「つみたてNISA」と「iDeCo」のどちらを選ぶべき?長期投資で一番大切なこと

「つみたてNISAとiDeCoのどちらをやった方がいいの?」と思っている方は結構多いのではないでしょうか。いきなり冒頭から結論を言ってしまい申し訳ありませんが、基本的には両方やった方が良いと思います。

ただ、「資金的に両方はちょっと……」という方もいるでしょう。両者とも同じ非課税制度ですが、中身は全く別物なので、違いを把握したうえで、自分にとって使い勝手の良い方を選ぶようにしてください。


前回記事:「つみたてNISAの基本」積立投資は本当にリスクが少ない?勧められるワケ

現金化のしやすさで比べると

両者ともおもに投資信託を運用対象とし、その収益に対する課税を非課税扱いにするという点は同じです。ただし、iDeCoは「個人型確定拠出年金」が正式名称であることからも分かるように、「年金制度」のひとつです。

個人の年金制度は公的年金制度である「国民年金」と「厚生年金」がベースとしてあり、両者とも日本国民である以上は加入を義務付けられています。これに対して確定拠出年金は、任意加入の私的年金制度であり、加入は義務付けられていませんが、公的年金のみでは不足しがちな将来の老後資金を自助努力で積み立ててもらうため、運用収益に対する税制優遇措置が認められています。

反面、iDeCoは年金制度であるがゆえに不便さもあります。つみたてNISAはいつでも全部、あるいは一部を解約でき、かつそれに対して何のペナルティも課せられませんが、iDeCoは老後の資産形成を最大の目的とした年金制度なので、よほどの事情がない限り、60歳の受取開始年齢に達するまで解約が認められません。いざという時に、すぐ現金化できる安心感という点では、つみたてNISAに軍配が上がります。

より長く運用できるのは?

当初、つみたてNISAで積み立てられる期間は2037年末まででしたが、現在は2042年末まで延長されています。したがって、2022年末までに口座を開設すれば、20年間で800万円という非課税枠をフルに活用した資産形成が可能になります。

一方、iDeCoは、60歳の受取開始年齢まで積み立てられますから、年齢次第ではつみたてNISAよりも長期で積み立てられます。

たとえば現在25歳で、勤務先に企業型確定拠出年金がない場合は月額2万3,000円まで積み立てられるので、60歳になるまでの35年間の投資元本は966万円になり、現行法制化では、つみたてNISAよりも多くの資金を運用できることになります。

でも、31歳から加入すると積立期間は29年ですから、月額2万3,000円で毎月積み立てた場合の投資元本は800万4,000円で、つみたてNISAとほぼ同額です。

こうなると、俄然つみたてNISAの魅力が際立ってきます。何しろ、つみたてNISAは換金性に優れているだけでなく、積み立てたお金を受け取る時までに発生した運用収益に対して一切課税されません。

ところがiDeCoの非課税措置は、あくまでも積立期間中に発生した運用収益に対してだけなので、積み立てたお金を受け取る時に、退職所得か雑所得のいずれかで課税される可能性があります。

したがって、現在の年齢が31歳で、何が何でも運用収益に対する課税を避けたいというのであれば、つみたてNISAを選んだ方が良いでしょう。

本当は両建てが理想

何となく、ここまではつみたてNISAの方が有利のような感じになっていますが、もちろんiDeCoにも優れた点はあります。何しろ、よほどのことが無い限り解約できない決まりになっているので、ほぼ強制的に老後資金を積み上げていくことが出来ます。

しかも、つみたてNISAは3万3,000円が毎月の非課税枠の上限になりますが、これにiDeCoを加えれば、非課税枠を活用した月々の積立額をさらに増やせます。たとえば前出のように、勤務先に企業型確定拠出年金がない場合は月額2万3,000円を、自営業者なら月額6万8,000円を、第3号被保険者なら月額2万3,000円を上乗せできます。ある程度、家計に余裕がある人は、つみたてNISAだけでなく、iDeCoなどの確定拠出年金も活用して、より多くの非課税枠を確保することをお勧めします。
また、結婚して妻や夫がいる家庭の場合であれば、それぞれにつみたてNISAやiDeCoの口座を持つことが出来ますから、一世帯という単位で見た時の非課税枠を、さらに増やすことが出来ます。

つみたてNISAで毎月3万3,000円、iDeCoで毎月2万3,000円を夫婦2人で積み立て続ければ、毎月11万2,000円も非課税枠を使って投資できます。もし20年間、このペースで積立投資を続けられれば、投資元本だけで2,688万円。もちろん運用利回りにもよりますが、ここに運用収益が乗れば、4,000万円程度の金融資産を築くことも十分に可能です。

とにかく続けること

積立投資による資産形成の要諦は、とにかく第一歩を踏み出して、あとはひたすら続けることです。

よく「もっとつみたてNISAの仕組みを勉強してから」などと言う人がいますが、この類の人は勉強をするだけで結局、何もせずに終わります。大事なことは1万円でも2万円でも、とにかく始めることです。

「つみたてNISAは年2回だけ積立金額を増額できるので、そこで帳尻を合わせて年間の積立金額を40万円ピッタリにする」とか、「つみたてNISAに合う投資信託はこれ」といったことは、いずれも些末な話です。

前回、つみたてNISAの注意点を細々と説明しましたが、正直、どうでもよいのかも知れません。とにかく世界中の株式市場に分散投資するファンドを1本選び、それをひたすら積み立て続ける。マーケットが大きく下げたとしても絶対に解約しない。これを守れば、20年後には一財産が築けるはずです。

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