“キング”内村航平が復活の五輪へ 日本体操協会・高橋徳男本部長「彼は繊細。柔軟に対応できる」

高難度の技にも対応した

キングの〝最後の進化〟はあるのか。体操の東京五輪代表選考会を兼ねた全日本選手権(16日、群馬・高崎アリーナ)の男子種目別トライアウトで、五輪個人総合2連覇の内村航平(32=ジョイカル)が鉄棒で15・166点をマークし、トップで18日の決勝に進出した。大舞台に向けて上々のスタートを切ったが、切符を手にするまでの道のりは容易ではない。それでも日本体操協会の高橋孝徳男子審判本部長は、32歳となっても演技の質がまだまだ向上するとみている。

さすがの集中力だった。冒頭のH難度の大技「ブレトシュナイダー(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)」を決めると、カッシーナ、コールマンも成功。演技前の練習でバーを握る感覚がいつもと違い、多少の不安もあったようだが、キングは「予選としては上出来かな」と振り返った。

これまでターゲットにしてきた団体代表ではなく、今回は鉄棒に専念。内村は「(若手が)非常に頼もしい。同じチームでできないのが残念」と話すが、〝スペシャリスト〟として五輪を目指す道を選んだ。日本は個人枠をすでに1枠確保しており、最大で2枠。出場権を手にするには、今大会のトライアウト、決勝、5月のNHK杯、6月の全日本種目別選手権予選、決勝で高得点が求められる。また、他5種目の選手もライバルとなるため、決してハードルは低くない。果たしてここからさらに調子を上げ、切符を手にできるのか。

この日は手を離した場面や着地などで減点があった。演技を見た高橋本部長は「内村選手に限らず有力選手に普段見られないようなミスがありましたが、春先の大会ということで、ここから仕上がっていくのではないでしょうか」と分析した。

実戦から離れた約4か月間が「技を一つひとつ見直す時期」だったことで「そこから『この演技でいく』と構成を練って準備してきたはず。そして実際の試合で修正できる部分は多くあったので、ここから試合慣れしていけば演技の質も上がる」と断言する。

内村の特長についても「彼は繊細なので、ちょっとした器具のコンディションの違いにも柔軟に対応できるのでは」と言い、十分アジャストできるというのだ。

キングは「五輪のことは考えず、やることをしっかりやれば結果はついてくる」と静かに闘志を燃やしている。32歳は本番に向けてまだまだ〝進化〟を遂げるつもりだ。

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