新社会人が知っておきたい「年間で起こるお金カレンダー」、給料からお金が引かれるのはなぜ?

お金のことをほとんど学ぶ機会がないまま、社会人になる人も多いでしょう。社会人1年目は、知らないことが多く、あとあと慌てることも。「手取りの給与がどうしてこの金額になるのか」「給与からどんなお金を支払っているのか」「税金を安くするにはどうしたらいいのか」理解しておくことが大切です。

今回は、社会人1年目で知っておきたいお金のことを時系列で解説します。


給与からいろいろ引かれるのはどうして?

社会人としてもらう給与は、企業によって毎月何日で締めて翌月何日に給与を支払うのか異なります。たとえば4月1日入社の方の場合、「月末締め翌月〇日払い」なら翌月(5月)〇日に給与が振り込まれます。また、「15日締め当月25日払い」ならおおよそ半月分の給与が4月25日に支払われます。

学生時代のアルバイトでは、時給単価×働いた時間分そのままの金額、または少し税金が差し引かれた金額をバイト代としてもらっていたでしょう。しかし、給与は社会保険や税金を企業が給与から控除(天引き)し、企業が従業員に代わって支払うことになっています(法定控除といいます)。

知識がないと「会社からこんなに引かれている」と不満に思うかもしれませんが、決して会社が搾取しているわけではありません。むしろ、会社は「労使折半」といって、みなさんの社会保険で引かれている金額とほぼ同額をプラスして払っています。

たとえば、社会保険が1万8,000円引かれていたとすると、会社は天引きした1万8,000円に加えて、みなさんの社会保険を1万8,000円負担するので、合計3万6,000円支払っていることになります。

社会人1年目の方の給与から引かれる社会保険と税金には、次のものがあります。役割とともに紹介します。

健康保険料 (病院で提示する健康保険証で医療費が3割負担に。また、病気やケガで仕事を休まざるを得なくなった場合の傷病手当金などに充てられるお金)
厚生年金保険料 (老後に受け取れる老齢年金、障害を負った場合の障害年金、死亡した場合の遺族年金などに充てられるお金)
雇用保険料 (通勤途中ケガなどがあった場合の労災保険、失業した場合の失業手当などに充てられるお金)
所得税 (収入に対して決められた割合を国に払う税金)

いずれも、私たちの生活やもしものときなどに役立つ費用として徴収されています。

次は、給与と控除される項目を理解したところで時系列で知っておきたいポイントを紹介していきます。

4月の初任給は「社会保険料」「税金」が引かれることに注目

紹介したとおり、給与からは健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税が引かれます。

雇用保険料・健康保険料・厚生年金保険料は、給与の額に応じた等級により金額が決まります。

所得税は、「このくらいの給与の人はいくら引いておく」という基準の金額があり、その金額を企業が仮徴収します(仮徴収と記載した理由は12月の項目で解説します)

なお、雇用保険は給与を支払う都度控除されますが、健康保険料・厚生年金保険料は「資格を取得した月の翌月」から控除するよう法律で定められているため、会社の規定によっては、4月は雇用保険と所得税しか控除されないケースもあります。

4~6月の残業には気をつけて! もらえる給与が減るかも

給与から引かれる健康保険料・厚生年金保険料の金額は、毎年1回の「定時決定」で決まります。定時決定では、4月から6月の3ヶ月の平均給与をもとにして、健康保険料・厚生年金保険料を決定します。平均給与が上がると、計算の元になる「等級」がアップし、それにともなって健康保険料・厚生年金保険料も段階的に上がります。

たとえば入社したてで、4~6月に頑張って残業をして、残業手当をたくさんもらったものの、7月から残業をあまりしなくなった場合、健康保険料・厚生年金保険料が値上がりして、手取りが少なくなる恐れがあるのです。

あくまで目安ですが、4月から6月に残業などで平均給与が月3万円上がった場合、おおよそ5,600円ほど控除される保険料が増えることになります。ですので、当面の手取りを減らしたくない場合は、残業時間に気をつけたほうがいいでしょう。

11月の「年末調整」で12月の給与の手取りが増える!?

11月頃になると、勤務先から「年末調整」の書類提出を求められます。年末調整は、1年間の本来納めるべき所得税の金額と、ここまで仮徴収してきた所得税の金額を比べて、過不足を調整することです。仮徴収された所得税のほうが多ければ、納めすぎた分が戻ってきますので、12月の給与の手取りが増えます。

また、税金を減らす所得控除の手続きも年末調整でできます。

生命保険に加入していた場合「生命保険料控除証明書」が保険会社から送付されます。これを勤務先に提出すると税金の計算の元になる所得が減ります。納めるべき所得税が少なくなれば、結果12月の給与の手取りが少し増えます。

12月~1月に収入や控除の項目をまとめた「源泉徴収票」を勤務先から渡されます。源泉徴収票は自分の年収を証明する書類です。年収を確認できるのはもちろん、住宅ローンを組むときなどには過去数年分の提出を求められることがあります。大切に保管しておきましょう。

社会人2年目の5月に給与が減る?

社会人2年目の5月に給与の振込額が減ったという声をよく聞きます。これは、社会人1年目では引かれていなかった「住民税」の天引きが始まるからです。住民税は、住んでいる都道府県・市区町村に払うものです。

住民税は、前年の1月から12月までの1年間の収入で計算され、翌年の5月から支払います。勤務先が「特別徴収」という個人の住民税を給与から天引きして市区町村に払う手続きをしていれば給与から天引きになります。いっぽう、住民税の特別徴収を行っていない勤務先の場合、自宅に住民税の納付書が送られるので、自分で納付する必要があります。

ふるさと納税にもチャレンジしよう

毎年年末になるとふるさと納税のCMを見る機会が増えませんか。 毎年12月までにふるさと納税をすれば来年請求になる住民税が安くなるからです。

ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付ができる仕組み。寄付をすることで、税金の還付や控除が受けられます。そのうえ、実質2,000円の自己負担で地域の特産品を送ってもらえる、うれしい制度です。

ふるさと納税の限度額は年収や控除などの条件により人それぞれ異なります。ふるさと納税のサイトを見ると、自分の年収ならいくらまでが上限なのか簡単にシミュレーションすることができます。上限額を調べたうえ、チャレンジしてみましょう。

なお、ふるさと納税で税金の控除を受ける場合、申告が必要です。寄付先の自治体が5つまでであれば、「ワンストップ納税」を利用、それ以上であれば確定申告をしましょう。


今回、社会人1年目・2年目のお金の知識を紹介しましたが、お金の知識は年代問わず大切です。年間で起こるお金のカレンダーを活用して、一度給与明細をみて控除されている項目の意味、金額、役割や制度を確認してみてください。

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