
きょうのテーマはAI(=人工知能)。私たちの暮らしに身近なところでもAIを使った技術が増えている。
新型コロナでAIが活躍!?
札幌に去年オープンしたパン店「チェットベーカリー おもや」。

導入しているのが、店や施設の混雑状況をLINEで確認できる「アイテル」というサービスだ。札幌のエコモットが開発した。

ピープルカウンターというカメラで撮影された店内の映像を、AIがリアルタイムで解析。映っている人の数をカウントし、3分ごとに空席率を算出して混み合っているかどうかを伝えてくれる。プライバシー保護のため、映っている人はアイコンになって表示される仕組みだ。

現在、札幌の飲食店やスポーツジムを中心に、全国で約100店舗が導入している。新型コロナウイルスの感染が広がる前に開発したものだが、今では“密”を避ける予防策として需要が伸びているという。

チェットベーカリー おもやの清水さんは「店内も広いほうではないので混雑状況を気にしている客がいた。すごく安心できると言ってもらった」と話す。店内の照明が暗かったり、鏡があったりすると、AIが誤った検知をしてしまう場合があることから、エコモットは現在改良を進めているという。

続いては京王プレリアホテル札幌。このホテルで去年7月から使われているのが、アイリスオーヤマとソフトバンクロボティクスが共同開発した除菌清掃ロボット「ウィズ アイ」。

ロボットは、搭載しているカメラで障害物との距離を計測。同時にタイヤの回転数やタイヤが向いている方向を分析する。一度覚えさせれば、2回目からはあらかじめ決められたルートを自動で走行できるようになる。深夜も作業させることができ、24時間常にムラなくきれいな環境を保つことができる点もメリットだ。

現在、このホテルのほかに北海道内の福祉施設でも利用されていて、今後スーパーなど小売店への導入拡大に力を入れる方針だ。
夕食の献立はAIにおまかせ!?
冷凍食品の製造販売を手掛ける「ニチレイ」。食の好みをAIが分析し、一人一人に合ったレシピを提供できるようにするシステムを開発した。名称は「コノミル」。好みを「診る」という意味だ。


アドバイザーとして参画した北大の川村秀憲教授。「人間の感性や好みに触れていくので、これまでAIの扱いが難しかった要素の研究課題になっていく。難しいが面白そうだと思った」と、この開発にAI研究の新たな一歩を感じたという。

ニチレイが使うのは、サイコメトリクスという、心理状態を読み取ってその人の好みを把握する手法。ニチレイでは以前から商品開発などに活用してきた。「コノミル」を形作ったのも、サイコメトリクスだ。

ニチレイが分析に使うのは、「食の価値観」「心理状態」「環境」の3つの要素。「食の価値観」とは素材にこだわりたい、見栄えが大事など、食に対するその人の基本的な考えのこと。「心理状態」とは、疲れている、うきうきしているなどその時の気分を表す。最後の「環境」とは、いつ誰とどこで食事をするかを指す。これらをAIが分析し、おいしさを「見える化」して料理を提案してくれる。ニチレイは、このシステムをスマートフォン向けのアプリとして開発した。

「普段の食事で気を付ける点」や「疲れた時になにを食べたいか」といった6つの質問に答えることで、その人の「食への価値観」をタイプ別に診断する。この「食に対するタイプ」は6種類。タイプが診断された後、使いたい食材やその時の気分を入力することで、最適なレシピが提案される。

もう一つ、ニチレイがアプリをつくるうえで重要視したことは、いつの時代も変わらない「主婦のお悩み」だ。これは、主婦に尋ねた「食事作りで負担に感じること」を示したグラフ。30年前も今も、一番の悩みは「献立を考える」ことだ。

ニチレイの関屋さんは「アプリが献立を提案することで、ユーザーが決める必要がないというのが重要」と話す。システムは今後も改良を続け、AIが複数の料理を効率よく作る手順を示したり、料理に合うお酒の提案をしたりできるようにする。
AIで動物の気持ちも分かる!?
札幌の円山動物園。3年前から、AIを使って動物の行動を分析している。手掛けているのは、北大の山本雅人教授とNTTやITベンチャーの企業でつくるチームだ。


現在対象としているのは、ホッキョクグマやチンパンジー。こちらのホッキョクグマ、先ほどからずっと同じところを歩きまわっている。気ままにのんびり過ごしている様子に見えても、実はこれ、ストレスサインの一つ。円山動物園の石橋さんは「常同行動という行動で、彼らが本来やりたい欲求を満たせていないときにどうしても起きてしまう」と話す。

ホッキョクグマは、起きている時間の8割をエサを探して歩き回る。そのため行動範囲が限られ、エサも飼育員から与えられるという動物園の環境では、ストレスが溜まってしまうという。

円山動物園では、クマ本来の行動に近づけるために飼育員があえてエサを隠し、クマがエサを自ら探すようにしている。「環境エンリッチメント」といわれるこの工夫。クマの行動を記録したデータを見ると、その変化は明らか。


行動表を見ると以前はストレスを示す赤が圧倒的に多かったが、クマ自らがエサを探すようにしたことで、休息やリラックスした状態を示す緑に。円山動物園では従来飼育員が毎日時間をかけて行動を分析していたが、今はその作業はAIが行う。AIの活用によって、手間を大きく省くことができた。

一方のチンパンジー。9頭のチンパンジーをAIに識別させるため、1頭につき数百枚の写真を撮影した。そのデータをAIに学習させ、現状では80パーセントの精度で個体を判別できるという。


こちらはジェーンというメスと、ほかのチンパンジーとの距離をグラフで示したもの。横軸は時間で、縦軸はどれだけ離れているかを表している。

グラフの緑色、コユキというメスはジェーンと距離が近い一方で、水色、ガチャというメスのチンパンジーは離れて過ごしていることがわかる。個体同士の距離を把握することで、仲の良さや発情期の行動の違いが分かるようになるという。将来的には、ペットの気持ちを理解する技術の開発にもつながっていくと考えている。
日々進化を続けるAIの技術。人手不足などを解決する手段となるのだろうか。
(2021年4月17日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)