Vol.10 360°オールインワン 最先端ビデオ会議カメラ Kandao Meeting Proレビュー[染瀬直人のVRカメラ最前線]

txt:染瀬直人 構成:編集部

■Kandao Meeting Pro

税込105,600円

問い合わせ先:ジュエ、三友、Acalie、シネックスジャパン

360°カメラ搭載のオールインワン会議用カメラ

昨年から続くコロナ禍により、リモートワークは国内外で広く普及し、オンライン会議をする機会も格段に増えた。そんな中、中国・深圳のKANDAOから、同社が培ってきた360°カメラのテクノロジーと特性を活かした、パソコン要らずの次世代オールインワン会議用カメラMeeting Proが登場した。

Kandao Meeting Proは、2019年9月に発売された初代Kandao Meetingの後継機にあたる。初代Meeting自体、既存のテレビ会議システムの欠点を研究し、課題を克服した製品であった。それまでは、テレビ会議システムのディスプレイに実装されたカメラであれ、パソコンのウェブカメラであれ、会議の参加者が複数いた場合には、それぞれの顔や表情がはっきりと見えにくく、誰が話しているのか分かりにくいという問題があった。初代Meetingは、

  • 会議室全体を360°の画⾓でカバー
  • 顔認識と音声認識機能で、発言者を強調表示する
  • ディープラーニングで、画面の切り替えを、自動的にスムーズに行う

といった機能を実装して、ユーザーから好評を得ていたが、パソコンとUSBケーブルで接続して使う必要があった。

2代目であるMeeting Proは、初代の機能をすべて踏襲した上で、軽量化を達成、パソコン不要で使用でき、拡張性も増すなど、大きくアップグレードした製品となっている。Meeting Proは、今年の1月頃より出荷が開始され、今年度のCES Innovation Awards 2021に選出されている。

Meeting Pro(左)と初代Meeting(右)

使用する時、レンズが浮上するポップアップ式が特徴的だった初代Meeting。Meeting Proは大幅にスリム化を実現した。

Android OS搭載で、PCと接続が不要に

Meeting Proは、アンドロイドOSを搭載したことで、パソコンに接続せずに使用することが出来る。初代と比較して、筐体が大幅にスリムになったので、出張などに持っていく際にも、携帯性が良くなった。いつでもどこでもオンライン会議を素早く開始できるのだ。Zoom、Skype、Slackなど、様々なオンライン会議システムのプラットフォームに対応しており、専用のアプリストアが用意されているので、そこから必要とするアプリをダウンロードして、システムを速やかに起動することができる。

また、アプリをカメラ内にインストールしておけば、複数のプラットフォームの切り替えがスムーズに行えるのもメリットだ。もし、アプリストアにないプラットフォームを使用する場合は、USBケーブルで接続するウェブカメラに対応するシステムであれば、基本的には利用が可能とのこと。

Meeting Proは、出張用のバッグやスーツケースに入れても、さほど嵩張らない大きさ
Meeting Proをディスプレイと接続して、表示されたMeeting Proのアプリストア。主だった会議システムのプラットフォームのアプリは、予めここに用意されている

Metting Proは、状況に応じて、映像の出力を選択できる。接続の方法は、「USB接続モード」と「Proモード」の2つだ。「USB接続モード」は、パソコンとUSB Type-Cケーブルで接続し、必要に応じてHDMIケーブルでディスプレイに繋いで、画面を表示させる方法。もう一方の「Proモード」は、Meeting Proから、直接HDMIケーブルでディスプレイに接続し、出力するというものだ。

必要に応じて、「USB接続モード」と「Proモード」の2種類から、接続方法を選択する
Meeting Proをパソコンを介さずに、HDMIケーブルで直接ディスプレイに接続した状態。リモコンも付いているが、マウスやキーボードも拡張できるので設定などがしやすい

臨場感のある映像と音声

Meeting Proは、会議室全体を前後にある魚眼レンズで捉え、同社の培ってきた画像処理技術によって、露出やホワイトバランスを自動処理、ノイズを抑え、ダイナミックレンジの広い映像を⽣成して、8K360°の映像をカメラ内でリアルタイムステッチ処理する。そこから、1080Pまたは720Pの解像度の映像を出力。出力サイズは、ディスプレイの仕様や、オンライン会議システムに応じて選択できる。映像フォーマットは、H.264とMJPEG形式をサポート。音響については、全方位マイクを8つ搭載し、半径5.5mの範囲の音声を集音する。

ちなみに、初代は4m四方までの音声認識性能であったので、利用面積は実質2倍に改善されたことになる。そして、音の方向を15°の角度まで、正確に認識出来るというビームフォーミング技術(音波を特定の方向に向けて受信する)、ノイズ除去、エコーキャンセル、音声自動拡張の技術を総合して、発言者の声を明瞭に集音する。そして、Hi-Fi(高忠実度、高再現性)のスピーカーを採用しているから、会議の相手側の声も聞き取りやすく、臨場感のある音で再生される。

4K解像度のレンズを、前後に配置した二眼光学系
8つのマイクが、全方位に向けて配置されている。音声は同時に送受信することが可能だ
発言者の音声がしっかり聞き取れないと、会議の質に影響する。Meeting Proでは、Hi-Fiのスピーカーが採用されているので、音声を明瞭に聞きとることができた
半径5.5m内の音声を認識、AIが自動追尾する

Meeting Proでは、参加者の規模や会議の目的に合わせて、

  • コミュニケーションモード
  • グローバルモード
  • 巡回モード
  • プレゼンテーションモード
  • 画面ロックモード

の5つの表示モードが選択できるようになっているので便利だ。Meeting Pro1台でも、複数のカメラで捉えたような多視点が得られるという訳だ。オートローテーション(巡回モード)では、360°映像ならではの特徴を活かして、空間(会議室)全体の雰囲気を伝えることもできる。

コミュニケーションモード。多人数会議用。上部はパノラマ表示。下部は4名の参加者を表示して、発言者が強調表示される
グローバルモード。上下に180°ずつ分割して、パノラマ表示する。全体として、360°表示となり、全員の表情を捉えるので、討論会に適している
巡回モード。画面の半分は、会議室全体を360°巡回して表示。半分は、音声認識で話者を表示する
プレゼンテーションモード。発言者を認識すると、その人物に発言者に焦点を当てて表示する。プレゼンなどに適している
画面ロックモード。専用のリモコンで、カメラの画面を表示したい部分に設定して、固定できる。ホワイトボードや、特定の人物にカメラを向けたい場合に使用する

Meeting Proでは、このように進化したAIアルゴリズムにより、顔認識と音声認識の精度が向上している。また、カメラ側でこれらの処理を行うことで、会議システムのCPU使用率も節約することができるのだ。

拡張性の高いインターフェース

Meeting Proは、5G +2.4GのWi-Fiでネットワークに接続する他、LANケーブルによる有線接続が可能になっている。また、前述したように、ディスプレイに直接出力するためのHDMIポートを備えている。

マイクロSDカードを挿入するスロットも用意されているから、ローカルで360°ビデオを記録することも可能だ。本体のボタンで、電源、音量、表示モード切り替え、マイクのミュート、録画などの操作ができる他、専用のBluetoothリモコンが付属されており、オンライン会議のプラットフォームの選択、表示モードの切り替えや録画の開始などを操作できる。このリモコンは、エアマウスにもなる。

また、USB-Aポートに、マウスやキーボードなどを接続することで、周辺機器の拡張にも対応している。

左から、LANポート(100Mイーサネット)、USB Type-C IN(給電用)ポート(内蔵バッテリーはないので、給電は必要)、ディスプレイに映像及び⾳声を送るHDMI出力ポート
左から、USB TYPE-C OUT(出力)ポート(UVCやUACビデオおよびオーディオの送信に使用される)、マウスやキーボードを接続できるUSB TYPE-Aポート
システムの内蔵ストレージは64GB。外付けとして、最大256GのマイクロSDカードを使用することができる
エアマウスにもなる付属の専用リモコン

まとめ

Meeting Proを試してみて、オンライン会議という実用的な目的のために、Kandao社の持つ360°VRカメラのノウハウが、この製品に遺憾無く投入されていることを感じた。顔認識や音声認識など、AIの高度な機能を搭載することで、360°の視野角の持つ可能性を、積極的に活かしているのだ。併せて、音響にも配慮されているから、臨場感の伝わる内容の濃いウェブ会議が実現できることだろう。

また、インターフェースにおいても、多様な拡張ポートが実装されており、初代Meetingや競合機種と比較しても、使い勝手が良くなっていることを実感する。Meeting Proは、パソコンがなくても成立するシステムと、持ち運びやすい筐体を兼ね備えた、最先端のインテリジェント360°会議カメラと言えるのではないか。さらにウェブ会議のみならず、教育や医療の分野でも活用できることと思う。

筆者のMeeting Pro検証の模様。画面コミュニケーションモードで表示中
Meeting Proには、レンズ保護カバーが付属されている

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