12球団唯一“1桁本塁打”…なぜ中日で大砲育たない? 続々と中距離打者になる現実

中日・与田剛監督【写真:荒川祐史】

ビシエドの離脱、新助っ人ガーバーの合流遅れが響き…まだ8本塁打

2年連続Aクラスと10年ぶりのリーグ優勝を目指す中日は、26試合を消化した時点で5位と苦しい戦いを強いられている。その一因とも考えられるのが、極端な“本塁打欠乏症”。25日時点で、12球団唯一の1桁となる8本塁打。リーグ首位を走る阪神は3.5倍以上の29本塁打で、そのまま得点にも跳ね返っている。今季に限らず、近年直面している課題。広いバンテリンドームの影響は否めないものの、大砲候補として期待された打者たちがそろって「中距離打者」になっていった現実も見え隠れする。

8本塁打の内訳は、阿部寿樹と木下拓哉が2本ずつで、ビシエド、A・マルティネス、武田健吾、京田陽太が1本ずつ。何より不動の4番を担うビシエドが上肢のコンディション不良で4月上旬から2週間近く離脱していたことが痛かった。さらに、昨季チーム3位の9本塁打を放ったアルモンテと契約せず、代わりの長距離砲として契約した新助っ人のガーバーは今月に入ってようやく合流。“助っ人頼み”ではいられない現状が、一発不足に拍車をかけた。

本塁打が出にくく“ピッチャーズパーク”とも言われるバンテリンドーム。一発不足は、なにも今季に限ったことでもない。新型コロナウイルス感染拡大の影響で120試合制だった2020年の70本塁打も、2019年の90本塁打も、12球団最少だった。過去5年で唯一3桁に達している2017年は、のちに巨人に移籍するゲレーロが35発を放って本塁打王を獲得。やはり助っ人次第でもあった。

球団にとって、和製大砲の誕生は喫緊の課題。福田永将は2016年から4年連続で2桁本塁打を放ったが、昨季は故障もあって5本塁打どまり。今季も故障の影響で出遅れ、まだ一発は出ていない。中軸を担うキャプテン高橋周平も、2018年こそ11本塁打を放ったが、2019年からの2年間は.293と.305と打率を残した一方で、2年とも7本塁打。今季はまだ1本も出ていない。

中日・高橋周平【写真:荒川祐史】

高橋周平も平田良介も中距離打者として台頭、未来の“候補”は?

その高橋周は、高校通算71発の肩書きをひっさげ、3球団競合の末に入団した“未来の大砲候補”だった。ルーキーイヤーの2012年にはウエスタン・リーグトップタイの7本塁打も放った。ただその後はレギュラー定着に届かない日々が続き、初めて規定打席に到達したのがプロ7年目の2018年。いまや打線に欠かせない存在だが、一発で決めるというよりは、チャンスメーカーの色合いが濃くなった。

今年で33歳を迎えた平田良介も入団当初は大砲候補として期待されたひとりだったが、中距離打者として頭角を現した。シーズン自己最多は2013年の15本塁打。さらに近年は故障でシーズンを全うできないケースも。昨季は55試合出場で3本塁打。今季はここまで21試合に出場するも打率.155と苦しんでいる。

大砲は助っ人任せでいいのか、和製も育成すべきか――。将来の候補としては、高卒5年目の石垣雅海や、2年目を迎えたドラフト1位の石川昂弥らの名前があがる。石垣は2月のキャンプから期待されていたが、結果が残せずに2軍行き。ウエスタン・リーグでは25日時点で2本塁打を放っている。石川昂は故障での出遅れもあって、2軍戦ではまだ5試合出場。ともに覚醒の時を待つ段階だ。

セ・リーグの他球団を見てみると、巨人には岡本、阪神には大山や佐藤輝、広島には鈴木、DeNAには佐野、ヤクルトには村上や山田……。すぐに名前が出てくる和製大砲がいる。たとえチームの順位に直結しなかったとしても、ファンに夢を与えるアーチスト。バンテリンドームに放物線を描く日本人選手が出てくれば、また違った戦いが見せられるに違いない。(Full-Count編集部)

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