諫干請求異議訴訟 開門派「異論なし」国側「回答控える」 和解協議 進展は不透明

会見で福岡高裁が示した和解協議を評価する開門派弁護団の馬奈木団長(右から2人目)ら=福岡市内

 国営諫早湾干拓事業を巡る請求異議訴訟差し戻し審で、福岡高裁が28日に示した和解協議。国に対して積極的な関与を求める内容に、開門を求める漁業者側は「異論はない」と歓迎した。一方、国側は開門せずに有明海再生に向けた基金による解決が「ベスト」だとし、それに沿って出口を探っていく考えを重ねて強調。協議が進むかは不透明で、漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は「まだ手放しで喜ぶわけにはいかない」と表情を引き締めた。
 同日、第6回口頭弁論終了後に福岡市であった漁業者側の報告集会。福岡高裁が3ページの書面で示した「和解協議に関する考え方」が読み上げられると、参加者から拍手が起こった。潮受け堤防閉め切りから来年4月で25年。高裁は出口の見えない紛争の抜本的な解決には話し合いしか方法はないとし、「国のこれまで以上の尽力が不可欠」と断言した。馬奈木弁護団長は「極めて説得力のある内容だ。異論はない」と述べた。
 参加した漁業者からも歓迎の声が上がった。開門確定判決の原告、篠塚光信さん(62)=島原市=は「裁判所がやっと本気になった」と評価。松本正明さん(69)=同=は「判決が出ても片方の不満が募るだけで解決にならない。漁業者と農業者が譲り合い、互いが安定した生活ができる方向付けの協議を」と注文した。
 一方、同市内で会見した農水省農地資源課の北林英一郎課長は進行協議の中身について「(高裁側から)書面が配布されたか否かも含め明らかにできない」とし、今後の対応についても「回答を控えさせていただく」と述べるにとどめた。
 「開門しないとの前提を外した協議(のテーブル)には着けないという理解でいいのか」との質問には、「係争の具体的な対応に及んでいくので答えは差し控える」とした。

会見で、開門せずに基金で解決を図るとした国の従来の考えを改めて示す農水省の北林課長(左)=福岡市内

© 株式会社長崎新聞社