政府をESG格付?

SNS(交流サイト)の普及は、伝統的な株式市場の構造を変えるだけでなく、資本主義というシステムそのものに、新しいダイナミズムをもたらしていると感じられたのが、米SNSのレディットを舞台にした1月の個別株式の乱高下でした。SNS上で団結した個人が集団で動けば、巨大機関投資家やヘッジファンドも打ち負かせることが証明されたからです。

金融市場は、資本主義というシステムそのものを支えるインフラなのですから、ここに個人の意志が直接的に反映されるということは、草の根資本主義そのものであり、最も民主的と言えるのではないでしょうか。

当社では、従前から企業に社会的責任があるように、国家にも社会的責任があり、すでに世界では、国債のESG評価が始まっていることを紹介してきました。(2013年12月号「国家の社会的責任(NSR)」参照)

これまで、国債のESG評価は、主に政府の政策レベルのチェックにとどまっていましたが、今後はより詳細な、むしろ政権そのものをESG格付けする方向に行くと見ています。そして、個人投資家が国債の売買を通して、自分の政治的信条を表明するのではないでしょうか。

例えば、現政権をESG評価の観点で見てみます。まず、環境(E)では、成長戦略の柱として「2050年までの温室効果ガスの排出実質ゼロ」と宣言し、実行計画「グリーン成長戦略」を発表したことは評価できます。日本はG7諸国の中で、長く方針と具体策の策定に欠ける状況にあったからです。しかし、30年後に向かって目標を実現する為には、課題・難問が山積していることに変わりありません。

 ① エネルギー構成(化石燃料、再生可能エネルギー、原子力発電)の指針

 ② “バッテリー・蓄電技術”の進化

 ③ “脱ガソリン車”シフトにおけるハイブリッド車(HV、PHV)の位置付け

 ④ “EV(電気自動車)”拡充の為のインフラ整備

官民協調体制を構築しながら、先端技術力を高めて、これらの開発競争に総理大臣のリーダーシップと政治的調整力を発揮していくことが期待されます。

ソーシャル(S)の評価は、納税者である国民への政策実行による貢献という観点からの評価であり、政策実行における透明性や信頼性を高めていくことが求められます。閣僚や大使、霞が関人事における日本の女性登用が、世界の中で出遅れていることは課題と言えるでしょう。

ガバナンス(G)の評価としては、「コーポレートガバナンス」(組織運営、情報開示)や「コンプライアンス遵守」からの評価が基本となります。専門家やサポートするスタッフの英知を結集して最適解を創出し、難題・難問に結果を出し、プライマリーバランスの見通しなどへの情報開示など、国民に充分な説明と安心感を供することが肝要です。

参考:http://www.goodbankers.co.jp/reports/srimonthly/2013/srimonthly_201312.pdf

                                 <了>

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                             リサーチチーム

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