『SXの時代  究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営』

日本の多くの企業ではいまだに、サステナビリティやSDGsの取り組みが「事業の本丸とは別世界で繰り広げられるアピール合戦」のような状態に陥っている。では日本企業が本来、目指すべき「本物のサステナビリティ経営」とは何かーー。PwC Japanグループが4月に上梓した『SXの時代 究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営』(日経BP)は、サステナビリティ経営への変革「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」を実現するための具体的手法を紹介する一冊だ。アマゾンのいくつかの部門ランキングで1位になるなどいま注目を集めている。

近年、気候変動問題の深刻化などを背景に、ESG投資やサステナビリティ経営を推進する金融機関、企業が増加している。さらに、サステナビリティ経営において企業が対応すべき環境・社会課題は、リスク管理領域から事業成長領域へと拡大している。日本においても、サステナビリティやSDGsを経営戦略に組み入れようとする動きが加速しているものの、サステナビリティを「自社の事業存続に欠かせない重要課題」と認識し、長期的な成長戦略のテーマに据えて取り組んでいる企業は少数にとどまるのが現状だ。

本書では、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を、「環境・社会価値を前提にして、経済価値を同時に実現する(儲かる)企業経営への転換」と位置づける。そして、サステナビリティが重視されるようになった背景(WHY)、企業が取り組むべきサステナビリティの課題の全体像(WHAT)を解説した上で、SXを実現するためには何が必要で、どのような発想でビジネスモデルや組織を変革していけばよいかなど、「本物のサステナビリティ経営」の具体的な進め方(HOW)を先進事例とともに解説している。

自社のサステナビリティ経営がどの段階かを知ることのできる「SX診断」をはじめ、サステナビリティ経営で先進的な取り組みを推進する国内外の企業経営層へのインタビューや、PwC Japanグループが独自に開発した、非財務情報が将来財務に与える影響(財務インパクト)を可視化する手法なども紹介し、SX実現に向けたより実践的なアプローチへと導いている。

PwC Japanグループは、本書を通し、「日本企業の経営者、経営に携わる人々、今後の社会を担うすべての人々が、サステナビリティ経営の本質、SXの必要性、SX実現のための具体的手法を理解し、ビジネスの力でより良い社会を築く、『本物のサステナビリティ経営』を能動的、主体的に推進していくことに貢献したい」としている。

著者は、同グループの坂野俊哉氏、磯貝友紀氏。

左から磯貝氏、坂野氏。企業のサステナビリティ経営へのトランスフォーメーションを総合的に支援する専門組織「サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス」に属し、坂野氏はエグゼクティブリードを、磯貝氏はテクニカルリードを務める

今や、サステナビリティは経営のトップアジェンダの一つです。一方で、環境・社会の課題解決と、企業の利益は、両立が難しいものとして語られがちです。本書ではそのような「トレードオフ思考」から脱し、企業の成長と利益の双方を達成する「トレードオン」を生み出すヒントを、具体的な実例を豊富に交えながらご紹介しています。サステナビリティ課題に長期的に取り組むことが持続的な成長を支える基盤になることを本書を通じて伝えています。
――坂野俊哉氏

本書はサステナビリティを軸にした経営変革の実践のための書です。「本物のサステナビリティ経営」のあるべき姿から、実現のためのKPIの設定まで、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現を段階的に解説しています。第10章「先進企業トップが語るSXの真髄」では、サステナビリティ経営を実践されている先進的企業のリーダーの方々へのインタビューで経営の生の声も紹介しています。皆様のSXを進める一助になれば幸いです。
――磯貝友紀氏

〈目 次〉

序章 あなたの会社のサステナビリティ経営は本物か?

第0章 「本物のサステナビリティ経営」とは何か?

第1章 なぜSXが求められているのか?

第2章 統合思考でビジネスへの影響を考える

第3章 七つの長期的構造変化

第4章 未来志向型SXの三つのタイプ

第5章 トレードオンを阻む五つの壁

第6章 「五つの壁」を乗り越え、トレードオンを生み出す

第7章 自分の北極星を見つける

第8章 SXを実現する仕組みづくり

第9章 成長を続けるリスク・レジリエントな企業の条件

第10章 先進企業トップが語るSXの真髄
青井 浩氏(丸井グループ)/亀澤 宏規氏(三菱UFJフィナンシャル・グループ)/新浪 剛史氏(サントリーホールディングス)/丸山 和則氏(DSM Japan)/柳 良平氏(エーザイ、早稲田大学)/山田 進太郎氏(メルカリ)/ヘレン・フォン・ライス氏(イケア・ジャパン)/カローラ・リヒター氏、石田 博基氏(BASF)

付録 プレ財務情報[^undefined]の「見える化」を実現する方法
※プレ財務情報:財務要素として顕在化していないが、将来的に財務に直結すると考えられる要素に関する情報、いわゆる非財務情報

出版社:日経BP
価格:2,200円(税込)
ページ数:408ページ

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