食券無料配布で子ども支援 貧困解決へ飲食店、寄付募る 10日から諫早青年会議所

こども食券プロジェクトのイメージ

 子どもの貧困問題を受け、諫早青年会議所(諫早JC、松藤健一理事長)が、地域を巻き込んだ「諫早こども食券プロジェクト」を始める。市民や企業からの寄付金などを原資に、諫早市内の協力飲食店で市内の中学生以下の子どもが食事やテークアウトができる「こども食券」を、5月10日から希望者に無料配布する「新しい形の支援活動」(同JC)という。

 ◎地域で育成

 普段、接する機会が少ない地域の大人たちとの交流を通じて子どもの心の発育を促すとともに、地域全体で子どもを支え育てていくという意識も醸成したい考え。コロナ禍で困窮している家庭への子育て支援にもつなげる。協力飲食店や寄付を募っている。
 発案した同JC地域共創委員長の諸岡健吾さん(38)によると、きっかけは約2年前、知人女性が漏らした一言だった。「近所の子にご飯を食べさせてあげているんだ」-。子どもの貧困が社会問題になっていることは知っていたものの、「どこか遠い世界のことだと思っていた。まさか身近にあるなんて」。衝撃だったという。
 長崎県の2018年度調査(北松小値賀町を除く小5、中2の保護者らを対象)によると、一定の基準(貧困線)を下回る世帯の割合(子どもの貧困率)は11.2%、ひとり親世帯の貧困率は30.2%。子どもへの食の支援を巡っては、貧困家庭や、親の帰宅が遅い家庭の子どもに無料か低額で提供する「子ども食堂」などが全国で広がっている。月に数回、決められた場所で提供する事例が少なくないが、同プロジェクトでは「地域全体で支援する」ことを理念に掲げた。

 ◎食育兼ねて

 食券は、「自由配布分」と、市母子寡婦福祉会会員向けの「ひとり親家庭応援分」に分けて配る。希望者はいずれも指定場所で入手できる。「自由配布分」は1回につき、子ども1人当たり1枚。使い終わるまで追加の受け取りはできない。「ひとり親家庭応援分」は毎月1回、子ども1人当たり5枚を配る。提供するメニューは各店に任せており、使用食券は同JCが1枚500円で換金する仕組みだ。
 協力店は4月26日現在、16店。「500円じゃ、(収支的に)きついかも」「本当にそんなことできるの」。呼び掛けに戸惑う店もあったが、趣旨を説明すると応じてくれた。協力店の一つ、「肉のすけ」(東小路町)オーナー、山口朋佳さん(36)は「食育も兼ねてやりたい。子どもたちの喜ぶ顔が楽しみ」と話す。
 10月末までの使用期間中(配布は9月末まで)、計1万食(500万円分)の提供を目指している。諸岡さんは「飲食店には無理のない範囲で協力してもらう。いろいろな人を巻き込むことで、子どもを地域で育てていくという意識が町全体に広がればうれしい」と願っている。
 食券の配布方法や協力店など詳細は特設ホームページで紹介している。問い合わせは同JC(電0957.26.3643)。

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