「起訴自体難しい」「問題のある逮捕」“紀州のドン・ファン”事件 専門家から疑問の声“続出”

野崎さん(右)と須藤容疑者

“紀州のドン・ファン”と呼ばれた資産家・野崎幸助さん(当時77歳)が不審死した事件で、和歌山県警は元妻の須藤早貴容疑者が何らかの手段で覚醒剤を飲ませて殺害したとみている。しかし、専門家からは立証の難しさについて指摘する声が続出している。

29日放送の朝日放送「キャスト」に出演した弁護士・三輪記子氏は「状況証拠も非常に乏しいと思いますし“これから明らかにしていく”という状況だとすると、起訴自体が難しいんじゃないのか。報道ベースでは論理に飛躍がありすぎると感じます」とコメント。さらに「もし起訴するために被疑者の自白を得ようとして逮捕しているのだったら、非常に問題のある逮捕なんじゃないかなとすら感じています」と指摘した。

また県警はスマホの位置情報などから、須藤容疑者と覚醒剤の密売人が同県田辺市で接触したとみている。しかし、共演のジャーナリスト・大谷昭宏氏は「確かにSNSで接触したのかもしれないけども、田辺という狭い街でわざわざ覚醒剤の密売人と接触する必要があるのか? 彼女は東京と行ったり来たりでしたよね。歌舞伎町でも何でも(大きな街は)ある。そうしたら警察だって売人を探し出すなんて大変なことですよ。となると、本当にSNSで探して、当時21~22歳のご本人が売人と接触したのか?という話になる」と疑問視。「よしんば売人を抑えて、覚醒剤のブツを抑えたとする。そしてブツと野崎さんの体内から出てきた覚醒剤の不純物が一緒かどうかを調べる。だとすれば、変な話『私たち夫婦生活の中で覚醒剤を使ってました』と言い逃れられたらどうしようもない。果たしてこれで本当に立件する気だったのか? もしくはとんでもない隠し玉として何かあるのか?」と首をひねった。

また、元財務官僚で弁護士の山口真由氏も、28日に出演した毎日放送「よんチャンTV」で「今回難しいのは、たとえ覚醒剤を殺すつもりで入手したとしても、誤って飲んでしまったという可能性をどう排除するのか。弁護士は合理的な疑いを差し挟む“アナザーストーリー”さえ提示できれば有罪にならない。それを全部排除するのはこの裁判、かなり難しい印象」と推察。

また共演の元NHK記者でジャーナリストの立岩陽一郎氏は「こういう分かりやすい構図はいったん白紙に戻さないといけない」と前置きし「ひとつ考えられるのは、これ裁判員裁判制度の対象になるはずなんです。そうすると、こう言うと彼らは反発するかも分からないけど、警察と検察はひょっとしたら緻密な捜査をするよりは、ある種の状況証拠を固めれば有罪に持って行けるという判断をしている可能性もある。我々はそこは冷静に見ないといけない」と警鐘を鳴らした。

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