諫干開門巡り 福岡高裁「和解解決を」 国に積極関与求める 

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門確定判決を巡り、開門を強制しないよう国が漁業者に求めた請求異議訴訟の差し戻し審で、福岡高裁(岩木宰裁判長)は28日、「話し合いによる解決のほかに方法はない」として、和解協議の場を設けることを明らかにした。その上で、国に和解協議での主体的、積極的な関与を強く求めた。開門派弁護団が明らかにした。
 話し合いによる解決を求めていた開門派弁護団は「高裁がここまで踏み込んでくれたことに感謝している」と評価。ただ、国は、開門せずに有明海再生に向けた基金で解決を図ることが「ベスト」との姿勢を崩していない。双方の主張の隔たりから、差し戻し前の請求異議訴訟では和解協議が決裂した経緯があり、今回も実際に協議が始まるかや、話し合いで着地点を見いだすことができるかは不透明だ。
 開門派弁護団によると、口頭弁論後の進行協議で、高裁側が文書で考え方を示した。それによると、同事業を巡る一連の問題が複雑・深刻化した事態を踏まえ、「統一的、総合的かつ抜本的に解決するためには、話し合いによる解決のほかに方法はない」と強調。開門派と国の双方が包み隠さずに協議、調整、譲歩することが必要だとした。その上で、「合理的な期間内に集中的に協議を重ねる」よう求めた。和解協議に当たり、具体的な前提や条件は示されなかったという。
 次回は6月2日に進行協議が予定されており、国がそれまでにどう対応するかが注目される。
 農地確保と低地の高潮対策などを目的とした同事業では1997年4月、湾奥部が全長約7キロの潮受け堤防で閉め切られた(事業は2008年に完工)。有明海沿岸での養殖ノリの色落ちを受け、漁業者の大規模な抗議行動に発展。請求異議訴訟差し戻し審など5件が今も司法の場で争われている。10年の開門確定判決後、近年は「非開門」の司法判断が続いている。


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