理由だ」と海洋放出しないよう求めている。(編集担当:森高龍二)

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