なべやかん遺産|「許せないゴジラ」 芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「許せないゴジラ」!

本来のゴジラとは何か

ゴジラ誕生から今年で67年。『メカゴジラの逆襲』(1975)公開後、ゴジラ映画15作品は過去の産物にされそうな時期もあったが、現在は常にゴジラがいてくれるような時代になっている。

忘れられそうな時期からの復活は、我々ファン達が支え復活させた。コアな先輩達による熱意と行動、それに続いた幼い頃の自分、それらがあったから今日に至っている事はまず間違いない。

ハリウッドでは『ゴジラVSコング』が劇場公開され日本国内でも5月から劇場公開され、テレビとNetflixでは『ゴジラs,p』(ゴジラシンギョラスポイント)というアニメが放送開始されて、ゴジラは現在進行形になっている。

人生をゴジラに捧げて来た自分にとって、本来なら大喜びしないといけないのだが、それが出来ないのが実に悲しい。今回はそんな悲しみを語りたいと思う。

ハリウッドゴジラとコングが戦う。日本のスターとアメリカのスターの対決。アイアンマンからスタートし大成功を収めたマーベル・シネマティック・ユニバースのようにゴジラ映画を単発で終わらせず、キングコングとの対決まで持って来てくれたハリウッドには本当に大感謝だが、悲しい部分がある。

それはゴジラのデザインが本来のゴジラではない事だ。本来のゴジラとは何か?

それは日本のゴジラの事である。初代(1954)から始まり、『ゴジラ FINAL WARS』(2004)までの作品に登場した日本のゴジラこそ真の姿だ。(シン・ゴジラはとりあえず忘れて)

こういった事を言うと「70年代のゴジラもですか?」と意地悪っぽく言う人もいる。70年代のゴジラはとても可愛かった。可愛すぎて昔は嫌だったが、その当時の日本が第一次怪獣ブームから第二次怪獣ブームに移った頃という事もあり、世の中の流れ的に可愛さが出てしまったので仕方がないと思っている。

一番好きなゴジラはモスゴジ。『モスラ対ゴジラ』に登場したゴジラ。※バンダイのソフビ
『怪獣総進撃』(1968)のゴジラと『ゴジラ』(1984)。※バンダイのソフビ
川北紘一監督が生んだゴジラも素晴らしかった。※バンダイのソフビ

ハリウッドに問う!

ハリウッド版ゴジラ。顔も皮膚も足も背びれも…。悲しくなるよね。※バンダイのソフビ

それでも、ゴジラとして受け継ぐ所はちゃんと受け継いだデザインがされている。

1984年のゴジラから軌道修正され怖いゴジラが復活。平成、ミレニアム時代のゴジラも素晴らしいゴジラだった。昭和のゴジラを研究し、ゴジラの特殊造形をした利光貞三さんへのリスペクトがあったからこそ、良いゴジラになったのだ。

ゴジラ愛があったからこそ生まれた新たなゴジラデザイン。ゴジラがかっこよく見える黄金比率を踏まえデザインされている。

ゴジラ人気は日本だけでなく海外でもファンが多い。それらファンが愛した日本のゴジラ。ところが、ファンが愛したゴジラとは別のデザインがここ最近は目立っている。その代表格がハリウッドのゴジラだ。ローランド・エメリッヒ監督版の『GODZILLA』(1998)はこの際忘れよう。

現在のハリウッドゴジラは顔がリクガメ、足は象さん、背びれは小さく、体の表面も何か違う。なぜ本家のゴジラデザインから外れるのか?

本家ゴジラがかっこいいから多くのゴジラファンがいるのではないのか?

逆にハリウッドにお聞きしたい。もしあなた方がデザインしたゴジラが本家のデザインだったら、ここまでのゴジラ人気になっていたと思いますか?

『ゴジラ2000』に登場したミレゴジ。ミレゴジのシルエットをハリウッド版にしたら良かったのに。※バンダイのソフビ
アニメ映画のゴジラ・アース。これをゴジラと呼びたくない。※バンダイのソフビ
ハリウッドゴジラのアナトミーみたい。

回転寿司レベルのゴジラデザイン

これは本家日本でも同様で、アニメ映画『GODZILLA 怪獣惑星』(2017)『GODZILLA 決戦機動増殖都市』『GODZILLA 星を喰う者』(2018)のゴジラ・アースもカッコ良さから遠のいてしまっている。

そして、『ゴジラs,p』のゴジラデザインも同様だ。物語が面白い事は認める。

だが、アニメの面白さであって実写特撮の面白さではない。アニメ好きな人は好きだろうなと感じる作品に仕上がっている。

マイナス部分を吹っ飛ばすのは、主役であるゴジラがどれだけかっこいいかにかかっている。ゴジラとは全く関係の無い怪獣であればどんな姿でも構わない。

でも、主役になる怪獣は圧倒的なカッコ良さがあればあるほど作品価値は高まる。怪獣作品はストーリーの良さだけでは駄目なのだ。

どちらのアニメ作品も「今までと違ったゴジラデザインをしよう」このような思いがデザイナーの頭に浮かびそれがデザインに出たのだと思うが、それが妙な方向に向かっている気がしてならない。

もはやゴジラの亜流としか思えなくなっている。

回転寿司で赤貝やアワビの高級品を食べると、回転しないお高いお寿司屋さんとは見た目の違う赤貝やアワビが出て来る。あきらかに違う貝のように見えても所属する科は同じなので堂々と名乗っているのだ。

ハリウッド版もアニメ版もこれと同じだ。デザインは回転寿司レベルなのだよ。

もっとワクワクさせてくれ!

怪獣映画というのは、ストーリーが面白くても怪獣がカッコ悪いのはマイナス。逆にストーリーがつまらなくても怪獣がカッコ良ければ歴史に残る。そして、商品の売れ方も大きく違う。

ハリウッド版もアニメ版もゴジラ科の商品だから自分も買うよ。でも、仕方なく買っているのだからね。カッコ良いゴジラであればもっともっと買っている。破産するほど買っている。

だから破産せずに済んでいるから有難いと言っちゃえばそれまでだが、せっかくの楽しみがマイナスになるのが悲しい。

よりゴジラを知ってもらいために『GODZILLA -History of Formative Arts 1954-2016-』を是非買って貰いたい。

写真の大きさだけでなく鮮明度が良いので、ゴジラの皮膚のモールドが凄くよくわかる。これがゴジラ、これぞゴジラ、ゴジラという怪獣をより理解出来る本当に素晴らしいフォトブックだ。

今後はもっとワクワクさせてくれるデザインをしてくれよ。オリジナルからのレイプデザインはNGでお願いします。

『ゴジラs,p』のゴジラウルティマ。このデザインならゴジラを名乗らないでもらいたい。※バンダイのソフビ
全体のシルエットが良くない。この子達を心の底からゴジラと呼べたら嬉しかったな。
『GODZILLA -History of Formative Arts 1954-2016-』でゴジラをお勉強して下さい。

なべやかん

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