元仮面女子・橋本ゆき氏がサイレント換気実験の意義を強調「目標数値がゴールではない」

サイレント換気ライブを行った仮面女子。前列左から2番目が橋本ゆき氏

電通信大学の研究チームと最強の地下アイドル「仮面女子」が25日、日本最古のライブハウス「新宿ヘッドパワー」でサイレント換気タイム実証実験を行った。

同大学のモニタリングによれば、都内のライブハウスでは換気格差が広がっていることが分かった。音楽イベントでは近隣の配慮から窓やドアが開放できないためライブハウスの換気は難しいとされている。今回はライブ後にイヤホンをつけ、スクリーンに映し出されたライブ配信(楽屋トーク)を楽しみながら換気タイムを楽しむ。「サイレント換気」は演出を阻害することなく音楽イベントを楽しめるというものだ。

仮面女子が「ファンファーレ☆」をパフォーマンスしたあと、ドア開けと送風ダクトを用いた換気を実施。マイクロ飛沫を想定、ドライアイスによってCO2濃度を極めて悪いとされる「9999ppm」まで上げて事件を行った。今回は「やや良い」とされる1000ppmまで下げるのに約15分と時間がかかった。電通大特任准教授の石垣陽氏は「初めての試み、ライブハウスの構造などもあり時間がかかったが、データをキッチリ取得しているので、これを有効活用していきたい」と換気の効率化と時間短縮に言及。「こういった取り組みをするのも初めて、メディアの力もお借りして新しいエンタメへの道筋を模索したい」とコメント。

日本音楽会場協会の阿部健太郎代表は「換気のコストについては補助金でまかなえるのかどうかも含めて検討したい。ライブハウスは10人程度の店から大規模なものまでさまざま。全国のライブハウス、他の協会も連係していき、元通りに楽しんでいただける環境を作っていきたい」と実験の効果に期待を寄せた。

阿部氏と電通大をつなぎ、今回の実証実験に関わる仮面女子元メンバーで渋谷区議の橋本ゆき氏は「文化は不要不急なものではない。現場の努力や苦労が伝わってくれればと思います」とエンタメ支援の立場を説明。今回の実験で「良好」とされる数値に達成しなかったことに「1000ppmを下回るがゴールではない。想定と何が違ったのか、どういう数値が出たのかという問いが出ることがゴールだと思っている。可視化する前は何をすればいいのか、何が不十分なのか全く分かっていない状況で運営をしていたと思う。CO2濃度を測るということで行動意識を変えていくことが、このプロジェクトの意義だと思う」と強調する。そして「今回の実験はライブハウスだけでなく、学校とか病院、公共的な施設にも応用できると思う」と力を込めた。

今回の実証実験には電通大i―パワードエネルギー・システム研究センターの横川慎二教授、ADDReC代表取締役・福島大我氏、東京大学生産技術研究所の野城智也氏も参加した。

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