衆参3選挙全敗、政権に打撃「選挙時にいろいろありすぎ」 原発、政治とカネ…解散戦略も練り直し迫られ

 菅義偉首相(衆院神奈川2区)にとって国政選挙初陣となった衆参3選挙で、自民党は全敗した。政権には大打撃で5月総選挙は遠のき、衆院解散戦略の練り直しは必至だ。くすぶり始めた党内政局の火消しも迫られる。

 「投票日が(新型コロナ対策)緊急事態宣言の発令日。選挙なのにいろいろあり過ぎ、やり過ぎだ」。全敗が決定的となった25日深夜、自民選挙対策委員会の関係者は疲れ切った口調で語った。「いろいろ」には「原発処理水の海洋放出や高齢者医療費負担増の決定、菅原一秀元経産相の現金配布疑惑」を挙げた。

 贈収賄事件で元農相が辞職に追い込まれた衆院北海道2区の補欠選挙は擁立を見送り、早々に白旗。参院長野補選はコロナで亡くなった立憲民主党現職の羽田雄一郎氏の弔い合戦とあって勝算は低かった。

 先の総選挙で広島県内7小選挙区のうち6を自民が占めた参院広島の再選挙が与党にとって頼みの綱。河井克行・案里夫妻による公職選挙法違反事件がきっかけとはいえ、「自民の地盤は強固だし何とか逃げ切れるのでは」(同党三役経験者)との皮算用だった。

 総裁選への再出馬を目指す党広島県連会長・岸田文雄前政調会長は派閥の所属議員らに携帯電話を配布。支持者への呼び掛け度合いをコール回数でチェックする力の入れようだった。

 しかし、広島は対象地域外ながら宣言再発令が決定的となったところへ菅原元経産相の疑惑が「追い打ち」(同)をかけた。選挙戦終盤に仕掛けた期日前投票推進作戦では「外出自粛を要請している政府の姿勢と一致しないのでは」との反発が続出。「政治とカネ」問題の直撃下で、「投票へは行ったが自民に入れる気にならなかった」と皮肉にも野党を利する事態も相次いだという。

 「岸田さんのところは二つ落としたの?」 関係者によると26日朝、官邸で補選の結果を確認した菅首相はつぶやいたという。岸田氏の地盤は衆院広島1区。広島市中区など3行政区のうち東・南の両区で野党候補に負けたことを指す。「自身も横浜選出で都市部の逆風にショックだった様子。『広島を勝てば岸田氏は復権』といった次元の話はすでに吹っ飛んだ」という。

 菅、岸田両氏の窮地に他派閥は主導権確保へ虎視眈々(たんたん)だ。東京五輪・パラリンピック前の総選挙が困難となる中、総裁選前の解散可能期間もぐっと狭まる。「先送りできた課題も急いで進めた。今回の補選はその結果。総理は総裁でもあり全党員に向けた丁寧な説明が必要となる」(麻生派の閣僚経験者)との声も。総裁選は派閥主導での展開が容易だが菅首相は無派閥で立場は弱い。「総選挙は総裁選を行ってから」との党内圧力が強まりそうな気配だ。

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