倉敷の銘菓といえば何が思い浮ぶでしょうか。
定番ものだと「むらすゞめ」や「藤戸まんぢゅう」がありますね。
でも、それ以外にもおすすめな銘菓はたくさんあります。
そのひとつが「良寛てまり(りょうかんてまり)」。
倉敷市西部・玉島地区で親しまれている饅頭です。
良寛てまりを製造・販売しているのが「菓子処ひらい」。
実は大正元年に餅屋として創業した、100年以上の歴史がある店なのです。
菓子処ひらいは、看板商品の良寛てまり以外にも「こげまん」「あんてまり」「倉敷小判」をはじめ、たくさんの地元に根付いたユニークでおいしい菓子をつくっています。
菓子処ひらいと、ひらいがつくる菓子の魅力や歴史を紐解いていきましょう。
菓子処ひらいは玉島にある大正元年創業の和洋菓子店
菓子処ひらいは、倉敷市西部の玉島エリアに本店がある和洋菓子店です。
なんと創業は大正元年(1912年)。
100年を超える歴史があります。
もともと菓子処ひらいは、餅の製造・販売していました。
その後、平成になり和菓子づくりにも力を入れるようになったのです。
菓子処ひらいの看板商品「良寛てまり」は、玉島銘菓として親しまれています。
いまでは玉島だけでなく、倉敷市を代表する銘菓のひとつとして人気です。
また、ほかにも「こげまん」「あんてまり」などの新しい商品も登場。
これらも菓子処ひらいの人気商品です。
なお現在でも、餅の製造・販売はおこなわれています。
店内のほか、市内外のスーパーマーケットなどでも菓子処ひらいの餅が購入可能です。
店舗の紹介
菓子処ひらいは玉島にある本店のほか、倉敷市内には笹沖店(ささおきてん)もあります。
さらに岡山市には妹尾店(せのおてん)も。
ほかに、一部のスーパーマーケットや百貨店などでも販売されています。
各店舗の詳細や取り扱い店については、菓子処ひらいの公式サイトを見てください。
またインターネット販売もしています。
ただし、インターネットでは取り扱いのない商品もあるので注意してください。
おもな商品・人気の商品
価格は消費税込。 令和5年(2023年)4月時点の情報
菓子処ひらいでは看板商品の「良寛てまり」「こげまん」「あんてまり」などのほかにも、たくさんの和菓子・洋菓子を販売。
バラ売り、箱入り、詰め合わせなどがあります。
なお箱入りは、箱代が必要です。
子供が1歳になったときの行事「誕生餅(一升餅)」もありました。
誕生餅化粧箱入りは販売終了となりました。
2023年4月時点の価格は、以下のとおりです。
誕生餅セット:4,950円
誕生餅:3,228円
さらに同じ玉島にある老舗、タテソースでおなじみの豊島屋(てしまや)とコラボレーション商品も発売しました。
「玉ノ浦 醤油パイ」(1個 124円)は、豊島屋の醤油「味露(みーろ)」を使った醤油風味のパイです。
サクサクとした軽やかな食感で、甘いバターの香りと醤油の甘く香ばしい上品な味わいが特徴です。
また令和2年(2020年)の岡山駅構内「さんすて」リニューアルに合わせ、岡山にちなんだ菓子4種を発売しました。
このうち「ももバウム」は「せとうちおみやげグランプリ」で「入賞」を獲得しています。
たくさんある菓子処ひらいの商品のなかから、代表的なもの・人気のものを紹介しましょう。
「良寛てまり」は高級感あふれる栗入り饅頭で贈答品にピッタリ
菓子処ひらいの代表菓子で、玉島銘菓の「良寛てまり」(1個 270円
。
良寛てまりは玉島の円通寺(えんつうじ)で修行した良寛が、子供たちとよく手鞠(てまり)で遊んでいたという説話をモチーフにした饅頭です。
良寛てまりは、平成6年(1994年)に開催された第2回 岡山県創作みやげ品コンテストで菓子部門の「大賞」を受賞。
さらに、同年開催の第22回全国菓子大博覧会では「大臣栄誉賞」も受賞しました。
良寛てまりは、栗入りの薯蕷饅頭(じょうよ まんじゅう)です。
薯蕷饅頭は生地にヤマノイモ(ツクネイモ)を使った饅頭で、「上用饅頭」とも書かれるほど饅頭のなかでも高級な部類。
生地の中にはこし餡(あん)、それにくるまれて栗の甘露煮が丸ごと1個入っています。
生地はプニッとした食感で、その中にこし餡のなめらかな舌触りと上品で控えめの甘さ。
そして栗のホクホクとしながらもシットリ感のある食感と、栗ならではの風味と甘みが味わえます。
良寛てまりは生地、こし餡、栗がバランスよく楽しめる饅頭です。
「こげまん」は生地の香ばしさと食感、餡の上品な甘さが魅力
「こげまん」(1個 125円)は、かりんとう饅頭の一種です。
平成20年代前半ごろ、全国的にかりんとう饅頭が流行しました。
そのとき菓子処ひらいでも、かりんとう饅頭の製造・販売を開始。
菓子処ひらいのかりんとう饅頭は、とてもおいしいと好評だったそう。
せっかくおいしい饅頭ができたので、流行が終わっても親しんでもらえる商品にしたいと考えた末に生まれたのが「こげまん」という名前でした。
地元に根付いた名前を考えていたとき、かりんとう饅頭を食べた先代が「こげーな見た目の饅頭がうめーんかと思うたら、あんげーうめーのー(こんな見た目の饅頭がうまいのかと思ったら、案外うまいなあ)」と岡山弁で話したそう。
それをヒントに、岡山弁にちなんだ名前で「こげまん」にしたとのことです。
「こげーなうめー饅頭、いっぺん食べてみられー(こんなにうまい饅頭、一度食べてみて)」を略し「こげまん」。
さらには「こげ茶色の饅頭」の意味もかけています。
生地の表面は「こげまん」という名前のとおり焦茶色でツヤがあります。
生地に黒糖を練り込み、中にはこし餡。
それを米油でカラッと揚げています。
表面は固めで、食べるとカリッとしています。
そして中の生地はフンワリ。
こし餡はとてもきめ細やかでなめらかな舌触りです。
上品で控えめな甘さで、後口もサッパリしています。
まるでサツマイモのような、少しネットリとした舌触りです。
サツマイモならではの甘さと風味ですが、甘さは強すぎず食べやすいです。
なお、サツマイモは国産のものを使っています。
常温で食べてもおいしいですが、菓子処ひらいのおすすめはオーブントースターで2〜3分焼いて食べる方法。
実際にやってみると揚げたてのように生地はサクサク、中はホクホクで、常温とは違ったおいしさ。
半解凍は、アイス菓子のような独特の味わいでした。
「あんてまり」はモッチリ食感のカステラ生地に4種の餡
「あんてまり」(1個 111円)は、新感覚の饅頭です。
生地は350ミリリットル缶の上面ほどの大きさで、厚みは2センチメートルほど。
あんてまりは「生もみじ饅頭」をヒントに、玉島ならではのものにアレンジ。
玉島といえば良寛さんの手まりということで、手まり型の饅頭になったそう。
あんてまりは、生地が独特です。
カステラ生地なのに、まるで団子のようにモッチリとした弾力があります。
とても不思議な味わいです。
中には餡がタップリと入っています。
餡は全部で4種類。
- こし餡
- サツマイモ餡
- ブルーベリー餡
- 抹茶餡
こし餡は、きめ細やかでシットリなめらかな舌触り。
そして、甘すぎない控えめで上品な甘さです。
少しネットリとした舌触り。
まるで焼き芋のような甘さと風味だが、甘さは強すぎず後口がスッキリしています。
ブルーベリーを使うのはめずらしい印象ですが、岡山県産の果物であんてまりに合う食材を探したところ、岡山県産のブルーベリーに行き着いたそうです。
薄い紫色をした餡で、こし餡の舌触りなのにブルーベリーを食べているかのようなさわやかな甘酸っぱさがして、フルーティー。
不思議な味わいです。
深緑色の抹茶餡は、こし餡と同じでシットリとした舌触りです。
上品な甘さの中に、抹茶の風味とほろ苦さが広がります。
「倉敷小判」は自慢の生地とたっぷりクリームのワッフル
菓子処ひらいは、洋菓子もつくっています。
洋菓子のなかでも おすすめなのが「倉敷小判」(1個 181円)。
倉敷小判は、ワッフルです。
倉敷といえば美観地区。
美観地区はかつて豪商が多かったことから、小判をモチーフにしているのです。
倉敷小判は5種のクリームがあります。
- カスタード
- イチゴ
- 抹茶
- チョコレート
- コーヒー
小さな子供にも好まれ、世代問わずに食べられるように考えられたのが、倉敷小判です。
大正元年から餅や菓子をつくり続け、地元に根付いている菓子処ひらい。
有限会社 菓子処ひらいの代表取締役・平井剛(ひらい つよし)さんに話しを聞きました。
菓子処ひらいの代表・平井 剛さんへインタビュー
大正元年から餅や菓子をつくり続け、地元に根付いている菓子処ひらい。
有限会社 菓子処ひらいの代表取締役・平井剛(ひらい つよし)さんへインタビュー、店の歴史や商品の開発秘話などの話を聞きました。
インタビューは2021年5月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
大正元年創業、はじまりは餅屋
──創業の経緯や会社の歴史を知りたい。
平井(敬称略)──
弊社の創業は、大正元年(1912年)にさかのぼります。
最初は、餅の製造・販売をおこなう店でした。
「平井餅商店」という店です。
今と違っていて、玉島中心部の羽黒神社のすぐそばでした。
その後、道路建設の立ち退きのために、同じ玉島中心部の通町商店街の入口あたりに移転しています。
やがてスーパーマーケットなどに商品を卸すようになり、より大きな店舗にするために現在地へ再移転しました。
昭和50年代半ばごろのことです。
お客様の声で銘菓「良寛てまり」が誕生
──和菓子づくりはいつごろから始めたのか。
平井──
平成一桁代前半です。
キッカケは、お客様からの「餅以外にも、手土産になるような和菓子があればうれしい」という声でした。
そこで先代(現 会長)が、和菓子をつくってみようと決めたんです。
しかし餅づくりと饅頭などの和菓子づくりはノウハウや技術も違うんですよ。
餅でも餡を使います。
でも、同じ餡でも餅と和菓子で違う部分も多いんです。
ですから和菓子の専門家を会社に呼びまして、指導してもらいました。
新たに得た和菓子づくりの技術を生かして誕生したのが「良寛てまり」です。
つくる以上、地元に根付いた商品にしよう、玉島の銘菓になるような商品にしようと決めていました。
もともとお客様の声から生まれたものでもありますし。
玉島といえば、やっぱり良寛さん。
良寛さんは子供たちといっしょに、よく鞠(まり)をついて遊んでいたという説話が残っています。
それにちなんで良寛てまりをつくりました。
「お土産に」という声がキッカケなので、贈答品にピッタリな和菓子をつくろうとしたんです。
そこで良寛てまりは、饅頭のなかでも高級な薯蕷饅頭(じょうよ まんじゅう)にしました。
良寛てまりを発売すると、なんと平成6年(1994年)の岡山県創作みやげ品コンテスト・菓子部門で「大賞」を受賞したんです!
さらに全国菓子大博覧会では「大臣栄誉賞」も受賞しました。
良寛てまりの受賞がキッカケで本格的に和菓子づくりを
──和菓子に力を入れ始めたのは、良寛てまりがキッカケに?
平井──
そうですね。
良寛てまりが受賞したのを機に、先代が和菓子に力を入れていこうと決めたんです。
受賞と同じ年、社名を平井餅商店から「菓子処ひらい」に変更しました。
良寛てまりの包装も自社製に変え、鞠をイメージし、より上品で高級感があるものにしています。
地元の玉島のほか、倉敷、さらには岡山県にちなんだ和菓子をいろいろつくりました。
また和菓子・餅とともに、洋菓子もつくっていますよ。
その流れのなかで「こげまん」や「あんてまり」という人気商品も生まれています。
──どんなお客さんが多い?
平井──
やはり地元のお客様が多いです。
ちょっとした手土産に買われることも多いですが、ご自宅で食べるために買いに来るお客様も多いですよ。
本店は水島工業地帯の玉島地区が近いので、出張に来られたかたがお土産を買いに来ることも多いですね。
逆に工業地帯のかたが、よそに出張に行くときの土産を買いに来ることも多いです。
学校卒業後、和菓子の世界へ
──平井代表は、どういう経緯で和菓子の世界へ?
平井──
先代は私の父になります。
だから小学校のころから、繁忙期は餅づくりの手伝いをしていました。
そういった経緯もあるので、会社を継ぐのは自然の流れで、とくに不満はありませんでした。
ちょうど私が高校生のときに、会社で和菓子づくりが始まったんです。
だから高校卒業後は、和菓子の学校に進学しました。
和菓子学校卒業後は、兵庫県は明石の店で2年ほど修業のために働いたのち、ひらいに入っています。
ちなみに私の弟は、本店のすぐ南側で「マリーガトー」という洋菓子店をしていますよ。
今後の展望
──今後の展望ややってみたいことを教えてほしい。
平井──
ひとつは、もう少し店舗を増やしてみたいですね。
岡山県内を中心に。
本店の改装もやってみたいかな。
あとは、新商品の開発ですね。
フルーツ大福なんかやってみたいと思っています。
それにあわせて果実園みたいのをつくって、そこで取れたものを菓子に使ったりできればおもしろいと思いますね。
菓子処ひらいで地元に根付いた菓子をお土産に
玉島で大正元年に餅づくりから始まり、現在も餅のほかに和菓子から洋菓子まで扱う菓子処ひらい。
100年以上の長きにわたり、玉島で愛されてきました。
どの商品も郷土愛を感じる商品で、つい手に取ってしまいます。
観光や出張のお土産に、あるいは自宅のおやつに、菓子処ひらいの菓子はおすすめです。