【東京五輪】忍び寄る「中止」の気配… Xデーに至る「3つのシナリオ」とは

もはや東京五輪は風前のともしびか

東京五輪開催がいよいよ土俵際だ。新型コロナウイルスの猛威は収まる様子がなく、医療現場はひっ迫。「五輪をやる状況ではない」との世論が大半を占める現状だ。とはいえ、仮に中止になるとすれば、誰がいつ、どのような形で決断するのか。複数の五輪関係者の話を基に中止に至る3つのシナリオを考察する。

一つは国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)が決断するパターン。言わずもがな、五輪の主催者で開催の決定権を持つのはIOCだ。どの国の誰が中止を提言しようと、最終的にはIOCが決定することになる。

だが、IOCは収益のほとんどを4年に1回の夏季五輪でまかなっている。最も大きな収入源であるテレビ放映権、さらにスポンサーからの多額の拠出金だ。大手広告代理店を含め、4年に一度のサイクルで循環する〝五輪マネー〟の流れが止まれば、たちまち存立の危機に陥る。バッハ会長が断を下すにしても、放映権とスポンサーの問題がクリアになることが絶対条件。となると、スパッといくとは考えにくい。

2つ目のシナリオは日本側が〝ギブアップ〟した場合だ。こちらも最終的にはIOCが決定するが、主催者に場所を提供する立場として開催都市契約を結ぶ東京都、または日本政府が「もうできません」とバンザイすればすんなり中止に至るだろう。無論、この場合は日本側に多額の違約金の支払いが課せられるため、IOCとしては傷は少なく済む。

この場合の焦点は、日本側の誰が中止を提案するかにある。可能性としては菅義偉首相(72)、小池百合子知事(68)のどちらか。もちろん両者が見極めるのはコロナ感染状況ではなく世論、つまり政局だ。

すでに丸川珠代五輪相(50)は中止を見据えて布石を打つような発言が見受けられるが、違約金や経済的デメリットを天秤にかけても中止を訴えた方が政治的メリットがあると判断した場合は急転直下の「ギブアップ宣言」はあり得る。その気配をいち早く察知し、世の中の「風」を読むに長ける小池知事が先んじて「中止」と声を上げるパターンはないとは言い切れない。

いずれにせよIOC、日本側とも決断に至るには相当のリスクをはらむ。そうなると最も現実的なのは「両者の話し合い」だろう。法曹関連に携わる組織委関係者は「バッハ会長、菅首相、小池さん。キーパーソンはたくさんいますが、さすがに独断で決められない。多方面に影響を及ぼすし、代償が大きすぎる。最終的には5者会談の場で決まることになるのでは」と憶測含みで話す。

話し合いといえば聞こえはいいが、要は〝誰が猫の首に鈴をつけるか〟の状態。となると、やはり誰からも言い出せず、グズグズのまま開催に至る公算が高い。どんな結末を迎えるにしても、問題は山積みだ。

© 株式会社東京スポーツ新聞社