非白人女性監督が初受賞! 米アカデミー賞にも押し寄せる「多様性」の波

オスカー像を手に笑顔のクロエ・ジャオ監督(ロイター)

米映画界の最高峰も〝多様性〟を意識か――。第93回アカデミー賞の発表、授賞式が25日(日本時間26日)にロサンゼルスで行われ、「ノマドランド」が作品賞、監督賞、主演女優賞の3冠に輝いた。

同作品は、キャンピングカーを我が家にし、米国内の短期職場を転々と渡り歩く現代のノマド(遊牧民)の姿を描いたロード・ムービー。

ある映画関係者は「『ノマドランド』は当初から作品賞の最右翼でした。すでに世界三大映画賞の一つ、ベネチア国際映画祭でも最高賞の金獅子賞を受賞していますが、同賞での審査委員会の評価は断トツだったそうです。今回も受賞するべくして受賞したと言っていい」と話す。

監督のクロエ・ジャオ氏はまだ39歳。中国で生まれ、米マウント・ホリヨーク大学で政治の学士号を取得した後、ニューヨーク大学で映画を学んだ異色の経歴の持ち主だ。

同監督は受賞のスピーチで「自分の善、そしてお互いの善を守るため、勇気と信念を持っているすべての人々にこの賞を捧げたい」と語った。

今回のアカデミー賞で特徴的だったのはマイノリティーが少なくなかったこと。白人以外の女性監督の受賞は史上初で、助演女優賞を受賞したのは初の韓国人。さらに助演男優賞は黒人だった。

前出の関係者が言う。

「多様性に配慮があるのは間違いない。それはここ最近の流れです。例えば2019年に韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を受賞しましたが、ポン・ジュノ監督は韓国語でスピーチしました。でも、滝田洋二郎監督が08年に『おくりびと』で外国映画賞を受賞した時は、アカデミー協会から『絶対英語でスピーチしろ』と口酸っぱく言われたらしい。当時と比べたら、肌の色や言語、文化を尊重する傾向にありますね」

来年はどんな作品が受賞するのだろうか。

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