同性婚問題の裏で…複層的な問題をテレビはどう報道すべきか

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」。3月31日(水)放送の「オピニオンCROSS neo」では、信州大学特任准教授の山口真由さんが、複層的な問題の報道の在り方について述べました。

◆ジェンダー問題などはどう報道すべきか

国が同性婚を認めていないのは違憲とし、北海道に住む同性カップル3組が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁は法の下の平等を定めた憲法14条に違反し、違憲との初判断を示しました。

山口さんによると、結婚は"ステータス”か"コントラクト”かという議論が長らくあり、ステータス(身分)とは個人の努力では変えられない属性で、例えば「家」。そこに帰属することで身の証を立てる結婚は「重たい」という声がある一方で、結婚は個人の意思によるコントラクト(契約)であり「軽い」という「2つの立場がある」と説明。

そんななか、アメリカの"リベラル・フェミニスト”と言われる人々は、神の領域にあった結婚を世俗に、つまりコントラクトに引き下ろすことを命題としてきましたが、2015年6月にある事件が。それは「オバーゲフェル判決」という有名な判決で、アメリカ全土で同性間の結婚を認めるというもの。

このとき、誰もが喝采したかと言えばそうではなく、むしろリベラル・フェミニストは激怒。なぜなら、頑張って結婚をコントラクトにしたのに再びステータスへと戻したからで、「つまり、問題というのは非常に複層的、いろいろな側面がある」と山口さん。例えば同性婚にしても「認めたい方々の熱い気持ちはわかるが、結婚から逃れたい人たちには1つの圧力になる可能性がある」と指摘します。

◆薄氷を踏むような思いでコメントする時代に…

以前、山口さんはこのことをツイートしたところ「同性婚を批判するのか」と批判を浴びたそう。その要因の1つに140文字というTwitter の制約があり、それはテレビ番組でも同じで、今はコメント時間として与えられるのはせいぜい30秒~1分程度。その尺で全てを伝えることは難しいのが現状です。

しかし、この「オピニオンCROSS neo」では7分もの持ち時間を使えることから、山口さんは「これはテレビの在り方や可能性における1つの実験。専門家がじっくりと複雑な問題を話すことができる」と有意義に感じている様子。

現在、数多くのテレビ番組に出演している山口さんですが、常に薄氷を踏むような思いでコメントしていると胸中を吐露。視聴者が敵なのか味方なのか全くわからない、もはや分断されたなか、「この番組は複雑なことを複雑なまま報じさせてくれた」と述べます。

MCの堀潤はこうした報道の変化の原因を案じると、山口さんは「AI時代の分断というのはある」と意見。誰もがパーソナルな空間で生きるようになり、「本来であれば、公共性を重視すべきテレビや新聞も、ネットに引っ張られてそれを放棄する時代になってしまった」と危惧します。

「SmartNews」コミュニケーションディレクターの松浦シゲキさんは、山口さんの意見に対し「時間が大事」と言います。ネットの時代、コンテンツも瞬間的に消化されてしまう側面があるため、「時間をかけて消化する話、多面性を持って時間を消費する話というところが、まさに今問われている」と主張。

一方、スローニュース代表取締役の瀬尾傑さんは「わかりやすいニュースや意見は気をつけたほうがいい」と明言。なぜなら世の中は多様化、複雑化し、「一刀両断してくれたらスカッとするけど、それは"危険だ”という意識を受け止める側も持ったほうがいい」と注意を促していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00(※番組終了)
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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