TBSドラマの天下続くも、フジテレビが巻き返し? 新たな指標も交えて、1月ドラマを徹底分析!

左から「TVガイド 2021年1/22号」「TVガイド 2021年1/15号」「月刊TVガイド 2021年4月号」

今回は、TVガイドwebで毎週発表している「録画視聴ランキング」(関東約65万台超のレグザの視聴データを基に集計)の数値で、2021年1月クールのドラマを振り返っていこう。このコラムではおなじみの恒例企画だが、今回は新たな指標も取り入れて各ドラマをより深く掘り下げてみたい。世帯視聴率だけでは分からない視聴者たちのドラマの見方に迫っていこう。

まずは、1月クールの地上波連続ドラマの「放送回ランキング ベスト30」がこちら(ポイントは1位を100とした場合の割合)。

今回のクールもTBSが強い。「天国と地獄~サイコな2人~」「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」がズラリと上位を占めている。トップの放送回は「天国と地獄」の最終回。大きな謎解きは前週の第9話で終わらせていたのでどんな展開になるのかと思ったが、いわゆるどんでん返しとは違う意味で手に汗握るサスペンスフルな見事な最終回であった。世帯視聴率も高かったが、録画視聴でも最高ポイントを記録した。一方の「オー!マイ・ボス!~」は、全話安定して支持されている印象。TBS火曜10時枠の固定視聴層の上白石萌音に対する信頼度の高さが感じられる。この2作品を除いた最高位は、16位「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼」(日本テレビ)の初回、次が19位の「俺の家の話」(TBS)最終回である。

2018年エランドール賞より高橋一生>

続いて「平均録画視聴ランキング ベスト20」。各ドラマの録画視聴ポイントの全話平均値を高い順に並べたランキングである。

TBSドラマがベスト3を占めたが、2位と3位の間には大きなポイント差がある。むしろ3位「俺の家の話」、4位「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼」、5位「知ってるワイフ」が僅差で争っているという感じだ。6位以下にも「監察医 朝顔」 「レッドアイズ 監視捜査班」 「君と世界が終わる日に」 「青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―」とフジテレビ、日本テレビ勢が続き、世帯視聴率で比較的好調だったテレビ朝日ドラマが下位に沈む結果となった。

今度は「最終回継続率ランキング ベスト20」を見てみる。「最終回継続率」とは、最終回のポイントを初回ポイントで割った数値。最終回継続率が高い(=初回に比べて最終回のポイントが高い)ということは、作品の対する満足度が高い傾向があるのでは、という仮説に基づいた検証である。

継続率が100%以上だった(初回より最終回が高かった)ドラマは全部で14本。数は多い方だといえるので、全体として満足度の高いドラマが多かったようだ。そしてトップは意外や意外。最終回が好調だった「天国と地獄~サイコな2人~」を抑えて、大倉忠義&広瀬アリス共演、橋部敦子脚本のフジテレビ木曜10時「知ってるワイフ」が、2位以下に大差をつけてのぶっちぎりの第1位となった。韓流ドラマの日本版リメークで、エッジの効いたストーリーながら飽きさせない展開で楽しめたが、何といっても最終回の後味の良さが印象に残る。近年配信に誘導する手法が多くなったこともあり、わざとモヤッとする要素を残して終わるドラマが増える傾向にある中、あざやかなハッピーエンドでファンの期待に応えたことに、素直に拍手を送りたい。

そしてもう一つ注目したいのが、トップの「知ってるワイフ」はじめ、3位の「青のSP~」、4位の「リカ~リバース~」、7位「監察医 朝顔」と、フジテレビのドラマが上位にズラリと並んでいる点だ。継続率が高い=初回の期待値が低い、という傾向は確かにある。しかし同時に内容が支持されていなければ、継続率が高くなるということは絶対にない。まだまだ散発的な動きでしかないが、フジテレビドラマが新たな復活を遂げる芽がここにあるのかもしれない。今後の動きに期待したい。

さて、ここでレグザの新たな指標を使ってさらにドラマを深掘りしていこう。

「平均録画視聴ランキング」でベスト5に入った「天国と地獄~」「オー!マイ・ボス!~」「俺の家の話」「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」「知ってるワイフ」の5作品をピックアップして、それぞれの特徴的な視聴パターンを探る。

【視聴パターン分析内用語について】

■1話切り回避率:1話目を視聴した機器のうち、2話目以降を1度でも見た機器の割合
■3話切り回避率:1~3話目までの中で4話以降を1度でも見た機器の割合
■3話時点残留率:1話目を基準とし、3話目でどの程度残留しているかの割合(3話目÷1話目)
■最終回上昇率:最終話の2話前の回を基準とし、最終話でどの程度増減しているかの増減率(最終話÷最終話の2話前)
■予約消化率:予約した機器のうち、実際にライブまたは再生で視聴した機器の割合

※円グラフにある「16作品の平均」とは、今クールのプライムタイムに放送された民放の連続ドラマ16作品*の指標平均である。偏差値とはその16番組の中で、この番組がどのくらいの位置にいるかを示している(なおここでの「視聴」とは、ライブ視聴または録画視聴でその回の3分の1以上を視聴したことを指す)。

【*16作品】
監察医 朝顔/アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~/ 青のSP-学校内警察・嶋田隆平-/相棒 season19/遺留捜査/オー!マイ・ボス!恋は別冊で/ウチの娘は、彼氏が出来ない!!/にじいろカルテ/知ってるワイフ/警視庁強行犯係 樋口顕/ドリームチーム/俺の家の話/24 JAPAN/レッドアイズ 監視捜査班/天国と地獄~サイコな2人~/君と世界が終わる日に

「天国と地獄~」で最も顕著なのは、下の円グラフの「7割以上視聴」の多さだろう。16作品の平均が28.11%で、どのドラマも「7割以上見ているコアな視聴」が「一度でも見たことのある視聴」の4分の1ほどを占めるということになるが、「天国と地獄~」はそんなコアな視聴層が40%近くいる。それは逆にいえば視聴習慣がついているということなので、作品自体の力もさることながら「日曜劇場」という時間枠の力も大きいだろう。「1話切り回避率」、「3話切り回避率」とも高い水準で、3話時点で一度離れても番組後半で戻っていた視聴層が多かったことを示している。最終話上昇率(最終話の2話前と比べた増加率)の偏差値65.60を見ても、最終回の注目度の高さがうかがえる。時間枠の安定感に、作品の魅力が加わった理想的な横綱相撲だった。

こちらは「1話切り回避率」「3話切り回避率」とも極めて高い偏差値を示しており、「天国と地獄~」以上に時間枠に対する支持が大きく、またそうした支持者の期待に応えるドラマだったことがうかがえる。「7割以上視聴」もやはり40%近くを占め、「3話残留率」も高い。強いていえば、各世代でまんべんなく強かった「天国と地獄~」に比べて、視聴層がティーンやF1層に偏る傾向があったとは言えるかもしれない。

こちらは「1話切り回避率」「3話切り回避率」がともに偏差値50を切っており、1話だけ見て戻ってこなかった視聴層が多かったことがうかがえるが、「神回」と話題になった最終回ではだいぶ巻き返している。ただこのドラマ、録画予約した機器がとても多いのだが録画消化率が異様に低い。宮藤官九郎作品ということもあり、録画だけしてそのうちゆっくり見ようというコレクター気質の視聴層が多いとも考えられる。特にM2、F2層の宮藤への潜在的支持はやはりかなり高いので、2019年の大河ドラマ「いだてん」(NHK)同様、後年評価を高めるタイプの作品なのかもしれない。

北川悦吏子脚本作品。初回の数字はとても高く、期待されたが、残念ながら典型的な尻すぼみのパターンとなった。総合的に見れば(4位にランクインしているわけだし)さほど悪い数字ではないのだが、初回の勢いをもう少し維持していれば結果は違っていただろう。特にティーンやM1、F1の若年層では、(初回の段階では)ほかのドラマに比べて圧倒的に支持されていただけに、悔いが残る。

「ウチの娘は~」と逆に初回のポイントは低かったのだが、「3話時点残留率」が異常に高く、初回を見た人間がほとんどついてきたということだ。予約数自体は決して多くはないが、予約消化率の偏差値は非常に高い。前評判に頼らない、いわゆる「意外な拾い物」でこういうドラマを見つけるのが、ドラマファンの本懐だろう。継続率ぶっちぎり首位は伊達ではない。

コロナの影響はまだ続いているが、後ろ倒しになったドラマのラインナップはむしろ実力はくちゅうで充実してきたとも言える。4月以降も楽しみな作品がたくさん待ち受けているので、そんなドラマたちを楽しみつつ、これからも新たな視点でさまざまなテレビも見方を紹介していくので、お楽しみに。

文/武内朗
提供/TVS REGZA株式会社

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