「こども庁」が注目されている。菅義偉首相が創設に前向きで、自民党内でも検討が進んでいる。同庁は子供に関係する政策が各省庁にまたがっている現状を解消しようというもの。政府与党は行政の縦割り打破の象徴にしたい考えで、虐待や子供の貧困などの課題に対応するというが、不安の声も上がっている。
「こども庁創設の議論から大事なことが抜けている気がするのです。というのも『いじめ』についてどういう話をしているのかが伝わってきません。いじめは子供の命に関わる話で国民の関心は高いと思うのですが…」
こう話すのは子供がいじめを受けて登校拒否になった経験を持つ年配男性だ。いじめられていた当時は父親として学校や文部科学省など行政機関にも掛け合うほど、いじめをやめさせるために尽力していた。
それだけに文科省の頼りなさは身に染みて分かっている。
「問題の一つが文科省は私立の学校には何もできないことです。こども庁創設をきっかけに改善すべきでしょう。また、公立校を含めて『いじめ防止対策推進法』を徹底する。今の仕組みをこども庁にそのまま持っていくのはいけません」(同)
動きの鈍い文科省からこども庁に権限が移ることで、いい方向に向かっていくことをこの男性は期待している。
「政府与党がこども庁に本気であるとアピールするには、実際に起きているいじめ事件を解決に導くことがいいでしょう。こども庁に強い調査権限を持たせて、スピード感を持って取り組む。その姿勢を見せれば、国民にも政府与党が本気だと伝わりますよ」(同)
現状の国のいじめ対策は不十分。今も裁判中のいじめ事件は多く、いじめを伝えるニュースもなくならない。必要なのは教育現場に切り込める強い権限だ。こども庁創設をきっかけとすることができるか。