琉球王国時代の衣装を再現 「絵の具で出せない」織りなす色彩 祝嶺恭子さんが披露

 琉球王国時代の華やかな服飾文化を再び―。首里の織物の名手・祝嶺恭子さん(84)が、琉球王国末期の衣装、帯など染織物の再現に取り組んでいる。琉球・沖縄の染織物は沖縄戦で多くが失われた。祝嶺さんはドイツのベルリン国立民族学博物館に所蔵されている琉球の染織物を長年、調査・研究し、染織の技法を再現した。大胆な図柄と華やかな色彩が目を引く。20日から那覇市民ギャラリーで始まる「染織展」で再現した衣装12点を含む約90点を披露する。25日まで。

 琉球王国時代の衣装の再現作品をまとまった形で鑑賞できる機会は珍しい。祝嶺さんは県指定無形文化財「本場首里の織物」の技能保持者で、県立芸大で研究・人材育成にも取り組んできた。県内で個展を開くのは初めて。

 琉球の美術工芸品がドイツに渡ったのは琉球処分(併合・1879年)後の1884年にさかのぼる。当時、琉球の美術工芸品に造詣が深かった当時のベルリン国立民族学博物館館長が、近代化に伴う伝統文化の消滅を危ぶみ、在日のドイツ公使館を通して琉球の美術工芸品を収集し、収蔵してきた。

 祝嶺さんは90年代初めと2012年の2度、ドイツに滞在して同博物館に通い琉球王国時代の染織117点を調査した。祝嶺さんはルーペをのぞいて生地の糸の本数を数え、経糸と緯糸の組み合わせを調べ、図案に書き起こした。

 丹念な調査から発見したのは経糸と緯糸の組み合わせで生まれる独特の色彩だ。赤の経糸に青の緯糸を差すと色調によってキキョウあるいは、ブドウに近い色が表出する。「絵の具では出せない。経験をしながら色を生み出す過程が面白い」という。柄についても現代の花織は「小柄」を扱うが、王朝時代は大胆に大柄を取り入れていた。

 再現作品は「絹藍地花倉織着物~夏の珊瑚礁」「絹赤地花織衣裳思色~おもいいろ」と名付けるなど遊び心を添えている。花織や絣(かすり)などの技法を用いた優美なタペストリーも展示され、見どころの一つになっている。

 (高江洲洋子)

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