「1打席に夢中になれるように」 DeNA倉本は代打打率.357、現役への愛着と執念

DeNA・倉本寿彦【写真:荒川祐史】

三浦監督「あの場面は速い球に対応できる倉本」と采配を自画自賛

■DeNA 10ー2 ヤクルト(1日・横浜)

「秘訣はありません。必死です」。DeNA・倉本寿彦内野手は1日、本拠地・横浜スタジアムで行われたヤクルト戦の6回に代打で登場して決勝打を放ち、試合後の報道陣の取材にそう答えた。今季代打では.357(14打数5安打)の高打率だ。

DeNAは2-2の同点で迎えた6回、相手先発の高梨を攻めて無死満塁の絶好機を作ったが、ここで2番手の右腕・近藤がマウンドに上がると、宮崎、ソトが連続三振。暗雲が垂れ込めた。払拭したのは、戸柱の代打として左打席に入った倉本。近藤が初球に投じ156キロを計測した外角低めのシュートを中前へはじき返し、2者を生還させた。チームはこれで勢いに乗り、結局10-2で大勝した。

三浦大輔監督は「あの場面は速い球に対応できる倉本。代打で結果も出していますから。無死満塁から2死となった嫌な流れを、こちらに引き戻してくれた」とズバリ当たった代打策を自画自賛した。

「チャンスだったので、初球から行くぞと決心がつきました」と倉本。「昨日同じ投手にやられたので、絶対やりかえすぞ、という気持ちでした」と明かした通り、前日(4月30日)の同カードでも7回に代打で登場し、同じ近藤と対戦。150キロ超のシュートで追い込まれ、カウント2-2から高めのカットボールを振らされ三振に倒れた。悔しさとともに球筋のイメージが脳裏に刻まれていた。

日立ソフトボール部の妹・美穂さんが引退、現役への執念新た

倉本はプロ2年目の2016年、141試合に出場して規定打席を突破し打率.294をマーク。翌17年には全143試合出場を果たしたが、大和がFAで阪神から移籍した18年以降、出場機会が減っている。今季もスタメン出場は7試合と、本職の遊撃で大和、柴田の後塵を拝している。

日立ソフトボール部でプレーしていた5歳下の妹・美穂さんが、昨年限りで現役引退。同じ右投左打の内野手で、シーズンオフには一緒に練習することもあっただけに、「何と声をかければいいのか、すごく考えました。悔しい気持ちは絶対にあると思った。『お疲れ様』と声をかけて、『指導者になった方がいいんじゃないか』という話はしました」としんみり。倉本自身も今年1月7日に三十路となり、うかうかしてはいられない。現役生活への愛着と執念を新たにしたようだ。

「代打でもスタメンでも、“その1打席”に夢中になれるように心がけています」と語る。なりふり構わぬ姿勢が、最下位低迷中のチームを押し上げる力となるかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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