発足50年「佐世保子ども劇場」 少子化、コロナ禍… 交流通じ「文化」に触れて

発足50年を迎えた佐世保子ども劇場。さまざまな活動を通して子どもの感性を育んでいる(同劇場提供)

 市民団体「佐世保子ども劇場」が今年、発足50周年を迎えた。プロの舞台に触れる「本物の体験」を重視し、地域の子どもたちと共に歩んで半世紀。多くの芸術とのかかわりや異なる年齢の人たちとの交流を通じて子どもの心を刺激し、豊かな感性を育んでいる。
 同劇場は1971年発足。人形劇などの「生の舞台」や、キャンプなどの「自主活動」を柱に、子どもたちの視覚や触覚など五感を養うことを目的にしている。
 現会員は0歳~80代の101人。年に3回、プロの舞台を鑑賞する機会を設けている。本年度はこれとは別に発足50周年プロジェクトとして年齢に応じた舞台劇や演劇などを例年より多く企画。6月の本番に向け、会員が演劇の練習にも励んでいる。
 田向廣子代表委員長(70)は「生の舞台は、一緒に泣いたり喜んだり疑似体験できる。舞台の中で語られる言葉が子どもへのメッセージになり、人生の岐路にも役立つ」と意義を強調。幅広い年代が集い、知り合えることも魅力の一つだ。
 一方、子ども劇場を取り巻く現状には課題も。白川朱美事務局長(66)によると、多い時で県内に10カ所以上あった子ども劇場は現在、佐世保のほか長崎、諫早、壱岐の4カ所のみ。担い手不足や少子化などで減少をたどっている。
 会員数274人でスタートした佐世保子ども劇場。発足5年目に最多の2367人に達したが、発足20年目には千人を割り込んだ。その後も減少傾向で、近年は100~120人で推移している。
 スマートフォンが身近になり、対面しなくても交流が可能になっている今だからこそ、舞台で役者の息遣いを感じ、感情を共有できる機会は貴重だという。白川事務局長は「子どもたちが文化に触れるチャンスを提供し続けたい」と話している。

© 株式会社長崎新聞社