<25日香港GⅠチャンピオンズデー>デアリングタクト激暑!気温上昇とともに状態アップ

状態アップのデアリングタクト

香港でドバイのリベンジだ!! 国内GⅠがひと休みの今週末は、香港チャンピオンズデー(25日=シャティン競馬場)が開催される。3・27ドバイ国際競走で日本馬は出走GⅠ全4レースで2着が最先着だったが、今回はGⅠ2競走ともに金メダル当確ムード。クイーンエリザベスⅡ世カップ(芝2000メートル)は上位独占濃厚で、チェアマンズスプリントプライズ(芝1200メートル)はダノンスマッシュ(牡6・安田隆行キュウ舎)が国内外GⅠ3連勝にリーチ。中でも注目はクイーンEⅡ世Cで最有力候補のデアリングタクト(牝4・杉山晴紀キュウ舎)。史上初めて無敗で牝馬3冠を決めた後は2連敗だが、果たして夢の続きはあるのか?

【クイーンEⅡ世C】史上初となる無敗での牝馬3冠を達成したデアリングタクト。昨年のジャパンCでは同じく無敗で牡馬3冠を達成したコントレイル、絶対王者アーモンドアイに挑んで僅差の3着。2021年シーズンは“ポスト・アーモンドアイ”としてコントレイル、GⅠ3勝馬クロノジェネシスと古馬路線をけん引するはずだったが…。

今年初戦のGⅡ金鯱賞は超伏兵ギベオンにクビ差で逃げ切りを許した。ただ、戦前から杉山晴調教師は「寒い時季は冬毛が伸びて見栄えが良くない。それに競馬を使ってガラッと良くなる馬でもあるから…」。冬場はなかなか調子が上がらない時季。勝つに越したことはないが、内容にこだわっていた節はあった。

昨年も1月の白梅賞を使う予定ながら、毛ヅヤがひと息という理由でエルフィンSへ変更した経緯がある。同レースは4馬身差Vという強い勝ち方ながら、本調子ではなかったのも事実。様々な点を考慮し、大目標のクイーンエリザベスⅡ世カップに向けて、どのステップが本番へ向けて状態を上げやすいかを考慮し、3月中旬の金鯱賞を今年初戦に選択した。

ジャパンCでは内へモタれる面を見せていたので、その修正を確認する意味で左回りへ出走。加えて稽古の動きが昨年の休み明けの桜花賞、秋華賞時よりも物足りない。正直、惨敗まであるかもと個人的に思っていただけに、結果を除けばモタれる面、そして当日のイレ込みという課題をしっかりとクリア。精神的な成長を感じ取ることができた一戦でもあった。

ただ、杉山晴調教師は「気温の上昇とともに冬毛が抜けてコンディションは良くなっています。キ甲も抜けて古馬らしい体つきにはなっていますが、昨年の桜花賞からオークスはすごくパンプアップしたのに、それと比べるともうひとつの感じはしますね」。

叩いて中5週は理想的なローテーションながら、オークスの時ほどの上昇カーブを描いていないことに不満が残っている。出国した15日の計量が474キロで、昨年の秋華賞時より6キロ減。海外への輸送を考えると、前回からプラス体重での出走は厳しいかもしれない。

「秋華賞が480キロで競馬をしてますからね。ひと叩きして良化はしているし、もう一段階良くなる余地がありそうですが、一方で初の海外遠征だけに輸送などいろいろクリアしなければならない課題もあります」

実に微妙なニュアンスだが“夏馬”の同馬にとって、日本よりも平均気温が5度ほど高い香港は大歓迎。さらに主戦の松山が騎乗停止中のため、現地滞在で付きっ切りで調教できるのは好都合だ。劇的とまでは言わないが、状態がかなり上向く可能性はある。

新型コロナの影響による少頭数とメンバーのレベル、そしてデアリングタクトの実績を考慮すれば結果を求められる立場なのも確か。実際、様々なブックメーカーでは断然の1番人気でもある。

無敗で大阪杯を制したレイパパレの高野調教師は「牝馬は牡馬と違って種牡馬になるわけではないので、結果に臆することなく強い相手にどんどんチャレンジできます」と、さらなる高みを目指して海外遠征も示唆する。杉山晴調教師も「牝馬3冠という事実もすごいことだけど、牡馬相手のここでいいレースができれば今後はもっと大きな舞台に行ってもいいと思っています」。

初の海外遠征で結果を出してノウハウを蓄積すれば、今後の展望は世界レベルで大きく広がる。繰り返すが、デアリングタクトは暑い時季でこそのタイプ。帰国後は宝塚記念(6月27日=阪神芝内2200メートル)への参戦も十分にあるだろう。

同レースには、10・3凱旋門賞遠征プランがあるクロノジェネシス、コントレイル、大阪杯を圧勝した前出レイパパレの参戦もあるかも。現役牝馬トップ3と牡馬ナンバーワンが激突する豪華な一戦になるかもしれない。

まだ良化の余地を残している現状かもしれないが、実績は他馬を圧倒している。初の海外遠征を通過点にして、壮大な夢プランをぶち上げてほしいものだ。

【クイーンEⅡ世Cその他の出走日本馬】クイーンエリザベスⅡ世カップにはデアリングタクト以外に、海外遠征の経験があるオークス馬ラヴズオンリーユー、菊花賞馬キセキ、香港ヴァーズ勝ち馬グローリーヴェイズが参戦する。日本馬はこのレースに強く、02&03年エイシンプレストン、12年ルーラーシップ、17年ネオリアリズム、19年ウインブライトが優勝。今回のメンバーなら2年ぶり6回目の勝利はほぼ確実だ。

【チェアマンズスプリントプライズ】チェアマンズスプリントプライズで断然人気濃厚なのはダノンスマッシュ(鞍上はモレイラ)。3歳春まで物足りない競馬を続けていたが、徐々に素質が開花し、昨年暮れの香港スプリントでは強力な地元勢を撃破してGⅠ初制覇。今年始動戦の高松宮記念も接戦を制してGⅠ連勝。いよいよ本格化してきた。

安田隆調教師は「距離の融通性はないけど、すごく強くなって勝負根性はお父さんに近づいてきた」。14日の国内最終追い切りは栗東坂路で4ハロン55.7―12.1秒。余力を残しながら抜群の動きで、手綱を取った安田助手が「体を使えてすごくいい動きだった。こちらが思っている以上に馬が良くなっている」と絶賛。いよいよ完成の域に近づいてきた。父ロードカナロアは香港スプリント連覇を含むGⅠ6勝。ここでスプリントGⅠ国内外3連勝を飾って世界にダノンスマッシュの名をとどろかすようなら、偉大な父の背中もはっきりと見えてくるはずだ。

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