司馬遼太郎、知られざるデビュー作「週刊文春」でマンガ連載開始作画は『月と金のシャングリラ』の蔵西!

株式会社文藝春秋は、 「ペルシャの幻術師」(原作・司馬遼太郎、 マンガ・蔵西)を「週刊文春」にて連載開始。

司馬遼太郎のデビュー作にして知られざる名作「ペルシャの幻術師」は、 昭和31年に第8回講談倶楽部賞を受賞、 海音寺潮五郎に「幻覚の美しさに惚れこんだ」と絶賛された作品。チベットの僧院を描いた物語『月と金のシャングリラ』で、 文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品に選出された漫画家・蔵西が美麗なタッチで描く、 幻想と愛と滅びの物語。 「週刊文春」5月6・13日合併号(2021年4月28日(水)発売予定)で連載を開始。

司馬遼太郎「ペルシャの幻術師」より

十三世紀、 世界を席巻したモンゴル軍の猛攻は、 ペルシャにまで至った。 モンゴル軍団を率いる大鷹汗(シンホルハガン)ボルトルは、 ペルシャ高原の町メナムに攻めいる。 ボルトルはメナムで美姫・ナンを見初め、 自らへの愛を求める。 そこに、 ボルトルの命を狙う幻術師・アッサムが現れ、 ナンを幻惑する――。 西紀一二五三年の夏、 ペルシャ高原のひがし、 プシュト山脈をのぞむ高原の町メナムは、 ここ二カ月、 一滴の雨にもめぐまれなかった。 ――

新月のまだ懸らぬ六月二十八日の夜、 いまから一月前のことである。 アラ山脈を越えて突風のようにやってきた蒙古兵が、 メナムの町を一夜のうちに鮮血の霧で包んだ。

町の土侯とその兵は戦わずして遁げ、 市民は、 血に飢えた東方の蛮族の手で思うさま殺戮された。 シナ北西部はおろか、 遠く東ヨーロッパまで征服した成吉思汗(ジンギスカン)四世蒙哥(マング)が、 その弟旭烈兀(フラーグ)に二十万の兵を授けて、 史上有名なペルシャ攻略の緒にようやくつきはじめたのである。 そうした殺伐な背景のなかに、 この数日来、 メナムの町は奇妙な賑いをみせていた。 沙漠をゆく隊商(キャラバン)が、 水を買いにきて市を立てる。 ――

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