黒星スタートの楽天・田中将 MLBスカウト&他球団007が指摘する“心と体の不安要素”

次回登板で雪辱なるか

楽天・田中将大投手(32)が17日の日本ハム戦(東京ドーム)で8年ぶりとなる国内復帰登板に臨んだが、5回4安打3失点での黒星スタートとなった。NPBでの連勝記録が「28」でストップした田中将は「シーズンに入れば勝った、負けた、そこが一番重要なので。どういう形であれ(打者を)抑えるのが重要」と一切の言い訳をしなかったが、問題はここからどう状態を上げて行くか。来季のメジャー復帰に備えるMLBスカウト、NPBの007部隊からは「心と体の不安要素」が指摘された。

直接の敗因となったのは初回、中田翔への154キロ直球が外角高めへ抜け、2ラン被弾。2回、石井一への甘く入った144キロ直球のソロ被弾だった。

いずれも田中将自身が「(初回の)四球、ホームランと点の取られ方もそうですし(2回に)味方が点を取ってくれた後にポーンと(本塁打を)打たれてしまったので、もったいない点の取られ方だったと思う」と振り返る失投だった。

3月20日、巨人とのオープン戦(東京ドーム=7回3安打1失点)での最終調整後に右ヒラメ筋損傷による開幕第2戦の登板を回避してから約1か月、実戦登板がなくぶっつけによる一軍登板の影響もあっただろう。

石井監督も「制球が高いこと以外、ボール自体はそんなに悪い感じはなかった。実戦から離れていたし、アドレナリンの出るところも投球練習とは違う。これからうまくシーズンに入ってくれると思う」と日米通算177勝右腕への揺るぎない信頼を語った。

一方で、今オフにもメジャー復帰の可能性を残す田中将をチェックするメジャースカウトからは気になる指摘も聞かれた。

ある東海岸球団のスカウトは「実戦から離れていたという先入観なしに見ていて、右のふくらはぎ以外にどこか体に不安があるのかなという印象を受けた」としながらこう続けた。

「たとえば下半身に粘りがないことで、基本であるストレートにキレがないこと。中田が打った154キロも数字ほど速くは見えなかったし、気になったのが高めに抜けるストレートを押さえようともしていなかったこと。おそらくもっと腕を振ればスピードボールは投げられるんでしょうが、どこか加減して投げているように見えた。腕が振れていないからスプリットの割合も極端に少ないし、投球に迫力がない。メジャーの7年間で負ったダメージがひじ肩に溜まっているような印象を受けざるを得なかった」

また、田中将のスタイルチェンジの印象をパ・リーグ007部隊の一人がこう指摘した。

「開幕前5試合とこの試合から受けるトータルの印象は、もう彼はパワーピッチャーではなく技巧派のコントロールピッチャーに移行したのかなということ。やはり8年前にはあった闘魂というか、むき出しの闘争心が今は目には見えない。キャリア的にも仕方のないことなんでしょうが、彼の最大の特徴はその闘争心を象徴する目力にあったと思う。ピンチの場面で相手をにらみつけるあの目力で、気の弱い打者は対戦以前に(勝負に)負けてしまっていた。ただ、今は狙い通り三振を取った後に吠えるようなこともなく、ただ淡々と投げている印象。もし感情の起伏を抑えたそのスタイルでいくのなら対策もそれに則した方向でいく必要がある」

テンションを無闇に上げず吠えない田中将と、その勤続疲労説…。その説を確認する意味でも多くの関係者が、次回登板以降の田中将の投球に注目している。

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