東京台湾飯|台南のおばあちゃんの味を受け継ぐ、駒込「かのか」の排骨肉と魯肉飯

東京で楽しむ台湾グルメ「東京台湾飯」。今回は駒込にある「台湾キッチンかのか」です。なんだかちょっと泣けてくるおいしさの「排骨肉(パイコーロー)」と「魯肉飯(ルーローハン)」をランチでいただきました。そして台南出身のオーナー店長さんに、味の秘密も教えてもらいました。

台湾のソウルフード!排骨肉と魯肉飯

排骨肉は下味をつけた豚肉に衣をつけてカラッと揚げた、いわば台湾風とんかつ。揚げてからたれをつけるしっとりタイプもあります。下味はしっかりとつけてあるので、ソースはいりません。そうそう、お弁当のおかずの定番でもあって台湾鐡道の駅弁でも人気です。そして魯肉飯は、細かく切った豚肉を中華のスパイスと一緒にしょうゆベースのたれでじっくり煮込んで、ご飯にかけて食べるあれです。最近はコンビニなどでもレトルトのものが売られていたりして、身近になりました。

台湾キッチンかのかのランチメニューは、Aが魯肉飯でBが排骨肉、そしてCが週替わり。いつでも人気のAとBをいただき、特に排骨肉について、そのおいしさをうかがいます。

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JR駒込駅東口を出てすぐ、2分です

「台湾キッチンかのか」があるのは、JR山手線や南北線が便利な駒込。JR駒込駅の東口から、下町情緒が感じられる街並みに出て商店街を歩くと2分ほどですぐに到着です。「Taiwan Kitchen Kanoka」と壁にサインがあって、青いドアと窓枠が印象的な外観です。

足立区で「華の香」という名前で16年間続けたお店が「台湾キッチンかのか」として駒込に引っ越してきたのは4年前のこと。もとは喫茶店だったということで、カウンターなどはそのままですが、台湾を思わせる縁起物が飾られていて雰囲気はすっかり台湾です。窓から入る光も風も爽やかで、通りをゆく人たちの気配も感じられつつも、なんだか落ち着きます。

排骨肉の定食をいただきます!

こちらがランチBの排骨肉の定食です。ランチはどれも、主菜に小鉢とスープ、お漬物、それにコーヒーか紅茶のドリンクが1杯セルフサービスで1,000円(税込)です。この全体の様子は、明らかに日本人におなじみの定食スタイルで安定感があります。

排骨肉のアップですが、なかなかいい色でしょう。豚肩肉をあらかじめシナモン、生姜、三温糖、五香粉、八角、紹興酒、そして台湾の金襴ブランドのしょうゆに漬けこむそうです。衣は「地瓜粉」、タピオカのでんぷんの粉です。スターチですからジャガイモから作るかたくり粉と同じ系統です。サクッと揚がります。

下味しっかりのカラッと揚がった排骨肉は、ご飯がすすみます。とんかつのようにソースをつけないから、あくまでもさっくりとした衣の食感もうれしいんです。豚肩肉は、脂が全体にうっすらと入っててしつこくなく、豚肉のおいしさがよくわかります。思わずにんまり笑ってしまうおいしさでした。

これが使っている台湾のしょうゆです。優しいお母さんといった趣の、オーナー店長である劉謙誠(リュウ チェンザン)さんが出してきて見せてくれました。「おいしいお醤油を使っていますよ。紹興酒もいい紹興酒です。昔からお付き合いのある方から仕入れている中国の18年物です。お金を稼ぐというよりは、来てくれるお客さんが楽しめて、健康になってくれるようにね」と、こだわりの理由を教えてくれました。

小鉢はさつま揚げにキャベツの煮ものですが、これがまた優しい味なんです。台湾料理ではかつお出汁を使わずに小エビを使って旨味をプラスすることが多いそうで、この小鉢もフワッと海老の香りがいいんです。

スープは鶏手羽とダイコンで、すっきりとした味わいです。素材のおいしさがよく伝わる味付けで、同時に鶏の滋味も感じます。

魯肉飯に使うのは、おばあちゃんの秘密の調味料

魯肉飯の定食がこちら。店に伺った日は別の日だったので、週替わりの小鉢も違います。この週は豆腐干絲(トウフーカンスー)という、水けを切った豆腐を細く切った和え物でした。締まった豆腐は歯ごたえも楽しくておいしいです。

魯肉飯を頬張ってみると、中華系のスパイスがほどよくお醤油とマッチして、ほろほろとほどけるような豚肉が柔らかすぎず、ちょうどいい柔らかさ。そして煮汁が浸みたご飯が、その全ての味を受け止めています。幸せってこれかも!と口の中が密かに興奮してしまいました。

おいしさの秘密は、おばあちゃんの代から使ってきたという台湾の西の海に浮かぶ彭湖島の魚介のペーストだそうです。そういえば魯肉飯と言えば必ずと言っていいほど使う五香粉も使っていないとのこと。

台湾の北部と南部では味が違うんです

台湾の南部に位置する台南が劉さんの出身地です。おばあちゃんは台南の郊外で、働く人たちのための食堂を営んでいました。「夏休みになると、おばあちゃんのお店を手伝いました。魯肉飯と角煮を地元の人たちに出していて、おいしいものを食べてみんなが喜んでくれて、おなかが空いていたのに食べたら元気になって・・・」というのが、ご飯を食べさせることの喜び体験のはじまりだったようです。

そのおばあちゃんのレシピの秘密が「彭湖島の魚介のペースト」だったそう。秘密とはいえ、台南から始まった調理体験があってこそ作れるということで、なるほど一朝一夕に真似することはできないということなんですね。

台湾南部は北部と比べて、しっかりとした味付けだそうです。北部よりも貧しい時期があったので、濃い味付けでご飯をしっかり食べるようにしていたのだとか。優しい味付けながらも、しっかり食べたなと満足感があるのはそのせいかもしれません。

ママに話しに来てくれるお客さんたち

劉さんと副店長の馬さんを、お店の前でパチリ。なんだかとっても仲がよさそうなんですよ。

劉さんは、台湾から日本に来て住んでいる若い人にも慕われています。「ママ」と呼ばれて、特に女の子がよく話に来てくれるそうです。時には泣かれちゃうこともあるとか。劉さんのやさしい料理と人柄にほろっときちゃんだろうなぁ。帰る頃にはなんだかほんわかとした気分になっていました。

台湾キッチンかのか

住所:東京都北区中里1-4-4横川ビルディング

電話:03-5809-0513

営業時間:火〜土11:30~14:00、17:00~22:00、日11:30~14:00

定休日:月曜日

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[All photos by Atsushi Ishiguro]

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