18日に投開票が行われた糸魚川市長選挙、同市議会議員選挙。市長選で米田徹氏が5選を果たし、市議選では新人10人、元職1人、現職7人、計18人の顔ぶれが決まりました。糸魚川支局の記者が選挙戦を振り返ります。
市長選 市政の「安定」選択
坂手 市長選は現職の米田氏が、新人の久保田郁夫氏を接戦の末に下しました。コロナ禍の中、市政の「継続」か「刷新」か、多選の是非などが争点となり、有権者は「変化」よりも「安定」を選んだ形です。
仲鉢 取材の中でも市民からは、変わるべきか、変わらざるべきか迷う声が多く聞かれました。
坂手 その結果が、票として表れました。
仲鉢 政策の対立でなく、今を見たか、未来を見たかの違いだったと思います。
坂手 米田氏は、コロナ対応を踏まえた地域医療の充実、地域経済の循環を重点に訴えました。
仲鉢 市民にとってコロナの影響は大きかったと思います。
評価と期待感互角の選挙戦
仲鉢 多選への反応は、どの世代からもありました。
坂手 多選が全て悪というわけではありませんが、長期政権におけるマンネリ化や緩みの心配、時代の転換期における新しい施策への期待があったと思います。
仲鉢 一方で、米田氏の実績経験を評価する声も聞かれました。
坂手 取材を通じて米田氏は、高齢者、中山間地域の住民の支持が厚いと感じました。久保田氏は互角の戦いだったと思います。活動期間や浸透率次第で、逆の結果があったかも知れません。
仲鉢 終盤の街宣で「もう一歩」と訴えましたが、その言葉通りでした。見えなかった「草の根」は浸透していたという結果でした。
坂手 大量票は米田氏への多選批判とともに、久保田氏の未来を見据えた政策、「ひとづくり」への期待票と受け止めました。
仲鉢 久保田氏と久保田氏を支える人の熱が、有権者にも伝わったという印象です。
坂手 米田氏は選挙戦で、5期目を集大成と位置付けました。両候補に投票した有権者の思い、願いをくみとり、コロナ対策はもちろん、人口減少対策、官民連携のまちづくりなどで、新しい米田市政を見ていきたいと思います。
市議選 市民感覚が結果に
坂手 市議選は、新人10人、元職1人、現職7人が当選。女性の新人3人が上位を占めました。
仲鉢 女性が当選してほしいという声は、市民の中には多かったです。ただ、3人とも現職を押さえトップ3に並ぶ結果は予想外でした。トップの横山人美氏は2000票超えで、これにも驚きの声が上がっています。
坂手 女性というだけでなく、3者3様の個性、明確な主張がありました。
仲鉢 子育て、教育、まちづくりに女性の新しい目線、また多様な考えが議会にほしいという、市民感覚が票に表れたと思います。
坂手 若者の台頭、当選も今回の傾向でした。
仲鉢 候補本人はもちろん、支援、支持した若者が市政への関心を持ったことは、大きいと思います。
坂手 現職の立候補者からは、コロナで演説ができない、主張が伝わらないなど、戸惑いの声がありました。
仲鉢 加えて新人の戦略が見えない、陣営の高齢化、人手不足、SNSへの対応など、現職にとっては、終始模索する選挙だったと思います。
坂手 その中で、長く市議会を支えてきた重鎮ら現職6人が、涙を飲みました。定数削減や世代交代の流れが少なからず影響したものと見られます。
仲鉢 今回は候補者多数により、政策、主張の多様性、縁故関係が重なるなどして1票しかない市民にとっても難しい選択となったようです。裏を返せば、それだけ候補者が充実したと受け止めています。
今後の議会勢力図にも注目
仲鉢 新しい議会は、新人が過半数を占めます。3地域における市議の人数、現・新のバランスも偏りがあります。
坂手 規律ある議会が保たれるのか、若干の懸念があります。
仲鉢 議会人事、会派構成が気になります。委員会構成の改編も視野に入れた新たな議会体制が必要になってくるかも知れません。
坂手 選挙取材や有権者の声を通じ、人口減による中山間地域の疲弊をあらためて感じました。市民の声なき声を市政に届け、市政をチェックする市議の役割は、大きいと思います。
仲鉢 定数削減でこれまで以上に、現職、新人関係なく議員一人一人の資質向上が市民から求められています。