【タイ】医療観光の停滞で病院窮地に[医薬]

大手13社、20年は大半が減収減益

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医療水準が高く、医療観光(メディカルツーリズム)にも注力するタイで、民間大手病院の業績が悪化している。新型コロナウイルス感染症の流行により外国人の入国が制限されているほか、新型コロナの検査や感染者の受け入れにも対応していることから、一般患者が減少していることが原因。国内では新型コロナの再流行で対応に追われる病院が多く、今年も影響が続くと見込まれる。

NNAが、タイ証券取引所(SET)に上場する病院経営大手の2020年の決算データを分析した。これによると、売上高で上位の13法人中9法人が減収減益となった。

在留邦人を含む外国人も多く利用する「バンコク病院」や「サミティヴェート病院」などの運営を手掛ける民間最大手バンコク・ドゥシット・メディカル・サービシズ(BDMS)の売上高は前年比21.8%減の714億9,200万バーツ(約2,464億円)、純利益は53.5%減の72億1,400万バーツだった。

売上高全体の91%を占める病院運営事業の売上高は、18.2%減の651億6,600万バーツ。新型コロナの流行や感染防止のため入国規制に伴い、外国人向けサービスの収入が43%減少したことが響いた。中東からの患者は79%、ミャンマーからの患者は70%、オーストラリアからの患者は57%、それぞれ減少した。

タイ人患者向けのサービスの収入も8%減少した。タイ人と外国人の売上構成比は79%と21%となり、前年の70%と30%と比べて外国人の割合が下がった。また、売上高の56%を占めるバンコク首都圏の病院の売上高は21%減、それ以外の地方も13%減となり、いずれも2桁の減収となった。

医療観光で知名度が高いバムルンラード病院は、売上高が32.9%減の124億4,500万バーツ、純利益が67.9%減の12億400万バーツだった。

病院運営事業の売上高は33.1%減の123億1,500万バーツ。このうち外国人患者からの収入は48.4%減、タイ人患者からの収入は1.8%減となった。タイ人と外国人の売上構成比は48%と52%となり、前年の33%と67%と比べて外国人の割合が下がった。

一方、売上高4位のバンコク・チェーン・ホスピタルは、増収増益を確保した。20年12月半ばに国内で新型コロナの第2波が発生し、外来患者が一層減少する中、政府と連携して新型コロナの検査や隔離、感染者の治療に当たったことに加え、コスト削減を図ったことが功を奏したとしている。

■第3波で病床逼迫

タイの商業銀行大手カシコン銀行傘下の民間総合研究所カシコン・リサーチ・センターは昨年12月、入国規制が緩和され、国内で政情不安が起きなければ、医療目的でタイを訪れる外国人は徐々に回復すると予測。これに伴い、SETに上場する病院経営大手の21年の売上高は平均して前年比1~4%増、純利益は15~20%増になると予測していた。

しかし、国内では3月以降、新型コロナの第3波が拡大し、現在も新規感染者が連日1,000人を超えており、先行き不透明な状況が続いている。政府は、今年7月にも南部プーケット県などで新型コロナワクチンを接種した外国人旅行者を入国後の検疫隔離なしで受け入れる計画だが、入国規制の緩和が遅れれば、医療観光は引き続き停滞し、病院への影響も続くと見込まれる。

バンコクでは、第3波で感染者が急増したことを受けて、病床が逼迫(ひっぱく)。これまでに4カ所に仮設病床が開設されている。日本人も多く利用するサミティヴェート病院でも新型コロナ病棟が満床になっていることを受けて、21日からバンコクの4つ星ホテルを提携の「ホスピテル」とし、60室の使用を開始した。無症状や軽症の陽性者を優先して案内しており、状況に応じてホスピテルの病床数を拡大していくとしている。

日本人も多く利用するサミティヴェート病院は、バンコクの4つ星ホテルを提携の「ホスピテル」とし、新型コロナ陽性者の受け入れを開始した=22日、タイ・バンコク(NNA撮影)