コロナ感染拡大のインド卓球代表選手が東京五輪に異議「最高のものではない」

インドでは新型コロナ感染拡大で医療がひっ迫している(ロイター)

新型コロナ禍の急激な深刻化により今夏の東京五輪の開催が危ぶまれる中、ついに出場権を持つ海外有力アスリートが声を上げた。

日本では感染力が強い変異株がまん延してきており、東京では新規感染者数が1000人を超えて極めて危険な状況に陥っている。それでも東京都や組織委員会は世論を無視して開催強行へ突っ走っているが、海外の有名アスリートがそうした状況に疑問をなげかけた。

男子卓球でインド代表として東京五輪の出場権を持つシャラトカマル・アチャンタ(38)が、インドメディア「PTI」に「祭典にはなれない。本来五輪は世界最大のイベントであり、祝祭や祝賀会の意味を持つ。だが今回の五輪は社会的な意味で、最高の五輪ではない」と新型コロナ禍の状況を受けて東京五輪の意義を疑問視した。

アチャンタは2018年アジア大会の混合ダブルスで銅メダルを獲得し、男子世界ランキングで32位につける有力選手。自身も出場権を持つ立場のため慎重に言葉を選んではいるが、現役の有名アスリートが東京五輪に否定的な見解を示したことは大きな意味を持つ。インドメディアも一斉に報じており、同国メディア「スポーツカフェ」は「トップランクの卓球選手が、外国人観客が禁止され、世界中の現在の新型コロナウイルスの状況により、東京五輪は最高のものではないと感じている」とアスリートが五輪の開催を不安視する状況を指摘した。

インドでは29日に新型コロナの新規感染者数が過去最多の38万6452人に達し、3498人が死亡するなど国全体が危機的状況に瀕している。選手もまともに五輪へ向けて準備できる状況ではなく、もちろん国民も五輪を楽しめるはずもない。こうした国はインドだけでなく世界中で感染が深刻化しているため、選手の立場から勇気を持って声を上げた格好だ。

国際オリンピック委員会(IOC)や東京都、組織委員会などは世論の声を無視し続けているが、強行開催の牙城を崩す蟻の一穴となるか。

© 株式会社東京スポーツ新聞社