長髪にモジャモジャのあごひげを蓄えた巨漢の外国人が、刷り上がったばかりの東スポを手に輪転機を興味深そうに見学している。この人物の正体がお分かりだろうか。“カナダの密林王”グレート・アントニオだ。1961年4月末、日本プロレスの招きで初来日。列島各地で大暴れしたばかりか、バスを引っ張るパフォーマンスで人々を驚かせた。
連日の大暴れぶりは本紙も報じていたが、6月1日に本社を電撃訪問。記事が気に入らず文句でも言いに来たのか!? 当時の本紙を見ると「アントニオは『新聞で私が活躍している写真を見て急に欲しくなりおじゃました』とリング上での“怪物”ぶりとは反対にしおらしいところを見せていた」とある。
社内を見学し、写真を見せてもらった後「本社から贈られた写真を大事そうに抱えて、新橋にある宿舎の第一ホテルに引き揚げた」という。リングで見せる姿とは裏腹に、いいやつだったようだ。翌2日は、東京・蔵前国技館でインターナショナルヘビー級王者・力道山に挑戦するも、流血戦の末に敗れた。16年後には同じ蔵前国技館でアントニオ猪木と対戦し、血まみれにされて敗れている。