常識に捉われない練習方法 履正社女子野球部が他競技との交流を続ける理由

履正社高校剣道部(前列)との集合写真に納まる女子野球部(後列)【写真提供:履正社高校】

剣道の打突を、野球のインパクトへ応用 強豪剣道部の指導を受ける

3月に行われた「第22回全国高等学校女子硬式野球選抜大会」で準優勝を果たした履正社が他競技との交流で更なるレベルアップを目指している。同校の剣道部へ“出稽古”を行った橘田恵監督は「期待していた以上に学びがあった」と振り返った。

履正社剣道部は、1月に開催された第67回大阪高等学校剣道新人大会の団体戦において男子・女子ともに優勝。3月の全国大会へも出場した府内屈指の強豪チームだ。女子野球部を率いる橘田監督は、剣道の打突の瞬間の手首や腕の感覚を、野球のバットとボールが当たるインパクトの感覚へ生かせるのではないかと考え“出稽古”を申し出た。

剣道未経験の部員たちは、基礎である摺り足や正面素振りなどを習ったあと、防具を着けた剣道部員へ打ち込む練習も行った。

「いろいろな競技から学ぶことで、選手たちの知見や視野が広がると思うんです。日常生活の中でも野球に生かせそうなものっていっぱい転がっています」

選手たちへ非日常的な機会を与えるが、そこには正確な答えはない。剣道から何を学び野球に生かすかは、選手1人1人の閃きと吸収力に委ねられている。選手個々が今まで見せたことのないルーティンを行う姿に指揮官は「やってよかった」と感じている。

海外に多いシーズン制度による多競技掛け持ち 他競技から得られる相乗効果

今回の合同練習では“道”の精神も学んだ。

「“例に始まり礼に終わる”の意味を理解し、試合前後の一礼を改めて大切にするキッカケにもなりました」

日本では試合の始めと終わりに、両チームが向き合って一礼をする光景は一般的。対戦相手や審判など試合に携わる全ての人に対する感謝と敬意を表す意を込めて行われている。海外では一礼は行わないことがほとんどだ。剣道の稽古を通して精神面も成長することができた。

橘田監督は前任校の履正社医療スポーツ専門学校でも、女子野球部員へバスケットボール部やサッカー部との交流の場を設けている。大学卒業後に在籍したオーストラリアのスプリングバル・ライオンズでの経験も影響している。海外ではシーズンオフに他の競技に取り組む選手が多く、現地で様々な競技を見てきたことも大きい。

「(マイナー競技という意味で)私たちは元々変わったことをしているんだから、練習方法も変わったことをしたいなと。今度はバレーボールへお邪魔したいですね。飛び込む練習をさせてもらいたいです」。

常識に縛られない練習法を取り入れ、履正社女子野球部ならではの“野球道”を極めている。(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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