開幕ダッシュに成功の阪神 強みは巨人を上回る投手陣も16年ぶりVへの不安材料は?

阪神・矢野燿大監督(左)と巨人・原辰徳監督【写真:荒川祐史】

投手力の阪神「層が厚く余程のことがないと崩れない」

開幕して1か月が経過したプロ野球。セ・リーグは阪神が頭ひとつ抜け出し、ヤクルト、巨人が追う展開になっている。宿命のライバルと言われる阪神と巨人の対戦成績は3勝3敗と互角。戦前の予想通り、両チームによる優勝争いが繰り広げられるのだろうか。現役時代にヤクルト、楽天で外野手として7度のゴールデングラブ賞を受賞した野球評論家・飯田哲也氏は「今年は最後まで面白い戦いになると思います」と、両チームのマッチレースを予想した。

飯田氏が高く評価するのが阪神。先発投手がローテをしっかり守るなどリーグトップのチーム防御率をマークし、打撃も勝負強さを見せ開幕ダッシュに成功した。「充実した先発陣に、外国人選手が好調な打線。投打のバランスがいい。昨年も阪神は打てば勝てると言われていましたが、得点力がアップしたことで現在の成績になっていると思います」と語る。

ジェリー・サンズ内野手が打率.272、7本塁打、20打点、昨季は故障で29試合出場に終わったジェフリー・マルテ内野手も打率.283、6本塁打、18打点とポイントゲッターとして機能している。「2人が打つことで4番の大山もプレッシャーが軽減されて、うまく引っ張られています。糸原も高打率を残している。(ドラフト1位の)佐藤輝は三振は多いですが、打点が多いし、ホームランも少なくとも20本は打つでしょう。近本の状態が上がり、出塁してかき回すようになれば得点力はさらに高くなるはずです」。

もともと評価が高かった投手陣も評判通りの力を発揮している。先発では西勇輝、青柳晃洋、秋山拓巳、ドラフト2位ルーキー伊藤将司らが安定した投球を見せ、来日2年目のジョー・ガンケルも開幕4連勝と好調だ。救援陣も抑えのロベルト・スアレスを中心に岩崎優、岩貞祐太、小林慶祐、加治屋蓮ら駒が揃っている。今季復活が期待された藤浪晋太郎は2軍再調整となったが、飯田氏は大きな問題にはならないとみている。

「チームにはまだまだ投手がたくさんいます。層が厚いので余程のことがなければ崩れることはないと思います。不安があるとすれば、優勝を経験した選手がほとんどいないので、終盤にもつれた展開になった場合は焦りやプレッシャーなどが出てくるかもしれないということでしょうか」。2005年を最後にセ・リーグ優勝から遠ざかっているだけに、そこが不安材料だと指摘する。

巨人は岡本和が打たなければ「優勝はないと思います」

そんな阪神に対抗できるのは「やはり巨人しかいないのではないでしょうか」と言う。「監督、選手ともに経験値が高く、新型コロナで離脱した選手も戻ってきてベテランと若手も噛み合い始めています。原監督は選手の調子や対戦相手を見ながらスタメンをうまく決めています。何より、監督も選手も勝ち方を知っているのが強みではないでしょうか」。

ただ、現状では万全に近い阪神に対して、巨人には不安があるという。

「巨人は先発投手の整備が重要になると思います。菅野はもちろん、高橋や畠、今村らが頑張っていますが、先発の陣容を見るとやはり阪神の方が上だと思います。(2軍調整中の)戸郷が昨年くらいの成績を残さないと3連覇は難しくなってくるでしょう」

野手では出遅れた4番打者の名前を挙げた。「岡本和次第だと思います。直球に振り遅れて、変化球に泳いでしまうという状態が続いていました。ただ、ここ数年の実績を考えればそのうち打ち始めるでしょう。4番が打ち始めるとチームも乗ってくる。とにかく、岡本和が打たなければ巨人の優勝はないと思います」。岡本和は27日のヤクルト戦(神宮)で4安打の固め打ち、28日の同カードでも2試合連続弾を放ちリーグトップの24打点とした。ここからさらなる上昇気流に乗れるか注目される。

阪神と巨人のチームカラーは対照的だとも指摘する。「巨人は新外国人2人(ジャスティン・スモーク内野手、エリック・テームズ外野手)が例え機能しなくても、原監督はなんとかうまくやると思います。手薄な投手陣とは対照的に野手の層は厚いですから。逆に阪神は野手の層は決して厚くない。レギュラークラスに故障者が出ると厳しい状況になるかもしれません」。テームズは“デビュー戦”となった27日のヤクルト戦で右アキレス腱断裂の悲劇に見舞われたが、他の選手でカバーすることは可能とみている。

投手の層が厚い阪神と、野手の層が厚い巨人。今後どちらかが抜け出すのか、そこに他球団が加わってくるのか。いずれにせよ今季のセ・リーグは面白い。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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