【伊原春樹氏が選ぶ24人の侍】先発はオリ山本由伸とG菅野の2本柱、一塁はDeNAルーキー・牧だ

伊原春樹氏が選ぶ24人

東京五輪開幕まで3か月を切った。しかし、新型コロナウイルスへの懸念が強まり、開催自体を疑問視する声も後を絶たない。それでもアスリートたちは大会開催を信じ、五輪種目として2008年北京以来の復活となる野球で金メダル獲得を目指す日本代表・侍ジャパンの面々も、その思いは同じだ。では、指揮を執る稲葉篤紀監督(48)は一昨年の秋に優勝を飾ったプレミア12から登録メンバーが4人減る五輪で、誰をチョイスするのか。本紙専属評論家の伊原春樹氏が「24人の侍」を大胆予想した。

【伊原春樹氏が選ぶ24人の侍】東京五輪のメンバーを選ぶとなると、前回の代表メンバーは一旦“白紙”に戻すことが大前提だ。「プレミア12」はまったく関係ない。一昨年11月の大会で活躍したメンバーうんぬんではなく、現在調子がいい旬の選手を率先して侍ジャパンに加えていくべきである。

先発は負傷離脱したソフトバンクの千賀滉大が招集不可と考え、オリックス・山本由伸と巨人・菅野智之を柱にする。多くの人は楽天に復帰した田中将大を「本命」として加えたいところだろうが、コンディション不良で出遅れたことから力量が測りづらく、柱としては計算を立てにくい。

特に意識したつもりはないが、投手陣には自然に若いメンバーが揃う形になった。日本ハムのルーキー・伊藤大海は制球力を買い、メンバーに組み込みたいところ。そしてオリックスの高卒2年目左腕・宮城大弥もコントロール抜群で150キロ前後の直球、カーブ、スライダー、チェンジアップと多彩な球種によって緩急を織り交ぜ、開幕から相手を手玉に取っている。この宮城の投球スタイルは外国人相手にかなり有効な武器になるはずだ。西武2年目の平良海馬、広島のルーキー・栗林良吏も鉄壁のリリーフ陣形成のためには外せない。

捕手は西武・森友哉、巨人・大城卓三、阪神・梅野隆太郎の3人を選んだ。国際試合は強肩と「打てる捕手」であることが必要不可欠。ソフトバンクの甲斐拓也は悩みどころだが、現状では打撃にいまひとつ安定感がないと踏んで外させてもらった。

野手に話を移そう。一塁はDeNAで開幕からルーキーながらも存在感を示している牧秀悟を使いたい。中央大時代、大学日本代表で4番を務めたころから注目していたが、すでに国際大会の場数も踏んでいる。助っ人合流が大幅に遅れたことで巡ってきた先発起用のチャンスをしっかりモノにし、本職は二塁と複数ポジションを守れる。ここまで期待以上の結果も残しているのは非常に頼もしい。

二塁は広島・菊池涼介で決まりだ。守備は文句なし、打撃も今季は開幕から絶好調である。対照的に稲葉ジャパンの常連組だったヤクルト・山田哲人は難しい。昨季あたりからパフォーマンスは低下しているように見受けられ、かつてトリプルスリーに輝いた時の体のキレがない。今年は開幕前から下半身のコンディション不良を抱え込んでいるようだが、これもおそらく去年から盗塁数がガクンと落ちて走らなくなっている点と関係しているのだろう。

控えの野手は楽天・浅村栄斗を入れる。ベンチ要員にするのはもったいないぐらいだが、高い守備力を誇るうえに一、二塁の両ポジションをこなせるから使い勝手がいい。打撃は言うまでもなくクリーンアップを安心して任せられる。それからソフトバンクの周東佑京も足のスペシャリストとして当然必要だ。守備に関しても内外野のほぼどこでも守れるユーティリティープレーヤーなので、24人の限られた登録メンバーの中ではかなり貴重な存在になる。

それから守備の名手・西武の源田壮亮も加えたい。稲葉ジャパンの正遊撃手の座には押しも押されもせぬ巨人・坂本勇人が君臨しているが、源田の遊撃守備も天下一品だ。私がジャパンの監督ならば、彼も最終メンバーとして招聘する。

さて、最後に東京五輪の開催是非についても自身の見解を述べておきたい。プロ野球で選手、コーチ、監督を経験した者としてもアスリートの祭典が東京で行われるのは確かに喜ばしいことだ。だが今果たして実施するタイミングなのかと問われれば、どうしても首をかしげざるを得ない。世界を見渡しても新型コロナウイルスの感染拡大は収束どころか、さらなる拡大の危険が迫っている。数多くの人たちが苦しみ、医療従事者の方々が奮闘している事実があるにもかかわらず「開催ありき」で突っ走ろうとする日本の姿は世界の感覚と明らかにズレが生じている。

(本紙専属評論家)

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