かわいい我が子に野遊びを! キャンプを通して「心の成長・発達」を促そう

感受性が高く柔軟で、責任感や自立性のある強い心を我が子にも持って欲しい。そう願う方もいると思います。キャンプというのは、子どもの心の成長を後押ししてくれるとても貴重なレジャーのひとつ。今回は、そんな状況をよりよく生かすため、親が知っておきたいことを、文教大学教育学部 発達教育課程 幼児心理教育専修 准教授『宮野 周』先生に詳しくお話ししていただきました。 ※本記事は2019年6月に発売された「fam Summer Issue 2019」の特集企画に加筆・修正を加え再構成したものです。

子どもの心を育てるには親が適度な距離感でサポートすることが大切!

キャンプは、家族全員が楽しめる人気のレジャーです。

普段の生活環境から離れ、異なる環境に身をおくことになり、ただただ夢中に遊ぶだけでも、子どもはたくさんの経験ができ、刺激を受けて成長・発達します。ファミリーキャンプの大きなメリットでもあるでしょう。

ただ、親が意識的にサポートすることで、子どもだけでは辿り着けない、心の成長や発達に役立つ体験ができるのもポイント。「キャンプのどんな要素が、子どもにどういう影響を与えるのか」を詳しく知ることが大切です

子ども自ら気づくチャンス、行動を促してあげること、見守ることなど、状況によってサポートは様々。

具体的にどんなサポートをしたらいいのかを、文教大学准教授の『宮野 周』先生にお聞きしました。

【全年齢対象】「心の成長・発達を促すキャンプ」親が知っておくべきこと!

「心の成長・発達を促すキャンプをするために必要な、親が知っておくべきことをご紹介します。ここでは、年齢関係なく全年齢に共通して言えることをお伝えしますよ。

その1. 子どもが感じる・考える前に親が先回りして「答え」を言ってはいけない

fam Spring Issue 2019より

いろんなことに興味を持つ子どもに対して、子ども自身が考えて問題解消に挑戦しているときは、やみくもに手を差し伸べない(答えをすぐに言わない)のがベター。

実はこの子どもが自ら奮闘することが、自分なりの考え方や判断を元に解決策を見つけ出せる格好のチャンスだからです。

よく「効率重視」と言うのは、大人の事情です。答えを伝えたいのをグッと堪えて見守ること。子どものひらめきや自主性を尊重してあげましょう。

その2. 挑戦の成果を見せられたら「共感」して「褒める」ことが大切

fam Spring Issue 2019より

子どもは些細なことでも、何かを達成したらまず一番身近な親に褒めて欲しいと考えます。

「卵が綺麗に割れた」「お皿を並べることができた」「虫を捕まえてきた」など、些細なことでも成果を見せられたら、「できたね!」「すごいね!」と共感するのはもちろん、「〇〇ができるなんてスゴイ!」「〇〇の部分がよくできたね!」「上手に〇〇ができてエラいね!」と、具体的に褒めてあげることが大切。子どもが頑張ったポイントを拾い上げるといいですよ。

その3. 失敗時のマイナス感情には、しっかり寄り添ってあげることが大事

fam Spring Issue 2019より

何かに挑戦すると言うことは、達成することもあれば達成できないこともあります。そんなときは、「できなくても大丈夫」ではなく、「〇〇できなくて悔しいね」などマイナスの感情に共感するのが大切です。

悲しい・悔しいという現実を肌で感じ、受け止められるようになることで、失敗を恐れず次々挑戦していく強い心が育まれます。

その4. 必要以上の命令と指示はNG! 考える力と挑戦心を奪ってしまうことに……

fam Spring Issue 2019より

子どもが自分で考えて、何かに挑戦しようとしているときに、急かしたりするのはもちろん、命令するのはNG。親に否定されることが続いてしまうと、自分自身の判断が信じられなってしまい、チャレンジや気持ち、考える意欲を失ってしまうことにもつながりかねません。

行動に寄り添い、失敗を含めて、一緒に体験する余裕を持ちましょう。

その5. 見られていることを意識して手本として振る舞うようにしよう

fam Spring Issue 2019より

子どもと言うのは、親の立ち振る舞いを見つめています。大人が楽しそうにしていると、子どもも嬉しく感じます。逆に失敗に対して親が対処し、問題を解決していこうとする過程は、子どもの心にも響きますよ。

ときには、恥ずかしい姿や情けない姿を見せても大丈夫。キャンプという特別なシーンでは、多様な人間性を見せてあげることも大切です。

その6. 子どもの行動の「理由」を理解するチャンスを生かしていこう

fam Spring Issue 2019より

子どもの行動に対して、「何が面白いんだろう」と思うこともあるでしょう。子どもは子どもなりの意味を見い出しています。

優しく見守るのはもちろんですが、行動の元となっている理由を、子どもの立場で考えたり、推測したりすることも大切です。子どもの「こだわり」「本当にやりたいこと」の傾向が見えてくるかも!

その7. 電子機器の電源OFFを! キャンプならではのコミュニケーションを楽しもう

fam Spring Issue 2019より

日々の生活で、ついついスマートフォンのゲームやYouTubeなどに子どもの相手をさせてしまこともあるでしょう。

キャンプへ出かけたときくらいは、電子機器の電源をOFFにして、日常とは違う自然体験の楽しさを子どもと一緒に親も楽しみましょう! 貴重なコミュニケーションの機会になりますよ。

【3〜6歳児対象】「心の成長・発達を促すキャンプ」親が知っておくべきこと!

3〜6歳児とのキャンプでは、子どもの直感的な欲求を大切にしましょう。

3歳になる頃の子どもは、自分を中心とした世界観を持ち始めます。ただ、子ども一人でできることは限られているため、親は子どもがケガをしないように配慮する必要があります。

その一方で、好奇心の芽を摘んでしまうのは逆効果。子どものやる気を大切にしながら、自主性を尊重し、役割を与えるなど、刺激を与えながらサポートできる部分はサポートしましょう。

その1. チェアを並べてもらおう

fam Spring Issue 2019より

キャンプサイトに使うチェアはいくつ必要なのか、どこに置くのがいいのかなど。大人に混ざって一緒に設営作業していく中で、役割をこなす「責任感」と「考える力」を育むことができます。

その2. 子供なりの情報収集を見守ろう

fam Spring Issue 2019より

子どもは全身で対象に関わりつつ、その性質を確かめようとします。ただ寝転んでいるだけに見えても、子どものアンテナはフル稼働中です。優しく見守りましょう。

その3. 拾ったものへの興味を尊重してあげよう

fam Spring Issue 2019より

石や木の棒、どんぐり、落ち葉など、拾い集めてくるものに子どもの好奇心は凝縮されています。意味のないものとせずに、一緒に集めてあげるくらいの姿勢になることが大切です。

その4. ゴミ捨てをお願いする

fam Spring Issue 2019より

「ゴミはきちんと捨てる」という社会性に加えて、子どもが責任を持ってやり遂げることで、自立心を身につける機会にもなります。終わったらしっかり褒めてあげましょう。

その5. 食事の準備を子どもに手伝ってもらおう

fam Spring Issue 2019より

キャンプ料理の調理は無理かもしれませんが、お皿やカラトリー類を並べる・料理の盛り付けはできるはずです。

自分の手で並べたり、料理の盛り付けた食事を食べたりするという体験もプラスになるでしょう。

その6. 大胆な挑戦も助けること

fam Spring Issue 2019より

普段の生活で、怖い・難しいと思うことでも、大人が一緒にいると、安心して何度も繰り返し挑戦する傾向があります。

無理にやめさせるのではなく、できる限りサポートするスタンスを持ちましょう。

その7. 焚き火用の枝を子どもに収集してもらう

fam Spring Issue 2019より

焚き火用の枝を集める作業を、親と一緒に協力してもらうのも効果的です。集めた枝が、焚き火をする上でどれだけ大事で役立つアイテムになるのかを伝えてあげると、やる気もアップしますよ!

【7〜9歳児対象】「心の成長・発達を促すキャンプ」親が知っておくべきこと

7〜9歳児は、他人との関係を意識し、思いやりが生まれるころ。自分の判断で行動するようになり、身体的に強くなることで、より活発で挑戦心旺盛になりますよ。

ただ、自分を客観的視できるようになる一方で、自己中心的な思考も残っています。「ちょっと難しいこと」「危険なこと」にも一人で挑戦しようという意欲も芽生えるため、より目が離せなくなりますが、挑戦心をできるだけ尊重してあげることが大切です

その1. 生き物に触れるきっかけを

fam Spring Issue 2019より

魚釣りはもちろん、つかみ捕り、虫捕りなど生き物への興味が大きくなります。どうやったら捕まえられるのかを試行錯誤することもあり、柔軟な発想につながります。

その2. 火おこしを手伝ってもらおう

fam Spring Issue 2019より

危険と隣り合わせでもある火おこし。あえて挑戦したがる子どもも少なくありません。

安全を確認しながら任せることによって、責任感を感じさせるキッカケにもなるでしょう。

その3. 難しいことに挑戦するときは応援しよう

fam Spring Issue 2019より

幼児期にはできないかったことや難しかったことにも、挑戦する意欲が増大します。「危ないからダメ」ではなく、時にはチャレンジ精神を見守ることも必要です。

その4. 反抗心には対話で対処しよう

fam Spring Issue 2019より

挑戦心が高まるにつれて、危険につながる行動も増えてきます。ただそこで一方的な注意や命令には反抗することも。

丁寧に言葉を選んで対話することが大切です。

その5. 新しい仲間との交流を促してあげよう

fam Spring Issue 2019より

キャンプ場には他ファミリーキャンプを楽しむ人もいます。他の子どもと接する機会があれば、積極的に活用するのもひとつ。

新しいコミュニティの中で、柔軟性や幅広い社会性を身につける絶好の機会になりますよ。

その6. 重要な仕事の一部を任せてみよう

fam Spring Issue 2019より

調理やサイト設営の時に、一部を担当してもらうなど、大きな仕事の1パートを任せることで、チャレンジしようとする欲求を満たし、責任感を刺激することにもつながりますよ。

その7. 自然の中で工作するよう促してみる

fam Spring Issue 2019より

面白い形の石や葉っぱを見つけたら、ただ拾うことだけではなく、それを使って何かを作り出すことを促してみましょう。

クリエイティブな遊びは、想像力はもちろん発想力も向上させます。

【10〜12歳児対象】「心の成長・発達を促すキャンプ」親が知っておくべきこと

10〜12歳頃の子どもは、自己表現への欲求が活発になる時期。直感的に捉えていたもののイメージを広げて、それを言葉で表現したり、成り立ちを科学的な視点で理解したりもできるようになりますよ。

挑戦心や冒険心が今まで以上に高まり、ルールや禁止事項をあえて破ることも。グループでの遊びを通じて、決まり事を守り、役割を全うさせることの大切さを教えてあげましょう。

その1. イメージを形にする作業をやらせてみよう

fam Spring Issue 2019より

思い描いたことや好きなことを具現化する技術が身につきはじめるので、モノづくりやスケッチを通して、自分なりの表現方法を模索する機会を与えましょう。

その2. 科学的な理解を実証させよう

「こうやればうまくいく」という事例には科学的な根拠がある、ということを理解できるようになる年頃です。事例を実際に試して納得させることで、その知識は定着しますよ。

その3. グループ行動で協調性を育ませよう

fam Spring Issue 2019より

大人の関係よりも、子ども同士の繋がりをより強く感じる時期です。子どもたちだけでの散策や共同作業などの機会を設けるなど、仲間同士で楽しく活動できる場を設定してあげましょう。

その4. ルールのある遊びをさせるのも◎

fam Spring Issue 2019より

サッカーやバドミントン、虫捕り競争などゲーム性・競争心を刺激するような遊びをすることで、「ルールがあるから面白い」という考え方を教えましょう。

その5. ひと通りの作業を子どもに任せてみよう

fam Spring Issue 2019より

子どもたち同士で、自分が使うテントやハンモック、タープなどの設営作業を進めさせ、完成まで見守ることで、役割を果たすことの重要性・責任感の尊さを実感させることができますよ。

その6. 独自の視点を伸ばす工夫をしよう

fam Spring Issue 2019より

デジタルカメラなどを渡して、自由に撮影させるのも方法のひとつ。

子どもならではの視点が育まれて、対象を客観視する思考も養われます。記録を残す楽しさも覚えるでしょう。

その7. 新しく広がった欲求をサポートしよう

fam Spring Issue 2019より

ただ虫を捕まえるだけではなく、珍しいものや大きい虫などを求めたり、拾ったものでより高度なものを作りたくなる年ごろです。

親としては、全面的にサポートするのではなく、後押し程度にヒントを与えるといいでしょう。

年齢別にできることを任せて心の成長と発達を促そう!

今回は、キャンプを通してかわいい我が子に心の成長と発達を促す方法を、年齢別にご紹介しました。

ファミリーキャンプは普段の生活と異なる環境なので、貴重なタイミングでもあります。

親として子どもに言葉をかけるのはもちろんですが、見守ることも大切。どんなことに気をつけなければいけないのかなど『親が知っておくこと』を学んで、子どもと一緒に楽しみながら、子どもの心の成長と発達を促しましょう!

(ライター:タカマツミキ

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