台風で変わり果てた茶畑 親子で復興へ奮闘中

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台風被害から復興した茶畑で苗の生育具合を確かめる高梨孝さん(左)、晃さん親子=秦野市菩提

 2019年の台風被害で打撃を受けた秦野市の茶葉農家が復興の歩みを進めている。国の財政支援などを受けて農地を整備し直し、今年3月に新たな苗を植えるまでになった。摘み取りまでは5年ほどかかるが、物心両面で支えてくれた人たちの思いを胸に、良質な茶を送り出すことで恩返ししたいと考えている。

 19年10月の台風19号の大雨で、山間部にある約3千平方メートルの茶畑に土砂が流入、幼木が壊滅的な被害を受けたのは秦野市菩提にある高梨茶園。70年ほど前から茶葉を栽培し、「足柄茶」のブランドで知られる茶を供給してきた。

 現在は3代目にあたる高梨孝さん(63)、晃さん(33)親子が経営。徐々に園の規模を拡大してきた中で被害に見舞われた。

 「見たことのない景色。夢想だにしなかった」。あの日、土砂に覆われて無残に変わり果てた茶畑の光景を、孝さんは忘れることができない。半年後には摘み取りを予定していた幼木が根こそぎ流出していた。

 孝さんは当時を振り返り「初めてのことで頭が真っ白になった」。復興までの険しい道のりや費用負担を思い「諦めることも考えた」と明かす。地元の消防団員として前夜から出動していた晃さんも、父と同じ思いだったという。

 土砂の撤去には、消防団員や自治会のメンバーら地元の多くの人たちが協力してくれた。政府は台風被害を激甚災害に指定、復興に向けた公的な財政支援を得られることになった。「茶は秦野の特産品。産地を守るためにできる協力は惜しまない」。市の農政担当者の言葉も身に染みた。

 さまざまな支援に、親子のしおれかけた熱意がよみがえった。晃さんは「自分たちの作っている茶は市の特産品であり、かけがえのないものであると、周りの人たちが思ってくれていることがうれしかった。支援してくれた人たちのために再起しなくてはと感じた」。

 被害の翌月から始まった復旧工事には、災害に強い農地への工夫が施された。地滑りなどの対策で、のり面に「蛇籠(じゃかご)」と呼ばれる石垣を構築するなどし、20年6月に完了。今年3月中旬に地域住民も協力して苗約8千本を植えた。

 今月7日、孝さんと晃さんは市役所を訪れ、高橋昌和市長らに復興支援への感謝を伝えた。被害を免れた茶園で摘んだ緑茶やほうじ茶のティーバッグを寄贈。孝さんは「災害に強く、立派な茶畑にしてもらった。感謝の気持ちでいっぱいです」と目を潤ませた。

 晃さんは「本当の復興は茶葉が摘めたときだと思っている。これから5年程度はかかるが、支援してくれた人たちの思いを忘れず、育てていきたい」。孝さんも「手塩にかけて育て、おいしいお茶をお届けします」と誓った。