「今でも上手くなりたい」 古田敦也がYouTubeで届けたい野球の真髄と描く夢

元ヤクルトで野球解説者の古田敦也さん【写真提供:テレビ朝日】

約10年前の地上波番組と同タイトルで5月1日からスタート

元ヤクルトで野球解説者の古田敦也さんがYouTubeチャンネル「フルタの方程式」(5月1日スタート)を開設する。現役時代、4度の日本一に輝き、9度のベストナインに首位打者も獲得。引退後は選手兼任監督も務めるなど、球界を代表する捕手だった古田さんが打撃に守備などを豪華ゲストと「思う存分」語っていく、何とも贅沢なコンテンツ。野球界への還元、育成世代へのヒントを送りたいという思いが体を突き動かしていた。【楢崎豊】

収録が行われたテレビ朝日のスタジオには、古田さんの驚きや笑い声が響いていた。隣に並ぶゲストは名球会に入るほど実績のある選手ばかり。ハイレベルな野球技術に感嘆し合い、今では笑い話になる仰天エピソードが紹介される。野球ファンにはたまらない空間がそこに広がっていた。

「フルタの方程式」――。このタイトルを聞いて、思い出した人もいるだろう。2009年1月から2010年7月までテレビ朝日系の地上波で放送されていた番組と同タイトル。“野球通”に向け、古田さんが技術の真髄に迫った人気番組だった。このたび、YouTubeで復活することになった。

「プロは細かいこだわりを持っていたり、こだわっていたからプロになれた可能性もあると思うんです。(動画が)技術的なもの、考え方も含めて、野球がうまくなりたい人へのヒントになれれば。今の時代、YouTubeで思う存分語って、若い人たちへの助けになればと思っています」

当時、古田さんは番組内でボールの打ち方から、捕球の仕方、走塁、盗塁、考え方まで“マニアック”に届けていた。当時の球界だけでなく、他局のスタッフからも評価の高い声が聞こえてきた。

今回、主戦場をYouTubeに移す。制作にあたり、古田さんの思いを共有し、絆の深い当時の番組スタッフが集結。テレビ番組さながらのカメラの台数やスタッフの数、大掛かりなセットとなっている。作り手の気合、野球ファンへの思いが伝わってくる。

「専門チャンネルとして、簡単にアクセスできるという点で非常に(YouTubeが)いいのではないかと。スタジオでもボールやバットを使っていきます。それだけちゃんと(作って)見てもらって、いろんな人に刺激になればいいと思います」

野球を思う存分に伝えたいという思いと、技術の伝承。コンテンツはこの2つの軸で展開されていく。チャンネルは小学生から草野球をする人まで楽しんでもらいたい。また、自身と同じ50代や上の世代でも、まだ野球が上手になりたいと思う人にも届けたいと考えている。

「僕も今でも『ちょっとでも、上手くなりたい』と思っています。(収録で共演した元広島の)前田智徳くんの話を聞いていて『ああ、自分もこうしたら、もっと打てていたんじゃないかな?』と考えたりしました」

「フルタの方程式」撮影場面(左から古田敦也さん、長嶋一茂さん、前田智徳さん、和田一浩さん)【写真提供:テレビ朝日】

古田さんのチャンネルの『その先』にあるものは?

収録中、「子どもたち」というワードが何度も出てきた。プロの高いレベルの技術やフォームを子どもがマネをしていいものと、してはいけないものの判断を古田さんがしているシーンがあった。映像が手軽に見られる時代だからこそ、育成世代にはきちんとした知識を持ってもらいたい。

「子どもたちにはあまり技術的に細かいことは言うつもりはありません。なぜかというと、あまり技術ばかりに走ると小手先のことばかりになって、うまくならない。体が大きくなって、力が強くなってきて、克服できる技術が結構、野球にはあります」

中学生になり、本気で上の世界を目指す頃になれば、技術的に教えることは増える。高校生にはプロと同等のことを教えても、吸収することができる。古田さんが発信して行く“方程式”は、その選手のレベルに落とし込んで、“解”を導くヒントも隠されている。

「野球教室などで教えることがあるのですが、レベルに合わせた教え方をしていきます。誰しも野球を辞めなくてはいけない時が来る。その時に『古田がこう言っていたな』と、トライをして、コツを掴む瞬間があるかもしれません。情報がいっぱいあっても困るかもしれないですが、やっぱり選択肢が一つしかないより、たくさんあって『これをやってみよう』と練習する方が前向きに捉えられることができるし、ヒントがチャンスになるのではないかと思っています」

毎回1~2時間、スタッフと綿密な打ち合わせをして収録に臨んでいる。古田さんだから聞ける打撃や守備に、リードの奥義や現役時代のエピソード……話題に事欠かない。長嶋茂雄監督が率いた巨人と野村克也監督が率いたヤクルトが凌ぎを削っていた90年代、どのように松井秀喜氏や高橋由伸氏ら強打者と対峙していたのか――。筆者が深く聞いてみたいと個人的な思いを古田さんにぶつけると……

「(巨人には)よく打たれましたよ……。由伸にも話を聞きたいですね。じゃあ、夢はニューヨークまで行って、松井さんに会いにいくとか!?(笑)」

今後は状況が許せば、ロケにも出て行く予定だ。いつかまた「地上波で放送できるようになればいいですね」――。古田さんが目指す先に、夢は無限に広がっている。

【動画】古田VS谷繁が配球バトル? 復活する「フルタの方程式」予告編

【動画】古田VS谷繁が配球バトル? 復活する「フルタの方程式」予告編 signature

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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