66歳、貯金300万「老後資金を増やすために投資を始めたい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、66歳、パートの女性。現在貯金が300万円ほどという相談者。リフォームなど、今後も出費が見込まれるなか、投資をして老後資金を増やしたいと言いますが……。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

これからの老後資金について相談させてください。

現在66歳で、老人保健施設で働いています。子どもはみんな独立し、一人暮らしです。毎月の手取り収入は約17万円。マンションのローンも完済していますし、それで暮らすことができていたのですが、65歳になり月に約8万円の年金を受け取るようになったら、その分支出が増えたようです。貯金を増やすことを期待していたのに、この1年、全く増えることがありません。

今の貯金は300万円ほど。マンションを中古で購入したので、もう少しでリフォームが必要になると思いますし、90歳、100歳と生きることになったら、老後資金が足りないと思います。その時に子どもの世話になるなどは、申し訳なくて考えられません。

できれば投資をして、少しでも老後資金を増やしていきたいのですが、60歳を過ぎてからの投資の始め方や老後資金のつくり方を教えていただけないでしょうか。また、年金の繰り下げをすると年金が増えると聞いたのですが、私はそれを使うことはできないのでしょうか。今後、仕事は70歳まででき、収入額は変わらない見込みです。

【相談者プロフィール】

・女性、66歳、介護助手、常勤パート

・息子、娘は独立、夫とは若いころに離別

・手取り収入:月収16万8,000円、年金7万9,000円/月、仕送り2万円、ボーナス約10万円/年

・貯金約300万円

・毎月の支出の目安:24万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(管理費): 1万5,000円

・食費:6万円

・水道光熱費:2万円

・通信費:1万3,000円

・生命保険料:7,000円

・日用品代:5,000円

・医療費:2,000円

・教育費:1万円

・交通費:1,000円

・被服費:1万円

・交際費:1万円

・娯楽費:7万円

・し好品(酒):2,000円

・その他:1万5,000円


FP:年金受給が始まり収入が増えているうちに、老後資金を増やしたいとお考えなのですね。現在の老後資金は300万円。上手に暮らしていかないと、残額がすぐになくなりそうで心配です。どのようにやりくりをし、老後資金を長持ちさせるかという視点で考えてみましょう。

収入がある時期に貯金を増やせないことに危機感を

60歳以降のことを考えると、この先今以上の収入がある時期はないということを、まずしっかりと認識しておきましょう。つまり、70歳になるまでの4年弱が老後資金を増やすチャンスです。

今の時期を逃すと、退職後は年金とお子さんからの仕送りだけが収入となります。金額にすると10万円ほど。これで暮らせるのかどうかをまず考えてみましょう。よく、仕事をやめれば支出は減るものだと言われる方がいるのですが、月に24万円かかる暮らしを急に10万円の暮らしにすることは不可能です。そう簡単なことではないのです。

ですから今のうちに支出を減らし、生活費を少なくしておくことは、これからの暮らしを維持するために大切なことです。収入がある時期は貯金できる金額を増やすことができますし、収入が少ない時期には、貯金を切り崩す金額を少なくできるからです。

今のままでは貯金はできませんし、収入が減れば貯金から補填をする暮らしになります。毎月14万円補てんする暮らしでは、貯金の300万円は21カ月しかもちません。2年ももたないのです。このことには十分危機感を持っていただきたいものです。

支出の削減を検討しよう

少しでも支出を減らすには、どうするとよいでしょうか。まず、自分が毎月何にいくらを使って暮らしているのか、全体像をもう少しきちんと把握しましょう。

今はお子さんからの仕送りもあり、月の収入額は26万7,000円ほどあるようです。対してお伺いした支出は24万円。2万7,000円は残っている計算となるのですが、貯金が全く増えないということは、何かしらで使ってしまっているのでしょう。残るはずのお金が何に使われているのか、もう少し支出について把握を進めたいものです。

また、娯楽費が極端にかかりすぎていることがわかります。楽しみを辞めろとは言いませんが、適度な支出額に抑えるべきです。食費、通信費も見直しの余地がありそうですし、水道光熱費、被服費も利用の仕方、買い物の仕方などを工夫すると下げられる可能性があります。洋服などは毎月買う必要はないでしょうから、3カ月に一度など頻度を減らすだけでも支出の削減になるのです。無理をして支出を減らすのではなく、必要な支出は残しながら削減していくと、生活に定着させやすいと思います。

投資をするのか、貯金を増やすのか

投資を始めたいというお言葉もありましたが、毎月の支出を削減し、投資に充てられるお金を毎月安定して作れるまでは、始めないほうが良いでしょう。今のところ生活費1年分ほどの蓄えがあるとはいえ、余剰金が毎月できない状態で投資を始めると、その蓄えからお金を投資に回すようになります。そうすると、万が一まとまったお金が必要になった時に対応できません。

貯金でも投資でも、自分のお金が形を変えるだけなので変わらないと思われるかもしれませんが、投資の場合はその時の相場により価格が異なります。お金が必要になって投資商品を売ったら、損をしてしまったということもありますから、安易に投資で増やそうはすべきではないように思います。必ず毎月のやりくりで安定した余剰金を出せるようになってからにしましょう。

年金の繰り下げは、受給を開始してからではできない

また、年金の繰り下げをすると、年金額は増えます。1カ月繰り下げるごとに0.7%増えることになっています。年金を増やすにはとても良い仕組みで、基礎年金、厚生年金を別々に繰り下げることもできるのですが、受給額から見ると、ご相談者はすでに両方の年金を受け取っているようです。受給をしはじめると、もう年金受給を繰り下げることはできません。

できるだけ老後資金を長持ちさせながら暮らすことが最善

ご相談者が今できること、するべきことを再度確認しましょう。まず、支出を把握し、削減すること。そして少しでも長く働くこと。これは仕事の量が減っても良いと思います。年金を鑑みながら取り組んでいきましょう。

できるだけ老後資金を切り崩さずに、長持ちさせながら暮らしていくことが最善の策です。ですが、先のことを考えると、思ったより老後資金が減るスピードが早く、なくなってしまう可能性もあるでしょう。もし、そうなってしまい、お子さんを頼ることもできないならば、耐えてしのぐ暮らしをするのではなく、生活保護などの公的な支援を受けることを役所などに相談しましょう。

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