雲仙鉄道 往時伝えたい “車内放送”の動画作成中 昭和初期、10年間で廃線 西陵高(諫早)放送部

藤田教諭の話を聞きながら駅跡を撮影する生徒ら=雲仙市千々石町

 昭和初期に愛野-小浜間を結び、わずか10年ほどで廃止となった鉄道があった。長崎県諫早市多良見町の県立西陵高放送部が、車内放送の形でこの鉄道を紹介する動画を作成し、現代によみがえらせるプロジェクトに取り組んでいる。
 同路線は、1923(大正12)年、「温泉(うんぜん)軽便鉄道」として旧愛野村と千々石間に開通。その後、千々石村と肥前小浜間を結んだ「小浜地方鉄道」(後の小浜鉄道)が開業し、島原鉄道と3社で諫早と肥前小浜間の直通運転も行った。
 温泉軽便鉄道は、千々石-小浜間が難工事だった影響で、温泉街まで線路を延ばせなかったことや、バス時代の到来などにより経営難となり、「雲仙鉄道」と社名を変えたがわずか10年ほどで廃止となった。
 同プロジェクトは、同校教諭で鉄道に詳しい藤田毅教諭(50)が提案。地域の財産として、生徒たちが車内放送の形で、かつての愛野村駅から肥前小浜駅までの9駅を解説。当時の鉄道関係者の夢をかなえようと、実現に至らず幻に終わった「小浜湯街駅」も紹介する。
 生徒らは4月上旬に路線跡を現地取材。藤田教諭の話を聞きながら、プラットホームだけが残された駅舎跡などを巡り、当時の様子に思いをはせた。
 2年の戸川知紘(ちひろ)さん(16)は「短い期間の運行でも駅舎跡を示す案内板などが各駅にあり、地域の人に愛された鉄道だったと実感した。当時車内放送があったかは不明だが、この鉄道を知らない世代にも、当時の鉄道関係者の思いや臨場感が伝わるよう工夫したい」と話した。
 車内放送は計約10分間の映像付きの音声作品として、今年秋に完成予定。同校ホームページで公開する。

プラットホームだけが残された駅跡を歩く生徒ら=雲仙市小浜町

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