来日に黄色信号か。グリッケンハウス、WEC開幕戦を欠場。ル・マン以降の参戦は未定

 スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス(SCG/グリッケンハウス・レーシング)は5月1日に行われるWEC世界耐久選手権第1戦スパ・フランコルシャン6時間レースを欠場し、グリッケンハウス007 LMHのデビューを第2戦ポルティマオ8時間レースに延期させるとアナウンスした。

 この決定は、来月上旬にモータースポーツランド・アラゴンで予定されている30時間耐久テストが完了していないことに起因している。

 チーム代表のジム・グリッケンハウスによると、3月に開催されたバレルンガテストでの事故はマシンの最終的なホモロゲーションの遅れには影響していないといい、コロナ禍による渡航や物流の制限やその影響による組み立ての遅れやが主な要因だという。

「私たちの計画に変更はない」と彼はSportscar365に語った。

「COVID-19のおかげでサプライヤーによる納品が難しくなった。以前はイギリスからひと晩で調達できたものが、今では3週間もかかるんだ。電気コネクタのような小さなものであっても、かなりの時間がかかるようになった。これらが影響している」

「COVID-19の渡航制限は私たちに多大な影響を及ぼした」

「我々のチームにはアメリカ、フランス、イギリスのドライバーがいる。(渡航の)ルールは15分ごとに変更される。その兆候をみるのはとても難しく、物事のスピードが落ちた。しかし、遅くなったからといって何かが変わるわけではない」

「私たちは最初から30時間のテストを行う予定だった。また、この暫定的なエアロダイナミクスの分析と、ホモロゲーション前の本格的な風洞テストを実施する予定だったんだ」

「インターネットには、無謀にも私たちがスパをレースしていないことは何かを意味すると思い込んでいる(書き込みがある)。だが、それは何の意味もない。私たちは遅れている。それには多くの理由があるが、私たちにはプレッシャーはない」

「なぜ最終的に良くないクルマでスパのレースに駆けつけ、良くないかたちに閉じ込められる必要があるのだろうか? それはクレイジーだよ」

■目標は「打倒フェラーリ」

 グリッケンハウスは、007 LMH開発の次のステップは最終的なエアロ構成を完成させることであると説明した。
 
 SCGはふたつの異なるパッケージを開発してきたが、LMHのルールではシーズンを通じてひとつのエアロキットを使用しなければならない。その2番目のシャーシは現在、エアロテストのためにザウバーの風洞に置かれている。

「これはSCGのプライベートテストであり、さまざまな構成を試して最終的にどのようなクルマになるのか、何が最速になるかを決定する。最重視するのはル・マンだが、他のWECトラックでのレースにも適しているものにしたい」とグリッケンハウス。

「問題は、純粋なル・マン専用車を作った場合、他のトラックではそれほど良い性能を出せないということだ。だから、私たちはそれを見極めようとしている」

「一度決定してしまうと、クルマの寿命に対する5年間のコミットメントがロックされる。だからこそ私たちは本当に、その決定を慎重に判断したいと思っているんだ」

 同氏は「私の目標は、2023年にル・マンでフェラーリを倒すことであり、準備ができていないクルマでスパに現れることはない」と続ける。

「それに加えて、今日のベルギーにおけるCOVID-19の状況を見てほしい。それは素晴らしいものではない。自分自身やチームメイトをそんな目に遭わせたい人がいるだろうか」

 グリッケンハウス・レーシングはアラゴンでの耐久テストに先立ち、約10日前にバレルンガでふたたび追加のテストを行う予定だ。ここでは、すでに発表されている7人のドライバー全員が参加し、クルーの最終決定が行われる可能性がある。

 グリッケンハウスは「ポルティマオでは2台のマシンを走らせる準備ができているため、第2戦と続くモンツァ、そしてル・マンで2台の007 LMHを走らせることになるだろう」と語った。

■ル・マン後の計画は依然として不明確

 その一方、彼のチームは2021年シーズンのフライアウェイラウンドとなるWEC富士とWECバーレーンへのエントリーについて、現時点では未定であり追加のスポンサーを確保できるかどうかにかかっているという。

「我々はクルマを売るためにこのプログラムを行う」とグリッケンハウス。

「中東ではSCGのクルマを販売しておらず、日本でも同様に売っていない。したがって、WEC全体に対する活動を継続して行うには、これらの市場での露出を望むスポンサーが必要なんだ」

「WECがあるからといってレースをするのは、私たちが興味を持っていることでもなければ、やらなければならないことでもない。我々の(スタンスは)他社とは少し違うんだ」

「それらのスポンサーを得られると思うか? できるだろう」
「いつか日本でクルマを売ることができると思うか? もちろんだ」
「中東にもクルマを売ると思うか? そうだね」

「これらの市場でレースをすることは、ある時点でそれだけの価値があるのだろうか? もちろん」

「しかし、私たちは何かをしなければならないというプレッシャーはない。人々はそれを完全には理解していないと思う」

「私の目標は世界選手権に勝つことではない。伝統的な方法でレースを楽しみ、レースを通じてクルマを売ることだ。200万ドルをかけてバーレーンと富士に行ったところでクルマが売れることはない。なぜ、私にそのようなことをする必要があるだろうか」

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