社説(4/20):日米宣言に「台湾」/新冷戦 緊張緩和に努力を

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 菅義偉首相とバイデン米大統領がともに就任後初となる対面での会談を行い、共同声明に台湾情勢を明記した。日米首脳が台湾に言及したのは冷戦期の1969年、当時の佐藤栄作首相とニクソン大統領の会談以来52年ぶり。72年の日中国交正常化以降では初めてのことだ。
 台湾海峡では、中国が防空識別圏に繰り返し軍用機を進入させるなど、覇権的な動きを強めている。沖縄県の尖閣諸島周辺でも中国は威圧的な振る舞いを繰り返しているだけに、米国とともに同海峡の「平和と安定の重要性」を強調したのは、当然の対応と言えるだろう。
 台湾の領有を「核心的利益」と主張する中国は即座に談話を発表し、「強烈な不満と断固とした反対」を表明した。東シナ海の緊張は中国、台湾の双方と微妙なバランスを保ちつつ、経済的な結び付きを強めてきた日本の国益を脅かしかねない段階まで高まっている。
 台湾の自由と民主主義を確固たる姿勢で擁護するのはもちろん、日本には米中両国の緊張緩和に向けても、粘り強く対話を働き掛けていく独自の努力が求められよう。
 今回の会談で、バイデン氏は「唯一の競争相手」とする中国に対し、日本を含むインド太平洋地域の民主主義勢力が結束して対峙(たいじ)していく戦略を明確に打ち出した。
 会談後の共同記者会見では日米両国を「インド太平洋地域における二つの強力な民主主義国家」と位置付け、両国の協力により「21世紀も民主主義が勝利することを証明する」と強調した。
 しかし、バイデン政権は以前から米中の競争を「民主主義対専制主義の闘い」と表現する一方、中国は「ライバルだが、対立はしない」とも明言してきた。明らかな「脅威」としてきたロシアや北朝鮮とは対照的だ。
 中国への具体的な対応も分野別に競争、協力、反対の三つを使い分けており、政治体制よりも、各地域での個々の行動や行為に批判を集中させている。これは日本が中国に対して「是々非々」の姿勢で向き合い続ける上で重要だ。
 日中関係を不信と対立の構図に陥らせないためにも、気候変動や感染症対策、経済連携などの分野では、これまで以上に積極的に共通の利益を探っていく必要がある。
 台湾有事の際、日本は米国の軍事拠点となる可能性が高い。安全保障関連法上、少なくとも日本の平和と安全が脅かされる「重要影響事態」と認定され、米軍への後方支援を求められるからだ。
 力による威嚇や現状変更の試みに対して、力で対抗しようとするのは、「非戦」の誓いを大切にしてきた戦後日本の歩みに反する愚策である。「新冷戦」の地理的最前線で求められるのは、事態をエスカレートさせないための外交努力に他ならない。