新型コロナの肺傷害治療薬を東北大学が開発、治験で安全性を確認

東北大学大学院の張替秀郎教授を代表者とするグループは、血栓や炎症・線維化を改善する作用を有する薬剤「TM5614」の前期第II相医師主導治験を終了。新型コロナウイルス感染症に伴う肺炎の重症化を防ぐ治療薬としての安全性が確認された。今後、後期第II相臨床試験により有効性を評価する。経口薬で投与が容易なため、患者や医療現場の負担軽減が期待される。

新型コロナウイルス感染症の約80%は軽症で経過するが、高齢者や基礎疾患を持つ患者などは肺炎が重症化し、肺傷害や呼吸不全に至ることがある。また、発病当初は軽症でも急速に重症化する場合があり、血栓症(合併症)や肺後遺症の問題も生じている。ワクチン接種による予防と並行して、肺炎の重症化を防ぐ治療薬の開発が望まれている。

東北大学の宮田敏男教授が開発したPAI-1阻害薬TM5614は、血栓の溶解を促し、肺の炎症や線維化を改善する作用があり、新型コロナウイルス感染症に伴う肺傷害を軽減する治療薬としても期待された。そこで、2020年10月から東北大学、京都大学、東京医科歯科大学、東海大学、神戸市立医療センター中央市民病院の計7医療機関で前期第II相医師主導治験を実施。2021年3月末に終了し、安全性が確認された。なお、米国やトルコの大学医療機関でも同薬剤の治験を実施している。

さらに、TM5614の有効性を評価するため、2021年5月から後期第II相医師主導治験を20医療機関で実施する。TM5614錠とプラセボ錠による治験50症例ずつの計100名の新型コロナウイルス肺炎患者(中等症)が対象となる。TM5614は経口薬のため、外来で処方し自宅やホテルで療養中の患者にも投与でき、患者や医療現場の負担軽減が期待される。

参考:

【東北大学】新型コロナウイルス感染症に伴う肺傷害を改善する治療薬開発- 肺炎の重症化を防ぎ、後遺症の軽減を目指す-(PDF)

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